“コミックのプロ”である全国の書店員が、「たくさんの人にすすめたい漫画」「皆に読んでほしい漫画」として選んだ「全国書店員が選んだおすすめコミック2025」が1月30日(木)に発表されました!
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第1位に選ばれたのは、「新しい令嬢もの」と話題沸騰中の『おひとり様には慣れましたので。 婚約者放置中!』(略称「おひ慣れ」)です。書店員からは、「ニコルの一人だと楽でいい!というところに共感できます」「ニコルの生き方は現代人にはとても共感できるはず」など、「おひとり様」を満喫する主人公・ニコルの姿を楽しむ声が多数寄せられました。
今回は第1位を記念して、『おひとり様には慣れましたので。 婚約者放置中!』のコミカライズを担当した漫画家の晴田巡さんにお話を伺いました。
- おひとり様には慣れましたので。 婚約者放置中! 1
- 著者:晴田巡 荒瀬ヤヒロ
- 発売日:2024年07月
- 発行所:一迅社
- 価格:825円(税込)
- ISBNコード:9784758019170
あらすじ
もう期待しない───。だって“おひとり様”って最高なんだもの!
伯爵令嬢ニコルの婚約者ケイオスは、いつでも幼馴染のキャロライン王女のことばかり。
学園のイベントなどには婚約者と一緒に参加するのが一般的だが、ケイオスはいつも王女のそばにいるため、ニコルは自身がないがしろにされることに慣れてしまっている。
常日頃からケイオスから放置されてきた結果、ニコルは「向こうが好きにしているのだから、こちらも好きにすればいいんだわ!」と“おひとり様”に目覚めてしまい──?
実は両片想いをこじらせているニコルとケイオス。すれ違う2人に未来はあるのか…!?(一迅社公式サイト『おひとり様には慣れましたので。 婚約者放置中!(1)』より)
晴田 巡
2018年 非公開の別名義にて商業デビュー。漫画、イラスト、ウェブトゥーンの作画等で活動。
異世界ファンタジー作品のコミカライズは本作『おひとり様には慣れましたので。 婚約者放置中!』で初挑戦。
予想外の展開にわくわくする作品
――「全国書店員が選んだおすすめコミック2025」第1位、おめでとうございます。書店員の皆様からは、「王道恋愛漫画と思ったら、いい意味で裏切られました!」「ヒロインの吹っ切った前向きさが面白すぎる」などの声が寄せられました。まずはご感想をお聞かせください。
ありがとうございます! 皆様からいただいたお声は、正に自分が原作小説を読んだ時の感想そのものです。漫画という形で原作の魅力をお伝えできていれば何よりです。
――初めて『おひとり様には慣れましたので。』のことを知ったのは、いつでしょうか。また、初めて原作小説を読んだ際の感想を教えてください。
担当編集の矢田部さんに原作小説をご紹介いただいた時ですね。それまでなろう系や令嬢ものと呼ばれる作品に触れたことがなかったので、とても新鮮な気持ちで読みました。イメージ的に「異世界転生したり、何かしらのスキルを持ってたりするのかな?」と思っていたらどちらも違いました。「ザマァする流れか!」と思ったら何だかそれも違かった(笑)。先入観からの予想を裏切られ続けて驚いたというか、わくわくしました。何よりヒロインのニコルのマインドに惹かれてあっという間に読み終えてしまいましたね。
――晴田さんの考える、『おひとり様には慣れましたので。』の魅力はどこでしょう。
テンポの良さですかね。原作小説はファンの方に繰り返し読まれている印象だったので、コミカライズもそうなれたらいいなと……。やはりコメディなので気軽に何度でも読み返してもらいたいです。
「絶対にがっかりさせないクオリティに仕上げる」コミカライズの難しさ
――荒瀬ヤヒロさんの原作を描くことは、どのような経緯で決まったのでしょうか。
別名義で活動していた時に矢田部さんからお声をかけていただいたのが始まりです。当初は「おひ慣れ」の他にいくつか原作候補をいただいていたのですが、ニコルに自分と重なる面が多々あったので、この作品なら自分の力を発揮できると思い選ばせていただきました。原作の荒瀬先生にも是非担当してもらえたらとお返事をいただけました。引き合わせてくださった矢田部さんには感謝しています。
――原作の荒瀬さんとはどのようなやり取りがありましたか? また、荒瀬さんからのお声かけで、印象深いものがあれば教えてください。
漫画を描く上で荒瀬先生と直接やり取りをすることはないですが、コミカライズ担当を決める段階で作画力を褒めてくださったのは嬉しかったです。絶対にがっかりさせないクオリティに仕上げるぞと気合いが入りました。連載開始時にSNS上で初めて直接メッセージを送らせていただいた時はどきどきしましたね……。読者さんの反応もですが、やはり原作者の荒瀬先生に楽しんでもらえているかが一番気になりますから。
――晴田さんのXに「原作担当の荒瀬先生の文章との相性も良かったのかなと勝手に感じています。自由がたくさんある」という投稿があります。荒瀬さんが書かれる文章との「相性の良さ」はどの辺りから感じられたのでしょうか。
「おひ慣れ」の文章には無駄がないというか、ストーリーを進める上で必要なものだけが用意されている印象を受けました。特にキャラクターの心情や会話に重きが置かれているので、その他の情景や動きを想像する余地がたくさんあるんです。私はその作業を楽しめるタイプなので相性はいいのかなと……。あとは小説から漫画に組み立て直す上でどうしても「省く」部分が出てきてしまうのですが、「省く」作業って結構心理的に辛いんです(笑)。それが少なく済むのは助かります。
――原作小説をコミカライズするにあたり、意識された点、難しかった点や楽しかった点を教えてください。
とにかく自分が原作を読んだ時に感じた面白さをどうやって漫画で読者さんにわかりやすくお伝えするかという点です。原作ファンの方が元々たくさんいらっしゃって物語の面白さは最初からお墨付きだったので。中世ヨーロッパ社会に無知すぎてまず貴族階級を学ぶ所から始めたのですが、調べていくうちにあまり深く考えない方がいい気がしてきて「好きに描こう!」と開き直りました。結果的に多くの方の手にとってもらいやすい作風になったと感じています。作画については意味のないものは描かないように意識しています。余計なストレスは感じずにストーリーを楽しんでほしい。なので読者さんに「読みやすい」と言ってもらえるととても嬉しいです。「仕事したぞー!」という気持ちになります(笑)。
登場人物みんな愛されるように描く
――原作には登場しない人物がコミックには登場しますよね。書店員のコメントには「キャラクターすべてに魅力を感じます」という声もありました。コミックオリジナルの人物はどのように考え、生まれたのでしょうか。
荒瀬先生がコミカライズ用に加筆して下さったシナリオをいただいてそれを読み込んでいたので、私の中ではコミックオリジナルの人物という認識が元々なかったんですよね……。読者さんの反応を見て「そうかこの子原作には居ないんだ!?」と気づきました(笑)。なので私が一から考えたキャラクターというのはモブ以外存在しないです。名前のある子たちについては荒瀬先生から大体のイメージを教えていただきデザインしました。
――それぞれが個性と魅力を持つキャラクターですが、最もお気に入りの人物はいらっしゃいますか。
もうみんなかわいいです! 「嫌な人が出てこない」とよく言っていただけるのですが、やはり描き手としては登場人物全員愛されてほしい気持ちがあるのでとても嬉しいですし、「おひ慣れ」の一つの魅力だと思っています。思い入れがあるのはロベリアですかね。初登場シーンで、最初はもう少し悪役っぽさのある表情にしていたのですが、ネームの段階で矢田部さんから「もう少しマイルドに…」的なアドバイスをいただきました。そこから表情に加えて台詞も変更したことでよりかわいらしい令嬢に仕上がりました。みんなに愛される子になってくれて満足しています。
「おひとり様」を楽しむ主人公のイメージはあの児童文学
――「おひとり様」を全力で楽しむ姿が非常に魅力的な主人公・ニコルを描く上でのこだわりポイントや注目してほしい点を教えてください。
ニコルが前を向いて新しい世界へ踏み出したことを表すのにカチューシャをつけたいな、というのが最初にありました。貴族だけれど親しみやすさが欲しいので、見た目も仕草も華美にならないように意識しています。具体的な最初のイメージは『不思議の国のアリス』でした。私は舞台芸術が好きでよく観に行くのですが、人物を識別するのにシルエットってすごく大事だなと思っているんです。衣装や髪型を考える際には遠くから見てもどのキャラかわかるデザインになるように心掛けています。行商の市を楽しむニコルの姿をよくミュージカルで想像していますね……!
――書店員のコメントには「ニコルの一人だと楽でいい!というところに共感できます」「ニコルの生き方は現代人にはとても共感できるはず!」との声がたくさん届きました。実際にニコルの生き方に共感している読者がとても多いですが、晴田さん自身は「おひとり様」を楽しむニコルと重なる部分はありますか?
めちゃくちゃあります! 一人で知らない場所へ行ったり、興味のあることに挑戦したり、それこそ冒頭でニコルがひとりを選んだ瞬間の心境なんかは……恋愛に限らず、人間関係を構築する上で経験のある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
生活のすべてが漫画のため
――原稿作業中に欠かせないものや、気分転換の日課はありますか?
家よりも外の方が集中できるので、ペン入れや仕上げ作業以外は外出中にやることが多いです。遠出をするのが好きなので移動中にやったりとか……その方が捗るんですよね。
――幼少の頃から漫画はお好きでしたか? 漫画に限らず、お好きなもの・こと、ご自身の創作の源泉や、影響を与えていると思うものについてお聞かせください。
絵を描くのが好きでしたね。漫画を描き始めたのは大学生の時です。好きなことがたくさんある子どもで……中でも音楽が大好きでした。中学生の頃から久石譲さんの大ファンで、話すと長くなってしまいますが久石さんの音楽作りに対する姿勢がとても好きで、漫画を描く上でそれがすごく生きています。今のペンネームも尊敬の念を込めて久石さんと同じイニシャルにしました。
――今作に限らず、イラストや漫画を描かれる際に大切にしていること・意識していることや、ご自身のイラストや漫画の好きなポイントを教えてください。
仕事で描くからには、支えてくださる周りの方たちへの感謝を忘れない事です。あとは広い視野で何事にも興味を持って、考えるのをやめない事。全部が漫画のためだと思って過ごすようにしています。好きな部分はアナログ線画ですね、ずっと続けたいです。
――「全国書店員が選んだおすすめコミック」では、数多くの作品をご紹介してきました。過去の受賞作でお好きな作品や、自身が影響を受けた作品はありますか。
白浜鴎先生の『とんがり帽子のアトリエ』(講談社)です。とにかく世界観と作画が美しすぎて、複製原画集も購入して隅々まで見ました。作業中いつでも手に取って開ける場所に白浜先生の漫画は置いてあります。
- とんがり帽子のアトリエ 1
- 著者:白浜鴎
- 発売日:2017年01月
- 発行所:講談社
- 価格:759円(税込)
- ISBNコード:9784063886900
ファンと一緒に作品を作っている
――晴田さんのXには、ファンから届いたお手紙や感想を載せた投稿が数多く上がっていますね。読者の感想をどのように受け止めていますか?
活力そのものですし、人それぞれの立場や目線で「おひ慣れ」を読んでくれているのが伝わってきて楽しいです。いただいた感想で漫画を客観視することもできるのでありがたい。それによって物語の先行きが変わるということはありませんが、読者さんからいただくお声があるからこそ実現することや、続くことがきっとあるので一緒に作品を作っているような感覚にもなります。
――書店員からは「二人の未来が気になりすぎる」「すれ違うふたりのこの先が楽しみ」という声が多数寄せられました。第2巻では事の深刻さを理解したケイオスの挽回劇に注目が集まりますが、この先『おひとり様には慣れましたので。』を描かれるうえでの意気込みを、(ネタバレのない範囲で)お聞かせ下さい。
第3巻以降は原作小説の続きを描いていくことになるので私自身とても楽しみです! 先を描くことによって完成される物語だと個人的には思っているので、読者さんにもそう思っていただけるように力を尽くします。
――最後に、作品を手に取っていただく読者の皆様へメッセージをお願いいたします。
お手に取っていただきありがとうございます! まだ連載開始から1年も経っていませんが、多くの方に楽しみにしていただいていることを日々実感しています。今後も「おひ慣れ」の世界をもっと楽しんでいただけますように!
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