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【2025年大河ドラマ連載 Vol.1】「べらぼう ~蔦重栄華乃夢噺~」当時の時代を描く 唯一の小説アンソロジー『小説集 蔦屋重三郎の時代』

蔦屋重三郎の時代

NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」をより深く知る!

2025年1月5日(日)より放送されるNHK大河ドラマ「べらぼう ~蔦重栄華乃夢噺~」。
“江戸のメディア王”として時代の寵児になった蔦屋重三郎(つたや・じゅうざぶろう)を主人公に、その生涯が、笑いと涙と謎に満ちた物語として描かれます。

蔦屋重三郎役は横浜流星さん、物語を動かす鍵を握る重要人物として渡辺謙さん、染谷将太さん、宮沢氷魚さん、片岡愛之助さんといった豪華キャストが発表され、注目度が高まっています。

ほんのひきだしでは、よりドラマを楽しんでいただけるように、放送に先がけて関連本を短期連載形式でご紹介します。
今回は、当時の時代の雰囲気をより感じることができる小説のアンソロジーとして小説集 蔦屋重三郎の時代』(作品社)をご紹介します。ぜひ書店店頭で手に取って、ドラマとあわせてお楽しみください。

小説集 蔦屋重三郎の時代
著者:吉川英治 邦枝完二 国枝史郎 永井荷風
発売日:2024年12月
発行所:作品社
価格:2,640円(税込)
ISBNコード:9784867930564

 

蔦屋重三郎が生きた時代を描く小説アンソロジー

蔦屋重三郎と同時代を生きた鶴屋南北、喜多川歌麿、葛飾北斎、曲亭馬琴、山東京伝、十返舎一九らの姿が活写された作品を集めた『小説集 蔦屋重三郎の時代』。後に紹介する名手4人の小説で構成されており、関連作品の図版と共に「べらぼう」の時代の空気を深く知ることができます。この大河ドラマに関する小説のアンソロジーはほかになく、類書と一線を画した内容になっています。

 

 

関連作品の図版を44点収録!

浮世絵の世界で蔦屋重三郎と密接な関係があった「喜多川歌麿」「葛飾北斎」「山東京伝」。蔦屋が版元となった喜多川歌麿の「青楼十二時」、葛飾北斎が挿絵を描いた山東京伝の「実語教幼稚講釈」。そして、山東京伝「堪忍袋緒〆善玉」では山東京伝の自宅に原稿の依頼に行く蔦屋重三郎の姿が北尾重政の手によって描かれており、当時の様子を伺うことができます。小説の展開に合わせて44点の錦絵や絵草子の挿絵が収録されています。小説の世界をビジュアルでも体験できる一冊です。

画像1鳥文斎栄之「歌麿之像」
▲鳥文斎栄之「歌麿之像」
画像2鳥橋斎栄里「江戸花京橋名取 山東京伝像」

▲鳥橋斎栄里「江戸花京橋名取 山東京伝像」
曲亭馬琴『里見八犬伝』拾九編五十三之下より、歌川国貞「曲亭馬琴像」

▲曲亭馬琴『里見八犬伝』拾九編五十三之下より、歌川国貞「曲亭馬琴像」

つとに知られた名手4人の8作品

本書には、吉川英治、邦枝完二、国枝史郎、永井荷風という名手4人による8作品が収められています。

【略歴】
吉川英治(よしかわ・えいじ)

1892~1962。神奈川県久良岐郡(現・横浜市中区)生まれ。十代から文学を志し、1910年に上京。さまざまな職を転々としながら雑誌投稿を続け、次第に認められる。1923年の関東大震災後に作家として立ち、1926年『鳴門秘帖』で大きな人気を博す。1935~39年「朝日新聞」連載の『宮本武蔵』は衆知の通り時代小説を代表する作品である。敗戦の衝撃で一時筆を絶った時期もあるが、戦後も『新・平家物語』『私本太平記』などの大作を含む多くの作品を書き続け、国民作家と呼ばれた。戦時中に疎開し9年半住んだ東京都青梅市に吉川英治記念館がある。

邦枝完二(くにえだ・かんじ)
1892~1956。東京市の現・千代田区麹町生まれ。少年時代から江戸文化に親しみ、慶應義塾大学で永井荷風の薫陶を受ける。「三田文学」に執筆、編集にも携わるが、大学は中退。新聞記者などを経て作家に専念。主に江戸を舞台とした官能的・情緒的な大衆小説作家として知られ、広く活躍した。代表作『東洲斎写楽』『歌麿をめぐる女達』『おせん』『お伝地獄』などのほか、江戸の絵師や役者を描いた作品は数多い。長女は映画女優のちエッセイストの木村梢(1926~2019)。

国枝史郎(くにえだ・しろう)

1887~1943。長野県諏訪郡(現・茅野市)生まれ。早稲田大学英文科中退。大正末期から昭和初期にかけての時代伝奇作家であるほか、劇作家、風俗作家、歌人でもある。ミステリー作家としては、昭和初年代、江戸川乱歩、横溝正史、夢野久作らが寄稿していた雑誌「探偵趣味」や、「サンデー毎日」を舞台に活躍。主著に『神州纐纈城』など。未知谷から『国枝史郎伝奇全集』(全6巻、補巻1)が、作品社から『国枝史郎探偵小説全集』『国枝史郎歴史小説傑作選』『国枝史郎伝奇短篇小説集成』(全二巻)『国枝史郎伝奇浪漫小説集成』『国枝史郎伝奇風俗/怪奇小説集成』が刊行されている。

永井荷風(ながい・かふう)

1879~1959。東京市の現・文京区小石川生まれ。官僚のち実業家の父・久一郎の長男で、早くから江戸・東京の落語、歌舞伎、戯作などに親しむ。文学を志し、広津柳浪に師事して作家活動を始めるが、父の意向で実業を学ぶため1903年からアメリカ、フランスに渡る。帰国後その体験をもとに『あめりか物語』『ふらんす物語』を上梓、注目を集める。実業家となることなく、1910年慶應義塾大学の教授に就任、「三田文学」を創刊。1916年に大学を辞してからは、『墨東奇譚』をはじめとする作品のみならず、実生活も江戸戯作者のごときであった。そのさまは1917年以降の日記『断腸亭日乗』に詳しい。

 

〈内容目次〉
吉川英治「大岡越前」(抄)
邦枝完二『江戸名人伝』より、「鶴屋南北」「喜多川歌麿」「葛飾北斎」「曲亭馬琴」
国枝史郎「戯作者」「北斎と幽霊」
永井荷風「散柳窓夕栄(ちるやなぎまどのゆうばえ)」(抄)