『13歳からの地政学』の要点
1.アメリカが超大国と言われるのは、世界の船の行き来を仕切る国だからである。
2.核兵器を最強のアイテムにする条件は原子力潜水艦、海の中からミサイルを発射する力、潜水艦を隠せる安全な海である。この形で最強のアイテムを持っているのはアメリカとロシアだけである。
3.地球温暖化も立場によって見方が変わってくる。地球温暖化によって、アジアと欧州を結ぶ最短の海上ルートである北極海航路が利用できる、北極周辺の天然資源を活用できるようになる、といった可能性もあるからだ。
『13歳からの地政学』レビュー
刊行後から売れ続けているこの話題書は、世界で起こっているさまざまな出来事の背景をわかりやすく学べる一冊である。
本書は年齢不詳のアンティークショップのオーナー「カイゾク」との会話を通じて、高校生と中学生の兄妹が世界の仕組みや国同士のかけひきの裏側を7日間かけて学んでいく、というストーリーだ。そのため、肩肘を張ることなく一気に読み進めることができ、自然と学びを深められる。
著者は、国際政治記者として40カ国以上の国で、政治経済から文化に至るまで幅広く取材を行ってきた。そんな著者だからこその視点で、歴史問題の本質や、国同士の関係性を解説してくれる。「なぜアメリカが世界最強の国となったのか」「なぜ米中関係が悪化するようになったのか」「なぜ中国が南シナ海への進出を加速させるのか」といったことが、カイゾクと兄妹のやり取りを楽しむだけで見えてくる。
また、地球温暖化をポジティブに捉える側面、テロリストがヒーローになる場合など、物事を一元的に捉えていては見えてこない事柄も登場する。多元的で広い視野の必要性に気付かせてくれる一冊だ。
世界の構造を知る上でのエッセンスが詰まった本書は、子どもだけでなく大人にも読み応えがある。ロシアによるウクライナ侵略など、国際情勢が不安定な今だからこそ、地政学を教養として身に付け、世界を見る目を鍛えていくことが大切である。