「柚木麻子」小説 2024年ベストセラーランキング発表
女性の心理描写や社会が根強く抱える問題を、独自の視点で鋭く描く作家として知られる柚木麻子さん。代表作として、『本屋さんのダイアナ』や『ナイルパーチの女子会』、『BUTTER』などがあり、『ナイルパーチの女子会』は第28回山本周五郎賞を受賞しました。
女性の生きづらさや社会的な偏見、ルッキズムなどを扱った作品が多く、同時代を生きる読者の共感を得ている柚木さん。実在の事件にヒントを得た『BUTTER』やリベンジポルノをモチーフにした『さらさら流る』など、シリアスなテーマの社会派小説がある一方で、『ランチのアッコちゃん』や『あまからカルテット』をはじめとする、テンポの良い会話やユーモラスなやりとりで紡がれる物語も魅力です。
「女性同士の絆」を描くシスターフッドをテーマにした作品にも定評がありますが、単なる連携の素晴らしさで終わらないところが、柚木作品ならでは。『ナイルパーチの女子会』や『オール・ノット』では、その難しさや複雑な側面も描かれているからこそ、読者は自分自身の問題に向き合うヒントや勇気をもらえるのではないでしょうか。
今回は、そんな柚木さんの小説で、2024年の販売冊数を集計したベストセラーランキングをお届けします。各作品のあらすじもあわせてご紹介しますので、ランキングを参考に、ぜひ書店店頭で気になる1冊を手に取ってみてください。
※ランキングは2024年の販売冊数を集計しています(集計期間:2024/1/1~2024/12/31)
※シリーズ作品はひとつにまとめています
※日販調べ
2024年に一番人気の作品は…?!
柚木麻子さんの小説で2024年に一番人気があった作品は、『BUTTER』でした。
『BUTTER』は、2017年に単行本が刊行された長編小説で、実際の事件をモチーフにした社会派小説です。本作は、複数の男性の財産をだまし取り、殺害した容疑で逮捕された梶井真奈子(カジマナ)と、週刊誌の記者である町田里佳の2人を軸に物語が展開していきます。
「どうしても、許せないものが二つだけある。フェミニストとマーガリンです――」と語るカジマナ。これまでも、“食”を通じて登場人物の心理や社会背景を鮮やかに映し出してきた柚木さんならではの筆致で、本作でも、バターをふんだんに使った美食が登場し、底知れぬ欲望や女性がさらされる偏見などを象徴的に描いています。
ルッキズムやフェミニズム、社会からの偏見などをテーマとした本作は、5月13日(火)にイギリスの雑誌「The Boolkseller」が運営する文学賞「2025 British Book Awards(Nibbies)」にてDebut Fiction部門を受賞し、イギリスで3冠という快挙を達成しています。また、英国推理作家協会賞(ダガー賞)翻訳小説部門にノミネートされており、最終候補作は5月29日(木)、受賞作は7月3日(木)(いずれも現地時間)に発表される予定です。
世界36か国での翻訳が決定し、全世界での累計発行部数が75万部を突破するなど、世界的にも成功を収めている本作。大きな話題となっている今、読んでおきたい一冊です。
『BUTTER』
著者:柚木麻子
発売日:2020年1月
発行所:新潮社
定価:1,045円(税込)
ISBN:9784101202433
男たちの財産を奪い、殺害した容疑で逮捕された梶井真奈子(カジマナ)。若くも美しくもない彼女がなぜ――。週刊誌記者の町田里佳は親友の伶子の助言をもとに梶井の面会を取り付ける。フェミニストとマーガリンを嫌悪する梶井は、里佳にあることを命じる。その日以来、欲望に忠実な梶井の言動に触れるたび、里佳の内面も外見も変貌し、伶子や恋人の誠らの運命をも変えてゆく。各紙誌絶賛の社会派長編。
(新潮社公式サイト『BUTTER』より)
「柚木麻子」2024年小説 ベストセラーランキング第2位~第10位
第2位『あいにくあんたのためじゃない』
- あいにくあんたのためじゃない
- 著者:柚木麻子
- 発売日:2024年03月
- 発行所:新潮社
- 価格:1,760円(税込)
- ISBNコード:9784103355335
過去のブログ記事が炎上中のラーメン評論家、夢を語るだけで行動には移せないフリーター、もどり悪阻とコロナ禍で孤独に苦しむ妊婦、番組の降板がささやかれている落ち目の元アイドル……いまは手詰まりに思えても、自分を取り戻した先につながる道はきっとある。この世を生き抜く勇気がむくむくと湧いてくる、全6篇。
(新潮社公式サイト『あいにくあんたのためじゃない』より)
第3位『私にふさわしいホテル』
- 私にふさわしいホテル
- 著者:柚木麻子
- 発売日:2015年12月
- 発行所:新潮社
- 価格:693円(税込)
- ISBNコード:9784101202419
文学新人賞を受賞した加代子は、憧れの〈小説家〉になれる……はずだったが、同時受賞者は元・人気アイドル。すべての注目をかっさらわれて二年半、依頼もないのに「山の上ホテル」に自腹でカンヅメになった加代子を、大学時代の先輩・遠藤が訪ねてくる。大手出版社に勤める遠藤から、上の階で大御所作家・東十条宗典が執筆中と聞き――。文学史上最も不遇な新人作家の激闘開始!
(新潮社公式サイト『私にふさわしいホテル』より)
第4位『ナイルパーチの女子会』
- ナイルパーチの女子会
- 著者:柚木麻子
- 発売日:2018年02月
- 発行所:文藝春秋
- 価格:880円(税込)
- ISBNコード:9784167910129
「心がえぐられすぎてつらい」。第三回高校生直木賞受賞作!
商社で働く栄利子は、お気に入りの主婦ブロガー・翔子と出会い意気投合。だが距離感をうまくつかめない二人の関係は徐々に変化して。(文藝春秋BOOKS『ナイルパーチの女子会』より)
第5位『マジカルグランマ』
- マジカルグランマ
- 著者:柚木麻子
- 発売日:2022年07月
- 発行所:朝日新聞出版
- 価格:814円(税込)
- ISBNコード:9784022650511
正子は75歳の元女優。CMで再デビューを果たし、順風満帆かと思いきや、ある出来事で事務所を解雇され、急きょ、お金が必要な状況に。周りを巻き込み逆境を跳ね返す生き方はマジカルグランマ(理想のおばあちゃん)像をぶち壊す! 第161回直木賞候補作。
(朝日新聞出版公式サイト『マジカルグランマ』より)
第6位『本屋さんのダイアナ』
- 本屋さんのダイアナ
- 著者:柚木麻子
- 発売日:2016年07月
- 発行所:新潮社
- 価格:781円(税込)
- ISBNコード:9784101202426
私の名は、大穴(ダイアナ)。おかしな名前も、キャバクラ勤めの母が染めた金髪も、はしばみ色の瞳も大嫌い。けれど、小学三年生で出会った彩子がそのすべてを褒めてくれた――。正反対の二人だったが、共通点は本が大好きなこと。地元の公立と名門私立、中学で離れても心はひとつと信じていたのに、思いがけない別れ道が……。少女から大人に変わる十余年を描く、最強のガール・ミーツ・ガール小説。
(新潮社公式サイト『本屋さんのダイアナ』より)
第7位『あまからカルテット』
- あまからカルテット
- 著者:柚木麻子
- 発売日:2013年11月
- 発行所:文藝春秋
- 価格:649円(税込)
- ISBNコード:9784167832025
女子校時代からの仲良し四人組も、いよいよ三十歳目前。恋に仕事に押し寄せる悩みを、美味しい料理をヒントに無事解決へ導けるか!?
(文藝春秋BOOKS『あまからカルテット』より)
第8位『ランチのアッコちゃん』(「アッコちゃん」シリーズ)
- ランチのアッコちゃん
- 著者:柚木麻子
- 発売日:2015年02月
- 発行所:双葉社
- 価格:591円(税込)
- ISBNコード:9784575517569
彼氏にフラれて落ち込んでいた派遣社員の澤田三智子は、畏怖する上司、通称“アッコ女史”こと黒川敦子部長から突然、一週間のランチ交換を命じられる。表題作ほか、「読むと元気になる!」と絶賛され、本屋大賞にもノミネートされたビタミン小説。
(双葉社公式サイト『ランチのアッコちゃん』より)
■そのほかの「アッコちゃん」シリーズ作品
- 3時のアッコちゃん
- 著者:柚木麻子
- 発売日:2017年10月
- 発行所:双葉社
- 価格:591円(税込)
- ISBNコード:9784575520378
- 幹事のアッコちゃん
- 著者:柚木麻子
- 発売日:2019年09月
- 発行所:双葉社
- 価格:638円(税込)
- ISBNコード:9784575522600
第9位『伊藤くんA to E』
- 伊藤くんA to E
- 著者:柚木麻子
- 発売日:2016年12月
- 発行所:幻冬舎
- 価格:693円(税込)
- ISBNコード:9784344425552
美形でボンボンで博識だが、自意識過剰で幼稚で無神経。人生の決定的な局面から逃げ続ける喰えない男、伊藤誠二郎。彼の周りには恋の話題が尽きない。こんな男のどこがいいのか。尽くす美女は粗末にされ、フリーターはストーカーされ、落ち目の脚本家は逆襲を受け……。傷ついてもなんとか立ち上がる女性たちの姿が共感を呼んだ、連作短編集。
(幻冬舎公式サイト『伊藤くんA to E』より)
第10位『早稲女、女、男』
- 早稲女、女、男
- 著者:柚木麻子
- 発売日:2015年09月
- 発行所:祥伝社
- 価格:836円(税込)
- ISBNコード:9784396341435
ワセジョ【早稲女】
早稲田大学の女子学生・OGのこと。
女の子扱いされず“第三の性”とも。若さはいつも、かっこ悪い。
青臭いけど最高に愛おしい女子の群像。早稲田(わせだ)大学4年の早乙女香夏子(さおとめかなこ)には、留年を繰り返す脚本家志望のダメ男・長津田(ながつだ)という腐れ縁の彼氏がいた。しかし、必死で就活に励んでいる間に後輩の女子が彼に急接近。動揺する香夏子だが、内定先の紳士的な先輩に告白されて……。自意識過剰で不器用で面倒臭い早稲女(ワセジョ)の香夏子と、彼女を取り巻く微妙な距離感の女子5人。傷つきながら成長する女子たちの等身大の青春小説。
(祥伝社公式サイト『早稲女、女、男』より)
著者のプロフィール
柚木麻子
ゆずき・あさこ。1981年東京生まれ。2008年「フォーゲットミー、ノットブルー」でオール讀物新人賞を受賞し、2010年に同作を含む『終点のあの子』でデビュー。2015年『ナイルパーチの女子会』で山本周五郎賞を受賞。ほかの作品に『私にふさわしいホテル』『ランチのアッコちゃん』『伊藤くん A to E』『本屋さんのダイアナ』『BUTTER』『らんたん』『ついでにジェントルメン』『オール・ノット』『あいにくあんたのためじゃない』などがある。