3月31日(月)より順次、全国約600書店にて配布が開始されたBLコミックガイド「B+LIBRARY(ビープラスライブラリー) vol.17」。
vol.17の表紙はユノイチカさんによる注目のファンタジーBL、『夜明けの唄』が飾りました!
今回は特集としてユノイチカさんにBLへの想いや『夜明けの唄』の創作秘話などについて、インタビューを実施しました。本記事では、冊子に掲載しきれなかった内容も含めて、インタビュー全文を公開します。
- 夜明けの唄 1
- 著者:ユノイチカ
- 発売日:2021年08月
- 発行所:シュークリーム
- 価格:814円(税込)
- ISBNコード:9784910526041
ユノイチカ
同人活動や別名義を経て商業BLデビュー。初コミックスとなった『夜明けの唄』が、紙・電子を含め累計発行部数100万部超えの大ヒットとなる。本作は圧倒的な筆力と壮大なストーリー展開で読者の支持を集め、2022年にはBLアワードBESTコミック部門1位を獲得した。
自身初の漫画作品は……「女装BL」?
――BL作品を描き始めたのはいつ頃ですか?
ファンアートなどでBLを楽しみ始めたのは高校生の頃だと思います。漫画として作品を完成させたのは大学生のときです。女装男子がその姿をうっかり同級生に見られて女の子として好かれてしまう……という内容なのですが、掲載が一般誌だったので当時はBLを描いているという感覚はなかったんですけど、振り返ってみるとゴリゴリにBLですね。
――商業BL作家としてデビューするに至った経緯をお聞かせください。またそのときの心境もお聞かせください。
二次創作をしているときに今のシュークリームの担当さんに声をかけられたのがきっかけです。当時はオリジナルでBLを描く気はまったくなかったのですが、担当さんがいい人だったのでだんだんと一緒に仕事したいなと思い始めました。
――もともと漫画はお好きでしたか? 漫画に限らず、お好きなもの・こと、ご自身の創作の源泉や、影響を与えていると思うものについてお聞かせください。
小さい頃から漫画は好きでした。あまり読めない環境でしたが。
影響……というか、創る側だと、おもしろくないと思った作品も糧になりますし、現実でつらいことがあっても「肥やしになるかな」と思えるので得ですね。
――作品を描くにあたり、大切にされていることは何でしょうか。
お話の進行速度は気にします。退屈になるのがこわくて。なるべくテンポ良く展開するよう心がけています。でもそのせいで、読み返すと「ここは駆け抜けず、もう少し印象的に描いた方がよかったんじゃ?」というシーンもあったり……。でもページ数の制限はあるので、うーん、むずかしいですね、漫画って。
――原稿作業中に欠かせないもの(お菓子や飲み物、音楽など)はありますか?
だいたい水を飲んでいます。お茶やコーヒーをいれても飲むのを忘れてしまって冷たくなっているのに気づいて悲しい気持ちに……。お菓子も、開けても食べるのを忘れてカピカピになるか湿るかという展開です。悲しいです。
――原稿作業の気分転換にされていること(ストレッチや映画鑑賞、ゲームなど)をお聞かせください。
特にないですね。寝て起きたらわりとリフレッシュしています。
失敗から生まれた『夜明けの唄』、長編ならではの大変さとは?
――『夜明けの唄』の連載が決まったときの心境についてお聞かせください。
以前に連載を失敗した経験があったので、『夜明けの唄』の着想が浮かんだ時は失敗から学んだことを生かして挑むことができました。長くくすぶっていましたが、今ならできる気がするという気持ちになれたことが嬉しかったです。
――『夜明けの唄』は、はじめから長編になることを前提にストーリーを描かれる予定でしたか? また長編を連載するにあたり大変なことや、逆に楽しいと感じることがあればお聞かせください。
最初から長編の企画でした。大変なことは、本編以外の仕事ですね。ずっと本編に集中していたいんですが、他の作業が挟まるとどうしてもうまく思考ができなくて。他にも仕事をもらえるのはとてもありがたい話なんですけど。
――『夜明けの唄』は夜になると人々を襲いにやってくる黒海と、その黒海から人々を守る覡が存在する架空の島を舞台にした物語ですが、こうしたファンタジーな世界観を表現するにあたり、意識していることやこだわっていることはありますか?
黒海の存在はファンタジーですが、それ以外は別に魔法陣やドラゴンが出てくるわけでもない、変わった建物も出てこない、ただの田舎の風景……。舞台も現代なので特にファンタジー作品を描いているつもりはあまりありません。「タイムスリップもの」の書き味に近いというか、そんな気持ちです。
――地域によって異なる覡小屋のつくりや島民の衣装など、『夜明けの唄』では小物や背景の細部に至るまでこだわりが感じられますが、小物や背景の設定について、ここだけの裏話などがあればお聞かせください。
舞台の島はいろんな地域から人が流入した設定なので、衣装や文化はごった煮です。なにを描いても「そういう人が昔この島に来たんだ」で通せるので楽です。
――作中でお互いを愛おしく思い合う姿が印象的なアルトとエルヴァですが、物語が進むにつれて主従から恋人へと次第に変わっていくふたりの関係を描写するにあたり、意識されていることはありますか?
恋人でないときから距離の近かったふたりなので、絵的には恋人以前、その後であまり差が出しにくいという部分はあります。
攻めの「至らない」部分を大事に描きたい
――『夜明けの唄』の中で、特に思い入れのあるシーンやセリフを教えてください。
第3巻です。どうしたらエルヴァはアルトに恋をして心を開いてくれるのか、と作者ながら悩んでいたので、無事主人公ふたりが恋仲になってくれて一安心でした。
――キャラクターの表情や仕草から伝わる繊細な心理描写で多くの読者の心を鷲掴みにされていますが、キャラクターを描くにあたって「ここは外せない!」というこだわりポイントはありますか?
アルトが年下で、まだ18歳の子どもだというところです。アルトはエルヴァを支え励まし包み込まなきゃいけない立ち位置のキャラクターですが、でも子どもだし、そしてアルト自身にも悩み抱えているものがある。完璧なスパダリ攻めってわけにはいかない。アルトの「至らない」部分を大事に描いています。
――日本に限らずヨーロッパやアジアなどさまざまな国の言語に翻訳されている『夜明けの唄』ですが、海外の読者からもらって嬉しかったファンレターや印象に残っているコメント等はありますか?
コメントではないんですが、以前台湾でサイン会をした時に台湾の読者さんは日本の方よりも人なつっこい感じがしました。日本の読者さんはガチガチに緊張している人が多いです(笑)。
――物語が進むにつれて島の秘密や黒海の謎、覡の真実などが徐々に明らかになり、アルトとエルヴァの行く末からますます目が離せない『夜明けの唄』ですが、現時点で考えていらっしゃる今後のストーリー展開について可能な範囲でお聞かせください。
安心してください。“ハピエン”です。
BLほど脳を熱くさせるものはない!? 生涯BLを描き続ける!
――ご自身にとっての「BL」の魅力をお聞かせください。
また、これから挑戦してみたいジャンルや、BLに限らず今後挑戦していきたいことがありましたらお聞かせください。
魅力、なんなんでしょうね。男と男の間になにかある!と嗅ぎつけた瞬間、脳が快楽物質を大量に出しやがるんですね。こんなに脳が熱くなることは他にないんですよ。なので一生BLを描いている気がします。
和風ファンタジーものとか、描いてみたいです。
――「B+LIBRARY」読者へのメッセージをお願いいたします。
ここまでお読みいただきありがとうございました。物語は折り返しを迎えております。ラストまで付き合っていただけると幸いです。頑張ります。
「B+LIBRARY」について
「B+LIBRARY」は、キャラ属性や萌え度、ジャンルといった切り口から好きなBLコミックを探すことのできるガイドブック。BLポータルサイト「ちるちる」に投稿された10万件以上のレビューや、BLコンテンツを扱うサイトで収集されたデータをもとに作品を厳選し、「スパダリ攻め」「メガネ受け」といった設定別で掲載。「好きなジャンル」「好きな作家」「絵柄」などさまざまな切り口で作品を選ぶことができるので、新たなBLコミックと出合ったり、見逃していた作品を見つけたりするのに役立ちます。
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日販 プラットフォーム創造事業本部 IPソリューションチーム
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