デビュー作『成瀬は天下を取りにいく』で2024年本屋大賞を受賞し、一躍今年の顔となった小説家の宮島未奈さん。11月29日(金)に発表された2024年の年間ベストセラー(日販調べ)では、『成瀬は天下を取りにいく』が総合部門の第3位、続編の『成瀬は信じた道をいく』が同12位にランクインし、2冊あわせた累計発行部数は95万部となっています。
今回は、大ヒットとなった「成瀬」シリーズや新刊『婚活マエストロ』について、また来年に向けた作家としての抱負や宮島さんの2024年の「おすすめ小説」ベスト6など、たっぷりお話をうかがいました。
『成瀬は天下を取りにいく』
著者:宮島未奈
発売日:2023年3月
発行所:新潮社
価格:1,705円(税込)
ISBNコード:9784103549512
中2の夏休みの始まりに、幼馴染の成瀬がまた変なことを言い出した。コロナ禍、閉店を控える西武大津店に毎日通い、中継に映るというのだが……。さらにはM-1に挑み、実験のため坊主頭にし、二百歳まで生きると堂々宣言。今日も全力で我が道を突き進む成瀬から、誰もが目を離せない! 話題沸騰、圧巻のデビュー作。
(新潮社公式サイト『成瀬は天下を取りにいく』より)
『成瀬は信じた道をいく』
著者:宮島未奈
発売日:2024年1月
発行所:新潮社
価格:1,760円(税込)
ISBNコード:9784103549529
成瀬の人生は、今日も誰かと交差する。「ゼゼカラ」ファンの小学生、娘の受験を見守る父、近所のクレーマー主婦、観光大使になるべく育った女子大生……。個性豊かな面々が新たに成瀬あかり史に名を刻む中、幼馴染の島崎が故郷へ帰ると、成瀬が書置きを残して失踪しており……!? 読み応え、ますますパワーアップの全5篇!
(新潮社公式サイト『成瀬は信じた道をいく』より)
【宮島未奈さん プロフィール】
みやじま・みな。1983年静岡県富士市生まれ。滋賀県大津市在住。京都大学文学部卒。2021年「ありがとう西武大津店」で第20回「女による女のためのR-18文学賞」大賞、読者賞、友近賞をトリプル受賞。2023年、同作を含む『成瀬は天下を取りにいく』でデビュー。第11回「静岡書店大賞」小説部門大賞、第39回「坪田譲治文学賞」、第21回「本屋大賞」など17冠を獲得し話題となる。続編『成瀬は信じた道をいく』とあわせてシリーズ累計95万部を突破。10月25日には、初の長編となる『婚活マエストロ』を上梓。
異例の大ヒット!主人公「成瀬あかり」はいかにして生まれた?
――『成瀬は天下を取りにいく』は、本屋大賞をはじめ異例の17冠を達成するなど、まさに2024年のフィクションジャンルにおいて旋風を巻き起こしました。ご自身としてはこのヒットをどのように感じていらっしゃいますか?
確かに私が書いた小説ではあるのですが、すべてが私だけの力ではないと思っています。出版社も宣伝に力を入れてくれて、本を読者の方に届けてくれた書店員さんがいて、読んでくださった方がいる。そういった多くの方のおかげだと感じています。
――主人公の成瀬あかりは、優秀ながらマイペースで、予測不可能なことをする変わり者として描かれています。その求心力あるキャラクターが本作の読みどころのひとつですが、成瀬はどのようにして生まれたのですか?
変わった子にしようということは最初から決めていましたが、最終的には書き進めるうちに固まってきた感じです。行きつ戻りつしながら書いていて、最後のほうまで行ってから、「ここはもう少しこうしたほうがいいな」と直したところもあります。キャラクターには特にモデルがいるわけではないですが、この子だったらこう行動するだろうなと考えていると、こういう声でこんなことを喋るだろうなと会話が聞こえてくるんです。
――ご自身の中で、まさにキャラクターが動き出すという感じでしょうか。主人公を中学生にしようと思われたのはなぜですか?
「女による女のためのR-18文学賞」に毎年応募していたのですが、なかなか受賞できなくて、応募作の「ありがとう西武大津店」は受賞を目指してある程度戦略を立てて書き始めました。その1つ目が、それまで大人の女性の話が多かったので、今度は主人公を中学生にしてみようと。2つ目に、挑戦をテーマにしようと思い、主人公が毎日テレビに映り込みに行くのは手軽でいいなと考えました。そして3つ目に、舞台は閉店を控えた西武大津店にしようと決めました。
――R-18文学賞への思いがデビューにつながったわけですね。
もともとR-18文学賞出身の作家さんの本が好きだったのと、小学生のころから小説家になりたいとは思っていたのですが、具体的に動き出した30代半ばで最初に応募した賞がR-18文学賞でした。その時にいきなり最終候補に残ったので、これはもしかしたら望みがあるかもしれないと思い、その後は毎年応募していました。
成瀬のいる膳所は“パラレルワールド”。どの人物にも「自分が少しずつ入っている」
――「膳所(ぜぜ)から世界へ」は成瀬が幼馴染の島崎みゆきとコンビを組む漫才コンビ「ゼゼカラ」の決めゼリフです。宮島さんも大津市在住とのことですが、膳所は一気に全国区になったのでは?
確かに滋賀県大津市膳所が舞台ではあるのですが、作中で書いているのはフィクションの膳所なので、私が住んでいる世界とはやはり違います。固有名詞にしても同じところも違うところもあるので、本作に登場するのはパラレルワールドの膳所だと考えています。
西武大津店がなくなってしまったことは事実だけれど、ほかの部分は創作であっていいし、現実と完璧にリンクしていなくてもいい。歴史小説も、例えば織田信長という戦国武将がいたという事実はあっても、物語としてはそこに創作が加わりますよね。それと一緒で、本作もあくまでフィクションとして描いています。
――本作では島崎をはじめ家族や同級生、ふとしたきっかけで知り合った人物まで、成瀬を取り巻く人々とのやりとりや彼らの視点から、成瀬というキャラクターが浮き彫りになっていきます。語り手となる人物たちも際立っていますが、設定はどのように考えるのですか?
プロフィールなどはさほど細かく作らないのですが、頭の中にぼんやりとした人物像があります。
この人は子ども時代、こんな感じだったのだろうなといった映像も自分の中にはありますし、主要なキャラクターに限らず、どの人物にも敬意を持って書くことを心がけています。一人ひとりに、生まれてきてからこれまでの人生があって、今ここでスポットライトが当たっているということを意識しています。
――そういった背景があるからかもしれませんが、それぞれの心の動きがリアルに、ていねいに描かれていて、“あの頃”や今も感じている自分の心情と重ねながら、物語にすっと入り込めました。
起こる出来事はフィクションですが、心の動きに関しては、私が実際に感じたり経験したりしたことを書いています。
成瀬をはじめとする登場人物たちにしても、まるっきり私ではないですけれど、少しずつ自分が入っているなと感じます。だからこそリアルと言っていただける部分があるのかもしれないですね。
――すでにシリーズ3作目も書き始められていると聞きました。
前2作を書いていた時と比べると、成瀬がすでに世に出ている状態なので、みなさんの期待を裏切らないようにしなくてはとハードルの高さを感じています。『成瀬は信じた道をいく』で成瀬が京大に合格し、次作は大学生編になるので、京都を舞台にまた新しい展開を考えています。このシリーズは3作目でひと区切りにするつもりですので、その締め方についても思いを巡らせているところです。
――成瀬は200歳まで生きると宣言していますので、その先も読者としては気になるところではありますが……。
もちろん、シリーズとしてこれから先も書く可能性はありますけれど、書きすぎてしまうのも良くないなと思っていて、成瀬の将来は読者の想像にゆだねたいという気持ちもあります。なので、続編を書くとしても、しばらく間を置いてからになりそうです。
最新作では“婚活”をテーマに大人の出会いや成長を描く
――10月25日には、最新作『婚活マエストロ』が発売されました。40歳のWebライターであるケンちゃんこと猪名川健人が、「婚活マエストロ」と呼ばれる鏡原奈緒子と出会い、自宅に引きこもっていた生活から一転、さまざまな刺激を受けるようになります。こちらはどういった経緯で書かれたのですか?
大学時代に婚活パーティーの司会のバイトをしていたという文藝春秋の担当者から、ぜひ私が書く婚活の話を読みたいと依頼されたことがきっかけです。
私は婚活イベントに行ったことがなくて想像で書いた部分が大きいのですが、フィクションでありつつも、あまり現実から離れすぎていると読む人に共感してもらえません。編集者や校閲の方から指摘が入るだろうなと思っていたのですが、意外とそのまま形となったのが本書です。
――「成瀬」シリーズが生まれた時にも、「挑戦」をテーマにされたとお話がありました。3作品を通じて、子どもだけでなく大人たちの挑戦や成長も描かれていて、励まされる人も多いのではないかと感じました。
婚活というテーマだと、もっとドロドロしたような方向性もあるかなとは思います。ただそういった作品はすでにありますし、それなら私はもっと別のものを書こうという思いから生まれたのが鏡原です。
大人になると、成長や出会いといったものを意識することは少ないかもしれません。私自身、もともと在宅でWebライターを長くやっていて、なかなか思うように成果が出ない、認められないという思いがずっとあって。しかし、40歳で作家デビューしてさまざまな機会があり、いろいろなことを経験しました。そんな、ひとつのきっかけで人生は変わっていくという実感を、ケンちゃんに託して書いています。
――鏡原は「本気で結婚を考えている人以外は来てほしくありません」と言い放つほど、仕事に全力を注いでいます。作品にあふれる前向きなエネルギーも、本作の魅力ですね。
生きづらさやつらい過去を背負った主人公の物語はすでに多く出されていますし、私も好んで読むのですが、一方でそうではない本があってもいい。今は、そういった重たい読後感とは別の小説を書きたいなと思っています。
『婚活マエストロ』
著者:宮島未奈
発売日:2024年10月
発行所:文藝春秋
価格:1,760円(税込)
ISBNコード:9784163919089
40歳の三文ライター・猪名川健人は、婚活事業を営む「ドリーム・ハピネス・プランニング」の紹介記事を書く仕事を引き受ける。安っぽいホームページ、雑居ビルの中の小さな事務所……どう考えても怪しい。
手作り感あふれる地味なパーティーに現れたのは、やけに姿勢のいいスーツ姿の女性・鏡原奈緒子。場違いなほどの美女だが、彼女は「私は本気で結婚を考えている人以外は来てほしくありません」と宣言する。そして生真面目にマイクを握った――そう、彼女は婚活業界では名を知らぬ者はいない〈婚活マエストロ〉だった。(文藝春秋BOOKS『婚活マエストロ』より)
無理のないペースで、今後も納得のいく作品を
―― 昨年から今年にかけては、かなり大きな環境の変化があったかと思います。振り返ってみていかがですか?
東京に出張して取材を受けたりサインをしたり、確かに忙しいですし、やるべきことも増えましたけれど、依然として滋賀にいて普段の暮らしは変わらないです。
これまでの3冊に関しては、『成瀬は天下を取りにいく』が出る前に『成瀬は信じた道をいく』を書き始めていて、当時はそれだけに専念できていました。『婚活マエストロ』に関しては隔月連載だったのですが、わりと原稿の進みが早くて奇跡的に書けた感じです(笑)。
現在は「成瀬」シリーズの3作目やSTORY BOX(小学館)の連載「それいけ! 平安部」の執筆があり、NHK「基礎英語」シリーズのテキストにも毎月短い小説を載せています。それ以外にも今後の作品についての打ち合わせが同時進行で進んでいますので、今が一番忙しいかもしれません。
――来年もご活躍が続きそうですね。
本屋大賞を受賞してスポットライトが当たっていますが、来年、次の受賞者の方にバトンタッチしたら、その先はもう少しのんびりしたいという願望があります。今は、無理のないペースで続ける方法を模索しているところです。デビュー作で貴重な経験をさせていただいたので、今後も自分の納得いくものを書いていきたいなと思っています。
宮島未奈さんのお墨付き!2024年のおすすめ小説6作
普段からSNSで話題になっている本や、書店員さんや編集者が「おもしろい」とすすめてくれる本など、多くの小説を読んでいるという宮島さん。今年のベスト3をお聞きしたところ、「たくさんあって選べません!」と6作品をご紹介くださいました。
■森見登美彦著『シャーロック・ホームズの凱旋』
- シャーロック・ホームズの凱旋
- 著者:森見登美彦
- 発売日:2024年01月
- 発行所:中央公論新社
- 価格:1,980円(税込)
- ISBNコード:9784120057342
「天から与えられた才能はどこへ消えた?」舞台はヴィクトリア朝京都。洛中洛外に名を轟かせた名探偵ホームズが……まさかの大スランプ!? 謎が謎を呼ぶ痛快無比な森見劇場、ついに開幕!
(中央公論新社公式サイト『シャーロック・ホームズの凱旋』より)
森見登美彦さんの3年半ぶりの新刊となる本作の発売にあわせ、今年2月に森見さんとトークショーをさせていただきました。ファンのみなさんが待ちわびていたこと、森見さんが本当に多くの読者に愛されていることを実感しました。私も1ページ目で「森見さんの世界に帰ってきた!」と引き込まれた、ファンにはたまらない一冊でした。
ご自身も、「これは僕と妻の話だ」とおっしゃっていましたが、そういう観点で読むと、まさに愛の話だなと思います。
■日野瑛太郎著『フェイク・マッスル』
- フェイク・マッスル
- 著者:日野瑛太郎
- 発売日:2024年08月
- 発行所:講談社
- 価格:1,980円(税込)
- ISBNコード:9784065361917
たった3ヵ月のトレーニング期間で、人気アイドル大峰颯太がボディービル大会の上位入賞を果たした。SNS上では「そんな短期間であの筋肉ができるわけがない、あれは偽りの筋肉だ」と、ドーピングを指摘する声が持ち上がり、炎上状態となってしまう。当の大峰は疑惑を完全否定し、騒動を嘲笑うかのように、「会いに行けるパーソナルジム」を六本木にオープンさせるのだった。
文芸編集者を志しながら、『週刊鶏鳴』に配属された新人記者・松村健太郎は、この疑惑についての潜入取材を命じられ、ジムへ入会する。馬場智則というベテラン会員の助力を得て、大峰のパーソナルトレーニングを受講できるまでに成長。ついに得た大峰との一対一のトレーニングの場で、ドーピングを認める発言を引き出そうとするが、のらりくらりと躱されてしまう。あの筋肉は本物か偽物か。松村は、ある大胆な方法で大峰をドーピング検査にかけることを考え付くのだが――?(講談社BOOK倶楽部『フェイク・マッスル』より)
2024年の江戸川乱歩賞受賞作ですが、こういった作品が乱歩賞になるんだという意外性がありました。ハリウッド映画的な、いい意味で粗削りな感じがあって、私はそこがいいと思いました。エンターテインメントに振り切った、ミステリが苦手な人でも楽しく読める作品です。
■山内マリコ著『マリリン・トールド・ミー』
- マリリン・トールド・ミー
- 著者:山内マリコ
- 発売日:2024年05月
- 発行所:河出書房新社
- 価格:1,870円(税込)
- ISBNコード:9784309031859
友達なし、恋人なし、お金なし。上京直後にコロナ禍に見舞われた大学生・瀬戸杏奈。孤独を募らせる彼女のもとに、ある夜、伝説の大女優から電話がかかってきて――。運命突破系青春小説!
(河出書房新社公式サイト『マリリン・トールド・ミー』より)
コロナ禍の大学生が主人公の話ですが、帯にもある「伝説のハリウッドスターから電話がかかってきて――」というところにだけ着目すると、本質を見失ってしまうかもしれません。フェミニズムへの目覚めを描いた作品ではありますが、同時に大学生がコロナ禍を通して成長していく、その着地点も見事です。
■木爾チレン著『二人一組になってください』
- 二人一組になってください
- 著者:木爾チレン
- 発売日:2024年09月
- 発行所:双葉社
- 価格:1,815円(税込)
- ISBNコード:9784575247688
卒業式直前に始まったデスゲーム(特別授業)
あなたに本当の友達はいる?誰かと手を繋がないと死ぬ――。
女子高のクラス内カーストが崩壊し、裏切り、嫉妬、憧れ、真実が手を取り合う。
『みんな蛍を殺したかった』の著者が青春と友情の極致を描く最高傑作!(双葉社公式サイト『二人一組になってください』より)
まさに『バトル・ロワイアル』のようなデスゲームを描いている作品です。血生臭い話なので、楽しいと言ってはいけないのかもしれませんが、次は誰がどうなるのだろうという興味でどんどん読めてしまいます。『バトル・ロワイアル』が好きな人には絶対におすすめです。
本作の舞台は京都なのですが、私は木爾チレンさんの描く京都が大好きなんです。京都って美化されて書かれることも多いと思うのですが、木爾さんは京都出身なだけあって、一“地方都市”としての京都で生活している女子高生たちの息吹が感じられる小説です。
■水庭れん著『今宵も猫は交信中』
- 今宵も猫は交信中
- 著者:水庭れん
- 発売日:2024年08月
- 発行所:講談社
- 価格:1,980円(税込)
- ISBNコード:9784065362990
宵、きせき、シュトレン、めい子の4匹は別々の家に引き取られた四姉妹。今日も元気にごろごろ喉を鳴らし、テレパシーで会話中。しかし、いつも明るいめい子の様子がおかしい。飼い主夫婦が離婚の危機にあるようだ。猫の自分には引き留めることができないと途方に暮れるめい子の元に現れたのはなんと宵だった! なぜならお姉ちゃんだから!
猫と猫、猫と人の絆を描く、猫視点ハートフルドラマ!
(講談社BOOK倶楽部『今宵も猫は交信中』より)
猫の4姉妹の視点で語られる物語なのですが、普段本を読まない小学生の娘が大好きで、私も読んでみたら本当に猫がかわいいんです。私は特別猫好きではないのですが、本当に猫がこんなことを喋っていたらいいなと思います。猫を通して家族愛が伝わるハートウォーミングな話でありつつ、現実の厳しさもあるところが魅力です。
■新川帆立著『ひまわり』
- ひまわり
- 著者:新川帆立
- 発売日:2024年11月
- 発行所:幻冬舎
- 価格:2,090円(税込)
- ISBNコード:9784344043541
ある日事故に遭い、頚髄を損傷してしまったひまり。
リハビリを続けるも復職の夢は潰え、一念発起して弁護士を目指す。鉛筆も握れず、六法全書も開けない。
言葉のみを味方に、果たして司法試験を突破できるのか?
「言葉は私の最後の砦。言葉がある限り、私たちはつながれる」(幻冬舎公式サイト『ひまわり』より)
事故で体が不自由になった女性が弁護士になる、というゴールは見えているのですが、そこにたどり着くまでにはものすごい困難が待ち受けています。次から次へと現れる敵を倒す、「少年ジャンプ」的な要素があって、主人公のひまりは体を動かせなくて痛々しいし、本当に大変なのですが、彼女自身はケロッとしている。その強さに、意外とリアルってこういうことなのかもしれないと思わされました。感動的でありつつも湿っぽくない、そんな作品です。
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生き生きと各作品の読みどころをお話しくださる様子から、本当に小説を読むことを楽しんでいらっしゃることが伝わってきました。そんな小説を愛する宮島さんが生み出した作品を、今回ご紹介した6冊とあわせ、ぜひ手に取ってみてください。