高嶺の花を覗いてみたら
SNSを眺めていると、偶然映り込んだ手がかりからアカウントを特定できてしまうことがある。「この服の組み合わせ、さっきのカフェで見た」「意外に近所に住んでるのかも」と、不思議と目に飛び込んでくるヒントがあるのだ。ちょっとした覗き見気分と優越感。でも、気を抜いてはいけない。自分が常に「覗く側」にいられるとは限らないのだから。
『PEEP』の主人公・大葉陸がこっそり覗いているのは、「C.B」と名乗るエッチなコスプレアカウント。以前からフォローしていたけれど、ここ最近さらに露出が過激になっており、胸元のホクロが目につくように。
あるとき陸は気づく。このホクロ、“元”幼なじみの櫻澤深愛のものかもしれない、と。
深愛は陸の初恋の相手だけど、陰キャで影の薄い今の陸にとっては距離を感じる存在だ。
子どもの頃は泣き虫だった深愛を陸が守ってあげていた。昔の陸は輝いていたし、深愛だってかわいくておとなしかったのに……今はこんな裏の顔を持っている(かもしれない)なんて!
「C.B」かもしれない深愛に、推しの反転アンチのような苛立ちを募らせる陸。もしこのアカウントが本当に深愛のものなら、自分にはそれを止める義務があるんじゃないか?
「C.B」はフォロワーの煽りにノッてどんどんエロい投稿が増やしていき、学校でまで撮影しているようだ。
「僕はあなたが誰か知っています」……「C.B」にDMを送り、意を決して撮影場所である屋上へ向かった陸に思わぬ事態が降りかかる。
この水滴は、雨じゃない。まさかの……。
高嶺の花の裏の顔を暴くはずが、どうしてこんなことに?
これはヤバい、ヤバいよっ……!
陸に放尿(!)シーンを目撃されたのは学校のカリスマ・生徒会副会長の明野藍花。ルックスがいいだけじゃなく、勉強もスポーツもできて家柄も申し分なし。「実在する完璧」だ。
あんなところを見られたというのに、藍花は陸に恥ずかしそうな顔を見せないどころか、口止めしようともしない。
あれが撮影なのかリアルな用足しだったのかはわからないけど、「C.B」は自分だと認めている。それがバレたことは気にならないのだろうか。
混乱する陸をよそに藍花がやけに堂々としているのは、藍花もまた、陸のことを見ていたからだ。
怯える陸を呼び寄せ、藍花はこう聞く。
動揺しながらも藍花にきっちりエッチなポーズを要求する陸に笑ってしまいそうになるけれど、言われるがままに脚を開き、ポーズをキメる藍花のエロいこと……! ちょっと本稿に画像を載せるのをためらうほどだ。ここはぜひコミックスで見てほしい。
気づけば陸も、自分の恥ずかしい写真を藍花に撮らせてしまっていた。
上気した顔で「また明日の放課後 続きをしましょう ここで」と笑う藍花への欲望と、「学校一の美少女が俺なんかに……」という気持ちの間で陸は揺れる。
「C.B」かも?という疑いも消え、距離を感じていた深愛ともまた話すことができるようになった。もう藍花に近づきすぎない方がいいと陸が思い始めたタイミングで、
藍花は深愛に取り入る形で、陸との距離を詰めてくる。
不穏な予感を感じながらも藍花を拒めず、陸は彼女の意のままに動いてしまう。藍花が屋上でささやいた「これで私と一緒だね」は“対等”という意味の「一緒」ではなかったようだ。
このマンガは「青春×愛憎サスペンス」とのこと。藍花の考えていることは読めないし、陸が時折見せる主人公らしからぬ闇は気になるものの、女の子たちはそれぞれに魅力的でエロく、陸にとっておいしい展開も多い。
それだけに、今のところはサスペンスと言うより、インモラルなエロスでは……? こう思いながら読み進めていくと、1巻最終ページでガツンと殴られるので要注意だ。
うん、確かにこれはサスペンス!
*
(レビュアー:中野亜希)
- PEEP 1
- 著者:植野メグル
- 発売日:2024年11月
- 発行所:講談社
- 価格:759円(税込)
- ISBNコード:9784065367148
※本記事は、講談社コミックプラスに2024年12月6日に掲載されたものです。
※この記事の内容は掲載当時のものです。