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“小さな支配者”たちの生態がわかるノンフィクション『昆虫の惑星 虫たちは今日も地球を回す』

ノルウェーで活躍する女性昆虫学者が、昆虫の体の仕組みや多様性、私たちヒトとの深い関係をユーモラスに綴った『昆虫の惑星 虫たちは今日も地球を回す』。

第69回青少年読書感想文全国コンクール「高等学校の部」の課題図書に選定された本書は、昆虫が好きな人から苦手意識を持つ人まで誰もが楽しめる、世界22か国で翻訳されているネイチャー・ノンフィクションです。

そんな本書の読みどころを、翻訳を担当した小林玲子さんにご紹介いただきます。

昆虫の惑星 虫たちは今日も地球を回す
著者:アンヌ・スヴェルトルップ・ティーゲソン、訳:小林玲子、監修:丸山宗利
発売日:2022年4月
発行所:辰巳出版
価格:1,980円(税込)
ISBN:9784777828920

わたしたちヒトは、昆虫に包囲されている——女性昆虫学者が語る奇妙で、美しく、風変わりな虫たちの話

プラスチックを食べるミールワーム、食べ物や日用品に貢献するミツバチ、
傷を癒すニクバエ、農耕や牧畜をするアリ、子煩悩なハサミムシ、水中で音楽を奏でるミズムシ……
虫が苦手という人は多いが、虫の世話になっていない人は地球に1人もいない。
あなたの知らないところで黙々と仕事をしている昆虫たち——
(もちろんちょっとしたコツでずっとぬくぬくしているやつもいる)
そんな昆虫たちのめくるめく世界へと誘う、「知ること」の楽しさに満ちたネイチャー・ノンフィクション。

(辰巳出版公式サイト『昆虫の惑星 虫たちは今日も地球を回す』より)

 

昆虫という“小さな支配者”たちとの共生について考えさせられる一冊

「昆」(「多い」の意)という漢字にこめられた意味どおり、地球にはとんでもない数の昆虫がひしめいている。おまけに毎年、新しい種が続々と発見されているというのだから、その繁栄ぶりはとにかく尋常でない。本書はノルウェー生命科学大学保全生物学教授による、地球のそんな小さな支配者たちの精妙きわまりない生態の物語だ。

単為生殖で雌の幼虫を大量に産み、あっという間に世代を重ねていくアブラムシ(雌の幼虫はあらかじめ体内に胚を抱えているから子孫がどんどん増えていく!)。ある時期から雌と雄両方を産みはじめるというおまけつきだ。あるいは細くひり出した黄色いかつらのような糞を背中に乗せて、敵を威嚇するハムシの幼虫。より条件のいい雄の精子を体内で選別するカマキリなどの雌。このことを証明しようとヒトの科学者が行なった無慈悲な飢餓実験にもご注目あれ。

本書の英語版の題名はExtraordinary Insects(驚異の昆虫たち)というのだが、ページをめくるたびに昆虫たちのそんな生態に出会うのは、訳者としてもまさに驚きの連続だった。子どものころ、石の下にいた毛虫にうっかり腕で触れたら「覚えていろよ」とばかりに毛虫そっくりの形の腫れができたことが脳裏をよぎった(非科学的な回想でごめんなさい)。読者の皆さんはどんな「昆虫体験」を思い出されるだろうか。

本書がさらにおもしろいのは、それぞれ己の種の存続のために生きているはずの昆虫や植物が有機的につながりあい、地球という巨大なシステムを構築していると伝えてくれること。スウェーデンでヤマアリ属のアカヤマアリを森から排除したところ、森林の土壌の炭素と窒素量が15パーセントも減ってしまった。この「風が吹けば桶屋が儲かる(損をする?)」のからくりは本書をお読みいただきたい。つい「世界は自分たちが回している」という感覚に陥りがちなわたしたちヒトだが、地球にはおそらくヒトをはるかに超えた大きな意思が働いている。小さな生命たちの驚異を通してそれを実感させてくれるのも、本書の素敵なところのひとつだ。

そして本書は、数ある種のひとつにすぎないヒトの傍若無人な振る舞いによって、自然界のしくみに狂いが生じていると繰り返し訴える。あれほど繁栄している昆虫たちも、安泰ではないのだ。昆虫をテーマにしたTV番組をきっかけに、ここ数年日本では昆虫の生態への関心が高まった。是非本書を読んでもう一歩、ヒトと昆虫の共生について考えてみていただきたい。昆虫たちの苦境が、ヒトの目と耳を素通りしないように。

 

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「高等学校の部」課題図書である『昆虫の惑星 虫たちは今日も地球を回す』『ラブカは静かに弓を持つ』『タガヤセ!日本 「農水省の白石さん」が農業の魅力教えます』の3冊に関するクイズに答えると、全問正解した方の中から抽選で100名にオリジナル図書カード1,000円分がプレゼントされます。

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