ほんのひきだしでは、この年末年始も8日間にわたり、各出版社の文芸編集者の皆さんが「今、この作家を読んでほしい」とおすすめする、「編集者が激推し!2025年の注目作家はこの人」をお届けします。
ぜひ、気になる作家や作品を見つけて、書店に足を運んでみてください。
講談社 編集者・川原桜さんの注目作家は「野﨑まど」
野﨑まど(のざき・まど)
2009年『[映]アムリタ』で「メディアワークス文庫賞」の最初の受賞者となりデビュー。2013年に刊行された『know』(早川書房)は第34回日本SF大賞や、大学読書人大賞にノミネートされた。2017年テレビアニメ「正解するカド」でシリーズ構成と脚本を、また2019年公開の劇場アニメ「HELLO WORLD」でも脚本を務める。講談社タイガより刊行されている「バビロン」シリーズは、2019年よりアニメが放送された。他の著書に『タイタン』など。
小説を読む、わたしたちの存在証明
「何のために働いてるんだっけ」。そんなことを考えていた社会人1年目の終わり、ある小説を勧められました。
その名は『タイタン』。AIの発達により人類が労働の大半から解放された未来、心理カウンセラーの「仕事」を与えられた主人公が、働きすぎでうつ病になったAIと旅に出ます。
この小説には「仕事とは何ぞや」の答えが書かれていました。自分がしていることは仕事といえるのか、どうすれば日々に満足できるのか――。読み終えたときにはもう、「仕事」がしたくて堪らなくなっていました。
著者・野﨑まどさんの凄いところは、「○○とは何か」という問いに答えを示してしまうところです。仕事とは何か、死とは何か、悪とは何か。ともすれば「人それぞれ」とまとめられがちな事柄に、圧倒的な知識と物語の力でたった一つの解を導いてしまうのです。
そんな野﨑さんが最新作『小説』で新たに挑んだテーマはずばり、「小説を読む意味」。
内海集司と外崎真、2人の少年は謎の小説家・髭先生の書庫で小説を読み漁る青春を送っていました。しかし、成長するにつれ周囲からは小説を読むことに意味を求められ、2人は別々の道を進み始めます。外崎が放ったある言葉に内海はこう返すのでした。
『読むだけじゃ駄目なのか』。
読まなくても生きていける、役立つ知識がほしいなら実用書がある。それでも、書店には今日も無数の小説が並ぶ。そこに存在する壮大な「意味」を知った時、世界が途方もなく美しく見えました。
そんな感想を送ったら、「世界をありのまま描写しただけなので、そう見えたなら世界が元々美しかったということですよ」と野﨑さん。
そのお返事にまた感動……していたら、サイン会に髭先生のコスプレで現れ現場は騒然。野﨑さん、なんか目光ってますけど、ちゃんと見えてます? 「ふざけないと死ぬ病気」こと野﨑さんが次は何をしでかすのか、楽しm……不安でなりません。
(講談社 文芸第二出版部 川原桜)
- 小説
- 著者:野崎まど
- 発売日:2024年11月
- 発行所:講談社
- 価格:2,145円(税込)
- ISBNコード:9784065373262