ほんのひきだしでは、この年末年始も8日間にわたり、各出版社の文芸編集者の皆さんが「今、この作家を読んでほしい」とおすすめする、「編集者が激推し!2025年の注目作家はこの人」をお届けします。
ぜひ、気になる作家や作品を見つけて、書店に足を運んでみてください。
新潮社 編集者・福島歩さんの注目作家は「石田夏穂」
石田夏穂(いしだ・かほ)
1991年埼玉県生まれ。東京工業大学工学部卒。2021年「我が友、スミス」が第45回すばる文学賞佳作となり、デビュー。同作は第166回芥川賞候補にもなる。他著に『ケチる貴方』(第44回野間文芸新人賞候補、第40回織田作之助賞候補)、『黄金比の縁』、『我が手の太陽』(第169回芥川賞候補、第45回野間文芸新人賞候補)がある。
文芸界が期待する著者の最新刊は、理想を求める中間管理職の奮闘に切り込む、シニカルなボディ・メイキング文学!
「前代未聞の筋トレ文学」として注目を集め、第166回芥川賞候補作にも選ばれた『我が友、スミス』(集英社)でデビューした石田夏穂さん。「スミス」の主人公はボディビル大会に出場する女性でしたが、最新刊の『ミスター・チームリーダー』は、大手リース会社に係長として勤務するかたわら、ボディビル大会で上位入賞を目指す男性・後藤が主人公です。
後藤は2ヶ月後の大会に向けて減量期(オン)に入っていましたが、目標体重にはほど遠い状況。しかも会社では、仕事ができない上、肥満体形揃いの同僚たちから、食事やトレーニングの邪魔ばかりされます。ところがあることをきっかけに、部内の人材の無駄(=贅肉)に切り込み組織の代謝を上げると減量も進むことに気づき、後藤は身体を仕上げるべく、チームの脂肪除去に驀進し始めるのです。身体と組織がシンクロしたとき、たたき出されるのはベストパフォーマンスか、それとも――?
石田さんは大会を目指すほどではありませんが、ご自身も週5日のペースでジムに通っており、そこでストイックに筋トレに励む人たちをこっそりウォッチして、妄想を膨らませていったのだそうです。また、会社勤めを続けている兼業作家でもあり、中間管理職の大変さには日々接していて、その観察眼もいかんなく発揮されています。
後藤は時に、太っている同僚らに対し、思わず笑ってしまうほどのストレートで辛辣な言葉を吐きますが(身につまされます……)、その根っこには身体づくりも仕事も、自分の努力で何とかなると信じている生真面目さがあります。そんな後藤を待ち受ける運命を、どうかお見逃しなく!
(新潮社 出版部 福島歩)
- ミスター・チームリーダー
- 著者:石田夏穂
- 発売日:2024年11月
- 発行所:新潮社
- 価格:1,650円(税込)
- ISBNコード:9784103558811