ほんのひきだしでは、この年末年始も8日間にわたり、各出版社の文芸編集者の皆さんが「今、この作家を読んでほしい」とおすすめする、「編集者が激推し!2025年の注目作家はこの人」をお届けします。
ぜひ、気になる作家や作品を見つけて、書店に足を運んでみてください。
幻冬舎 編集者・黒川美聡さんの注目作家は「宮田愛萌」
宮田愛萌(みやた・まなも)
1998年4月28日生まれ、東京都出身。2023年、アイドル卒業時にデビュー作『きらきらし』を上梓。現在は文筆家として、小説、エッセイ、短歌などジャンルを問わず活躍。
「今」の宮田さんだからこそ書ける、瑞々しい恋愛小説。
デビュー作『きらきらし』では「万葉集」をテーマにし、2024年夏には『春、出逢い』で短歌甲子園に挑む高校生たちの青春を描き切った宮田愛萌さん。『あやふやで、不確かな』は、そんな宮田さんが「今」の若者の恋愛模様を描いた連作短編集です。
アイドル活動を通して感じたという「気持ちって伝わらない」がこの作品の裏テーマになっています。4編すべてに共通して登場しているのが、冴と伸の2人のカップル。伸の猛アタックで付き合い始めたはずの2人でしたが、「冴から愛情を感じられない」という理由で伸から別れを切り出します。2章で、冴が友達の智世にその顛末を話すシーンがあるのですが、そこで智世が放ったのが「甘えてんね」の一言。「ここまで伝わってないとは思わなかったよねえ」と返す冴とのやり取りが、この小説の一番の芯のようにも感じます。
宮田さん渾身の「プロポーズの言葉」も作中に出てきます。なるほど、そんな言葉!と思ってしまう、相手の人生を最後まで余すところなく求めるようなロマンチックな言葉です。ぜひ、お読みいただき、悶えていただきたいです(笑)。
「キャラクターに設定を伝えてエチュードしてもらって、それを書きとる」という執筆方法を取られたと、宮田さんは話していました。時にキャラクターと喧嘩し、話し合い、書き上げた作品です。登場人物たちと同世代の方はご自身に重ねながら、年上の方は当時を懐かしみながら、読んでいただけるのではと思っています。
宮田愛萌さんの「今」の感性がぎゅっと詰まった作品です。ぜひ、年末年始にゆっくりじっくり、お楽しみいただけたらうれしいです。
(幻冬舎 第一編集局 黒川美聡)
- あやふやで、不確かな
- 著者:宮田愛萌
- 発売日:2024年04月
- 発行所:幻冬舎
- 価格:1,760円(税込)
- ISBNコード:9784344042599