ほんのひきだしでは、この年末年始も8日間にわたり、各出版社の文芸編集者の皆さんが「今、この作家を読んでほしい」とおすすめする、「編集者が激推し!2025年の注目作家はこの人」をお届けします。
ぜひ、気になる作家や作品を見つけて、書店に足を運んでみてください。
KADOKAWA 編集者・吉田真理さんの注目作家は「浅野皓生」
浅野皓生(あさの・こうせい)
2001年、東京都生まれ。2022年、「殺人犯」で東大生ミステリ小説コンテスト大賞を受賞(「テミスの逡巡」と改題し『東大に名探偵はいない』に収録)。2024年、「責」で第44回横溝正史ミステリ&ホラー大賞優秀賞受賞、『責任』と改題し長編デビュー。東京大学法学部在学中。
23歳、現役大学生、なのか? 本当に?
規格外と言わざるを得ません。学歴の話ではありません。小説を仕上げる力のことです。
『責任』で横溝正史ミステリ&ホラー大賞優秀賞を受賞された浅野皓生さんとの出会いは2022年のこと。東大卒作家によるアンソロジー『東大に名探偵はいない』を企画していた私が、現役生著者も加えたいとの目論見から、東大生を対象としたミステリコンテストを勝手に(?)開催し、そこに応募してくださったのが浅野さんでした。法学部での学びを活かした応募作はプロ顔負けのレベルで、選考に何の迷いもなかったと記憶しています。
そう、この頃から既に浅野さんの作品には大学生らしからぬ安定感があり、翌年の横溝賞で優秀賞受賞に至ったことはまるで意外ではありませんでした。驚いたのはそのあと。
『責任』はベテラン刑事が12年前の事件を再捜査する警察ミステリで、選考会でもプロ並みと評価されつつも、結末の瑕疵のほか、長すぎるといった指摘も受け、これは重い宿題だと2人して頭を抱えました。しかしその後の浅野さんの集中力は凄まじく、本当に書きたかったテーマは何か、構成は、結末はどうあるべきか、すべて一から考えて組み立て直し、そのうえで量は大幅に削る、そんな途方もない仕事を全部やってのけたのでした。応募作の出来にはもともと不満があったそうで、指摘された以上の修正を自分に課すというストイックぶり。落ち着いた文章からは想像していなかった熱量と大胆さも持ち合わせた書き手なのだと知ることになりました。
晴れて刊行に至った『責任』は、再捜査の過程が丁寧に描かれる前半だけでも十分な完成度ですが、後半には驚きの展開もあり、コンパクトにしてずっしりとした読み応え。次回作も楽しみでなりません。
(KADOKAWA 文芸局 吉田真理)
- 責任
- 著者:浅野皓生
- 発売日:2024年09月
- 発行所:KADOKAWA
- 価格:1,870円(税込)
- ISBNコード:9784041153840
- 東大に名探偵はいない
- 著者:市川憂人 伊与原新 新川帆立 辻堂ゆめ 結城真一郎
- 発売日:2023年01月
- 発行所:KADOKAWA
- 価格:1,815円(税込)
- ISBNコード:9784041125892