「川上未映子」2023年書籍 ベストセラーランキング発表
2007年に『わたくし率 イン 歯ー、または世界』で作家デビュー後、2008年1月には『乳と卵』で第138回芥川賞を受賞した川上未映子さん。
その後も、『ヘヴン』で芸術選奨文部科学大臣新人賞と紫式部文学賞、『愛の夢とか』で谷崎潤一郎賞、『夏物語』で毎日出版文化賞といった名だたる文学賞を受賞しています。また詩の分野でも、『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』で中原中也賞、『水瓶』で高見順賞を得ています。
美しく詩的な独特の文体と、緻密な心理描写で多くの読者を作品世界に引き込んでいる川上さん。女性の視点やジェンダーの問題も含め、“生きづらさ”を抱える現代社会での生き方を問うような作品も、多くの共感を得ています。また、その時々の自身の内面や社会の変化にも目を向けた率直なエッセイも人気があり、自分と重ね合わせて読んでいる読者も多いのではないでしょうか。
作品の広がりは国内だけでなく、『夏物語』が40か国以上で刊行され、2020年にタイム誌の「今年の10冊」に選出。『ヘヴン』は2022年ブッカー国際賞の最終候補に、また2023年には『すべて真夜中の恋人たち』が「全米批評家協会賞」最終候補にノミネートされるなど、近年、海外からも高い評価を受けています。
今回は、川上さんの作品で、2023年の販売冊数を集計したベストセラーランキングをご紹介します。ランキングをご参考に、ぜひ書店店頭でお好みの1冊を手に取ってみてください。
※ランキングは2023年の販売冊数を集計しています(集計期間:2023/1/1~2023/12/31)
※日販調べ
2023年に一番人気の作品は…?!
川上未映子さんの書籍で、2023年に一番人気があった作品は『黄色い家』でした。
本作では、17歳の夏、親もとを出て「黄色い家」に集った少女たちが、生きていくためにカード犯罪の出し子というシノギに手を染めます。やがて危ういバランスで成り立っていた共同生活は、ある女性の死をきっかけに崩壊していき……と、いまの社会に蔓延する生きづらさや、格差や貧困の問題、人はなぜ金に囚われ、罪を犯すのかといった問題に深く斬りこんだ作品です。
刊行当初から多数のメディアで取り上げられただけでなく、第75回読売文学賞(小説賞)や王様のブランチBOOK大賞2023、2024年本屋大賞第6位、キノベス!2024第2位に選ばれるなど大きな話題となりました。リアリティある緻密な文章で描かれた本作は、米、英、伊、仏など世界中から翻訳オファーが寄せられ、海外からも注目を集めています。
『黄色い家』
著者:川上未映子
発売日:2023年2月
発行所:中央公論新社
定価:2,090円(税込)
ISBN:9784120056284
2020年春、惣菜店に勤める花は、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。長らく忘却していた20年前の記憶――黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。まっとうに稼ぐすべを持たない花たちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな“シノギ”に手を出すことになる。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かい......。
(中央公論新社『黄色い家』特設ページより)
「川上未映子」2023年書籍 ベストセラーランキング第2位~第10位
第2位『すべて真夜中の恋人たち』
- すべて真夜中の恋人たち
- 著者:川上未映子
- 発売日:2014年10月
- 発行所:講談社
- 価格:814円(税込)
- ISBNコード:9784062779401
全米批評家協会賞 小説部門 最終候補ノミネート!
「真夜中は、なぜこんなにもきれいなんだろうと思う」。
わたしは、人と言葉を交わしたりすることにさえ自信がもてない。誰もいない部屋で校正の仕事をする、そんな日々のなかで三束さんにであった――。(講談社BOOK倶楽部『すべて真夜中の恋人たち』より)
第3位『夏物語』
- 夏物語
- 著者:川上未映子
- 発売日:2021年08月
- 発行所:文藝春秋
- 価格:1,089円(税込)
- ISBNコード:9784167917333
大阪の下町で生まれ小説家を目指し上京した夏子。38歳の頃、自分の子どもに会いたいと思い始める。子どもを産むこと、持つことへの周囲の様々な声。そんな中、精子提供で生まれ、本当の父を探す逢沢と出会い心を寄せていく。生命の意味をめぐる真摯な問いを切ない詩情と泣き笑いの筆致で描く、全世界が認める至高の物語。
(文藝春秋BOOKS『夏物語』より)
第4位『ヘヴン』
- ヘヴン
- 著者:川上未映子
- 発売日:2012年05月
- 発行所:講談社
- 価格:748円(税込)
- ISBNコード:9784062772464
2022年「ブッカー国際賞」最終候補作!
芸術選奨文部科学大臣新人賞・紫式部文学賞 ダブル受賞〈わたしたちは仲間です〉――十四歳のある日、同級生からの苛めに耐える〈僕〉は、差出人不明の手紙を受け取る。苛められる者同士が育んだ密やかで無垢な関係はしかし、奇妙に変容していく。葛藤の末に選んだ世界で、僕が見たものとは。善悪や強弱といった価値観の根源を問い、圧倒的な反響を得た著者の新境地。
(講談社BOOK倶楽部『ヘヴン』より)
第5位『乳と卵』
- 乳と卵
- 著者:川上未映子
- 発売日:2010年09月
- 発行所:文藝春秋
- 価格:616円(税込)
- ISBNコード:9784167791018
身体と言葉が交錯する芥川賞受賞作
娘の緑子を連れて大阪から上京した姉の巻子は、豊胸手術に取り憑かれている。2人を東京に迎えた狂おしい3日間。(文藝春秋BOOKS『乳と卵』より)
第6位『深く、しっかり息をして 川上未映子エッセイ集』
- 深く、しっかり息をして 川上未映子エッセイ集
- 著者:川上未映子
- 発売日:2023年07月
- 発行所:マガジンハウス
- 価格:1,760円(税込)
- ISBNコード:9784838732432
川上未映子、12年間の軌跡。
雑誌Hanakoの連載エッセイ「りぼんにお願い」が書籍化!どれだけ時間が過ぎても言葉にできないことが
それぞれの胸にあるのだと思う
――川上未映子(マガジンハウス公式サイト『深く、しっかり息をして 川上未映子エッセイ集』より)
第7位『愛の夢とか』
- 愛の夢とか
- 著者:川上未映子
- 発売日:2016年04月
- 発行所:講談社
- 価格:660円(税込)
- ISBNコード:9784062933681
あのとき、ふたりが世界のすべてになった――。
ピアノの音に誘われて始まった女どうしの交流を描く表題作「愛の夢とか」。別れた恋人との約束の植物園に向かう「日曜日はどこへ」他、なにげない日常の中でささやかな光を放つ瞬間を美しい言葉で綴る。谷崎潤一郎賞受賞作。
収録作:アイスクリーム熱/愛の夢とか/いちご畑が永遠につづいてゆくのだから/日曜日はどこへ/三月の毛糸/お花畑自身/十三月怪談
(講談社BOOK倶楽部『愛の夢とか』より)
第8位『きみは赤ちゃん』
- きみは赤ちゃん
- 著者:川上未映子
- 発売日:2017年05月
- 発行所:文藝春秋
- 価格:792円(税込)
- ISBNコード:9784167908577
妊娠が判明したときから、出産を経て、1歳の誕生日まで、出産・育児という大事業で誰もが直面することを、芥川賞作家の鋭い観察眼で赤裸々かつユーモラスに描き、多くの共感と感動を呼んだ異色エッセイ。
つわり、マタニティブルー、分娩の苦しみ、産後クライシス、仕事と育児の両立……
妊娠&出産という個人的かつデリケートな出来事を、己の身体と精神の状況を赤裸々に描く。(文藝春秋BOOKS『きみは赤ちゃん』より)
第9位『みみずくは黄昏に飛びたつ』
- みみずくは黄昏に飛びたつ
- 著者:川上未映子 村上春樹
- 発売日:2019年12月
- 発行所:新潮社
- 価格:825円(税込)
- ISBNコード:9784101001753
ようこそ、村上さんの井戸へ――川上未映子はそう語り始める。少年期の記憶、意識と無意識、「地下二階」に降りること、フェミニズム、世界的名声、比喩や文体、日々の創作の秘密、そして死後のこと……。初期エッセイから最新長編まで、すべての作品と資料を精読し、「村上春樹」の最深部に鋭く迫る。十代から村上文学の愛読者だった作家の計13時間に及ぶ、比類なき超ロングインタビュー!
(新潮社公式サイト『みみずくは黄昏に飛びたつ』より)
第10位『ウィステリアと三人の女たち』
- ウィステリアと三人の女たち
- 著者:川上未映子
- 発売日:2021年05月
- 発行所:新潮社
- 価格:539円(税込)
- ISBNコード:9784101388649
大きな藤の木のある、壊されつつある家。真夜中に忍び込んだわたしは、そこに暮らした老女、ウィステリアの生を体験する。かつて存在した愛を魔術的に蘇らせる表題作。思いがけぬ大金を得、デパートで連日買い物を続ける女性の虚無を描く「シャンデリア」。いくつかの死、失った子ども、重なり合う女たちの記憶……研ぎ澄まされた言葉で紡がれる、美しく啓示的な四作を収録した傑作短編集。
(新潮社公式サイト『ウィステリアと三人の女たち』より)
著者のプロフィール
川上未映子
かわかみ・みえこ。大阪府生まれ。2008年『乳と卵』で芥川龍之介賞、09年、詩集『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』で中原中也賞、10年『ヘヴン』で芸術選奨文部科学大臣新人賞および紫式部文学賞、13年、詩集『水瓶』で高見順賞、同年『愛の夢とか』で谷崎潤一郎賞、16年『あこがれ』で渡辺淳一文学賞、19年『夏物語』で毎日出版文化賞を受賞。他の著書に『春のこわいもの』など。『夏物語』は40カ国以上で刊行が進み、『ヘヴン』の英訳は22年ブッカー国際賞の最終候補に選出された。23年2月、『すべて真夜中の恋人たち』が「全米批評家協会賞」最終候補にノミネート。
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