人と本や本屋さんとをつなぐWEBメディア「ほんのひきだし」

人と本や本屋さんとをつなぐWEBメディア「ほんのひきだし」

  1. HOME
  2. 本と人
  3. ひと・インタビュー
  4. 【Vol.16:衣刀信吾】編集者が激推し!2025年の注目作家はこの人

【Vol.16:衣刀信吾】編集者が激推し!2025年の注目作家はこの人

衣刀信吾さん

ほんのひきだしでは、この年末年始も8日間にわたり、各出版社の文芸編集者の皆さんが「今、この作家を読んでほしい」とおすすめする、「編集者が激推し!2025年の注目作家はこの人」をお届けします。

ぜひ、気になる作家や作品を見つけて、書店に足を運んでみてください。

 

光文社 編集者・永島大さんの注目作家は「衣刀信吾」

衣刀信吾(いとう・しんご)
1964年3月16日、東京都中野区生まれ。60歳。早稲田大学法学部卒。現在、神奈川県相模原市で弁護士として活動。令和元年度、神奈川県弁護士会会長を務め、令和6年度、日本弁護士連合会副会長(現職)。2024年、「午前零時の評議室」で第28回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞し、2025年3月同作でデビュー予定。

 

注目の新人作家は日弁連の副会長!本格ミステリ愛が爆発したリーガルサスペンス

2024年の第28回日本ミステリー文学大賞新人賞に輝いた衣刀信吾さんは、現役の弁護士です。「またかぁ」と思ったあなたは、なかなかのミステリ通。たしかに近年、ミステリ界には弁護士作家が大勢いらっしゃいます。しかし、中でも異彩を放つのが「日本弁護士連合会・副会長」という肩書き! 日弁連といえば、日本の弁護士たちの総本山。その団体のナンバー2が小説家デビューということで、早くも法曹界の話題を独占しているようです。

注目の受賞作は当然のごとく法廷モノで、裁判員裁判を扱ったリーガルミステリ……なんですが、リアルの谷を飛び越えてエンタメに振り切ったところが秀逸! 裁判員制度の問題をプロの視点で丁寧に描きつつも、デスゲーム的なタイムリミットサスペンスにハラハラドキドキ。細かく積み上げた伏線の数々が怒涛のごとく回収される後半、見ていた景色が二転三転する楽しさは、まさに正統派本格ミステリです。

衣刀さんが小説を書いたきっかけは、コロナ禍で暇な時間ができたこと。幼い頃からクリスティやクイーンで育ち、いつかは自分でも書いてみたいという思いがあったと言います。そうして初めて書いた長編小説を同賞に応募したのが2022年。そこから3年連続で新作を書き上げ、それがすべて最終選考の候補に残るというのは史上初の快挙です。毎回、選考委員の選評だけを頼りに試行錯誤してきたそうで、その成長力は賞に関わってきた全員が認めるところ。

受賞作は現在、より面白く読みやすくするために改稿中。常に携帯用の折り畳みキーボードを持ち歩いている衣刀さんは、移動中や仕事の合間もスマホを使って原稿作成。失礼ながら還暦越えとは思えない、時間の使い方のうまさには唸らされます。注目の受賞作『午前零時の評議室』は3月中旬発売。今しばらくお待ちください!

(光文社 第三編集局 文芸編集部 永島大)

 

※『午前零時の評議室』は3月中旬発売予定です