NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」をより深く知る!
2025年1月5日(日)より放送されるNHK大河ドラマ「べらぼう ~蔦重栄華乃夢噺~」。
“江戸のメディア王”として時代の寵児になった蔦屋重三郎(つたや・じゅうざぶろう)を主人公に、その生涯が、笑いと涙と謎に満ちた物語として描かれます。
蔦屋重三郎役は横浜流星さん、物語を動かす鍵を握る重要人物として渡辺謙さん、染谷将太さん、宮沢氷魚さん、片岡愛之助さんといった豪華キャストが発表され、注目度が高まっています。
ほんのひきだしでは、よりドラマを楽しんでいただけるように、放送に先がけて関連本を短期連載形式でご紹介します。
今回は、『蔦屋重三郎と粋な男たち!』(内外出版社)をご紹介します。
江戸っ子の気質には、「粋」や「野暮」、「意地」、「洒落」、「笑い」、世間の理不尽を笑う「穿ち」などがありました。そんな江戸で蔦屋重三郎はどのようにしてヒットメーカーとなったのか。蔦屋重三郎が仕掛けた作家たちと作品を追い、江戸時代の大衆エンタメや世渡り術を学べる作品です。ぜひ書店店頭で手に取って、ドラマとあわせてお楽しみください。
- 蔦屋重三郎と粋な男たち!
- 著者:櫻庭由紀子
- 発売日:2024年12月
- 発行所:内外出版社
- 価格:1,760円(税込)
- ISBNコード:9784862577146
〈章立て〉
1章:江戸っ子とは
2章:粋の作法
3章:野暮の作法
4章:意地と張りの作法
5章:洒落の作法
6章:伊達の作法
7章:穿ちの作法
8章:笑いの作法
江戸っ子の鉾持と美学! 蔦屋重三郎が貫いた「粋の作法」
吉原生まれの吉原育ち、一介の庶民でしかない蔦屋重三郎が持ち得るのは、江戸の粋と張り、通といった江戸っ子の美学。それは、江戸中の文化と金が集まる吉原と、その裏に渦巻く人の業と欲と哀切、「光と闇」を目の当たりにしていたからこそではないかと本作では問いかけています。底辺から成り上がり、若きクリエイターを育て、生き馬の目を抜く江戸で一番の地本問屋となり、寛政の改革における出版統制には啖呵を切って突っ走る。「てやんでィ、べらぼうめ」この心意気と張りと鯔背こそ、重三郎が貫いた粋を感じることができます。
愚痴や泣き言は野暮だから。理不尽も貧乏も笑い飛ばせ!「笑いの作法」
封建社会の真っ只中、武士以外とされる庶民は生まれながらの身分に甘んじるしかなく、働いても働いても格差は広がるばかり。それは下級武士達も同様で、出世は望めず内職をしなければ暮らしていけない時代でした。そんな理不尽と鬱屈の中で、愚痴や不満、社会不安を穿ち風刺した狂歌や黄表紙は、江戸の大衆エンタメとして一世を風靡します。重三郎と、彼が率いる戯作者が生んだ本たちは、理不尽に潜む真実のパロディです。「笑い飛ばせ、粋でいろ」。現代に続く大衆エンタメがここにあります!
蔦重が仕掛けたミステリー。もしも○○が写楽だったら?
いきなり現れて突然姿を消した、異彩の絵師・東洲斎写楽。蔦屋重三郎がプロデュースしたクリエイターであること以外、未だ多くの謎を残す彼の正体は、浮世絵界最大のミステリーです。多くの研究者が、当時の絵師や重三郎本人を挙げて推理を展開していますが、現在は能役者斎藤十郎兵衛という説で一件落着しています。しかし、十郎兵衛が写楽として絵を描いていたという確固たる物証は、未だ見つかっていません。もしここに想像の余地があるのなら、重三郎のプロデュースが間に合わなかった、後の奇才○○が写楽という説はどうでしょうか?
著者プロフィール
櫻庭由紀子(さくらば・ゆきこ)
執筆、創作を行う文筆家・戯作者。伝統芸能、歴史(江戸・幕末明治)、日本文化の記事執筆の他、ドキュメンタリーライター、インタビューライターとして活動。著書に『落語速記はいかに文学を変えたか』(淡交社)、『浮世絵と芸能で読む江戸の経済』(笠間書院)など。
著者からのコメント
生きづらさを抱えながらも、空気を読まねば社会生活もままならない現代社会。今こそ必要なのが、江戸時代に生きた大衆の美学と知恵、エネルギーではないか。蔦屋重三郎とその仲間達が貫いた、粋と張り、穿ちと笑いで、一億総理不尽時代を生き抜こうではないか。