各出版社を代表する雑誌の編集長によるリレー連載「編集長雑記」。
今回は、3月発売の4月号で創刊100年を迎えた『JTB時刻表』の編集長・梶原美礼さんのご登場です。
スマホのアプリでも手軽にルート検索ができる時代ですが、鉄道ファンや旅行愛好家をはじめ、多くの愛読者を持つ『JTB時刻表』。同誌の歴史や編集の過程から、時刻やルートを知るだけではない楽しみ方まで、梶原編集長に綴っていただきました。
▼『JTB時刻表』最新号はこちら
- JTB時刻表 2025年 05月号
- 著者:
- 発売日:2025年04月21日
- 発行所:JTBパブリッシング
- 価格:1,500円(税込)
- JANコード:4910051250551
100年間変わらないレイアウトを継続し、実用書として使われる「月刊誌」
2025年4月号で『JTB時刻表』は創刊100周年を迎えました。
日本では、新橋―横浜間に鉄道が開通してから150年以上経過しています。1872年開業当時、時刻表は駅に記載された看板の物しかありませんでした。しかも、“横浜発八字”(時では無く、字)のように漢数字の縦書きで表記していました。
そこから50年ほどたった1925年に鉄道省が業務用で使用していた時刻表を市販で発行してほしいとの要望を受け、現在の『JTB時刻表』の前身となる「汽車時間表」が創刊されました。創刊号はとても画期的で、それまで漢数字で掲載していた時刻が、算用数字の記載で登場しました。時刻表の読み方に苦戦する方もいるだろうと、時刻表の使い方がページの至るところに記載されていました。
▼「汽車時間表」1925年4月号の表紙(JTBパブリッシング提供)
その当時の時刻表の最初のページを見ると、日本全国の地図が掲載されています。他の本でいう目次が、この地図にあたります。自分が乗りたい路線を見つけ、その路線の近くにある数字が、時刻が掲載されているページを表します。そして地図の後には、鉄道発祥の路線である東海道本線の時刻が掲載されており、そこから幹線、地方路線の時刻、バスや船の時刻が続いています。この掲載順は現在の時刻表でも踏襲しています。もちろん、この間に新幹線が開業して、新幹線のページを追加したり、廃線などで無くなった路線などはありますが、大きなレイアウトは同じです。
▼索引地図は2017年に大幅リニューアル(JTBパブリッシング提供)
時刻表は、実用書の面が強いため、鉄道やバスを利用される方が使いやすく時刻をひけるかというところに重きを置いています。愛用されている方は(私もそうですが)○○線がどこに載っているのかは、だいたいわかります。それが、次の月から急に飛行機が巻頭に来たら、慌てますよね。時刻表を愛読されている方は、何十年戦士の方も数多くいらっしゃるので、その方たちを大切にしています。
今や列車の本数も増え、1,000ページを超える時刻表ですが、JR以前の国鉄時代は「国鉄監修」とあり、時刻表が間違っていても、その時間に鉄道を走らせてしまうほど、絶対的な地位がありました。正確な時刻を掲載するためにも、校正は念には念を入れて、ダブルチェックならぬ、トリプルチェックを行い、同じ人ではなく違う人の目で時刻を一つ一つ校正しています。デジタル化が進む中でも、チェックはいまだに人間の目で行っています。
時刻を検索するには、パソコンやスマホで行うのが主流となった今、各運輸会社から来たデータを抽出してデータベースに入れれば時刻表はできるのでは?と思われがちですが、全国に900社もある運輸会社の資料は紙で来ることもありますし、たとえデータで来ても、回送や試運転といった営業運転をしていない列車の時刻や秒などの表記があるなどマチマチで、最終的には人の目での校正は必要になります。ダイヤ改正の時期などは、朝から晩まで時刻の校正だけで終わることもしばしばです。
とは言え、『JTB時刻表』は、信頼の「時刻」だけではやはり楽しくありません。読み物として、最新車両の情報や改正情報、駅弁などの記事を取り上げたり、読者の皆様との接点を深めるために、LINEアプリにて「JTB時刻表ファン俱楽部」を立ち上げ、本誌にある二次元コードの読み込みやクイズに答えることでポイントが貯まる仕組みなど、毎月購入していただける施策を実施しています。100周年の企画では、時刻表の復刻版を課題図書として読書感想文コンクールを年に3回実施します。その当時の時刻表の中から出た、読者の皆様の素敵なエピソードが読めることを楽しみしています。
最新の『JTB時刻表』のほか、100年間発行してきた時刻表の復刻版も発行していきますので、よろしくお願いします。
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〉JTB時刻表100周年特設サイト
JTBパブリッシング『JTB時刻表』編集長
梶原美礼 KAJIWARA Mirei
2005年JTBパブリッシング入社。入社時より時刻表編集部に所属し、2023年4月より現職に。暇があれば、どこかに出かけたくてうずうずしています。