人生の「たられば」の先にある希望を描く、10年ぶりの短篇集
京都大学在学中の1999年に、『日蝕』で芥川賞を当時最年少で受賞した平野啓一郎さん。その後も第一線で活躍を続け、近年では『マチネの終わりに』『ある男』『本心』と新作が出版される度にベストセラーになっています。中でも近未来の日本を舞台にデジタル化社会の功罪を描いた『本心』は、11月8日(金)に実写映画の公開を控え、改めて注目を集めています。
そんな平野さんの3年ぶりの新作小説『富士山』が、10月17日(木)に発売されます。
『富士山』
著者:平野啓一郎
発売日:2024年10月17日
定価:1,870円(税込)
発行所:新潮社
ISBN:9784104260119
あり得たかもしれない人生の中で、なぜ、この人生だったのか? そんな誰しもが抱く「たられば」の迷路の先に希望を見出す5篇が収録されています。平野さんにとっては、2014年刊行の『透明な迷宮』以来、10年ぶりの短篇集です。
なお、収録作の「ストレス・リレー」は2021年11月にNHK京都局のスペシャルドラマとして映像化されるなど、雑誌発表時からの話題作が収録された作品集となっています。
【内容紹介】
コロナ禍、ストレス、無差別殺傷、重病リスク……。
他人のことも、自分自身のことすら不確かな時代を生きる
私たちの「あり得たかもしれない」世界を描く、5つのストーリー。
「富士山」 恋人になりかけた人のことを、私はどこまで知っているのだろう。
「息吹」 かき氷屋が満席だったかどうかで、生きるか死ぬかが決まるというのか?
「鏡と自画像」 終らせようとナイフを手にした時、あの自画像が僕を見つめていた。
「手先が器用」 幼少期にかけられた一つの褒め言葉は、願いか、あるいは呪いか。
「ストレス・リレー」 人から人へと伝染する連鎖と、それを断ち切った一人の英雄。
著者コメント
あり得たかもしれない幾つのもの人生の中で、何故、今のこの人生なのか?──
幸福の最中にあっても、不幸の最中にあっても、この疑問が私たちの心を去ることはないだろう。
誰かを愛するためには、自分の人生を愛せないといけないのか?
それとも、自分の人生を愛するために、私たちには、愛する誰かが必要なのか?
些細なことで運命が変わってしまう。これは、絶望であるかもしれないが、希望でもあるだろう。私たちの善意は、大抵、ささいなもののように見えているのだから。私たちが前を向くきっかけは、確かに、どこにでもあり得る。
平野啓一郎(ひらの・けいいちろう)
1975年、愛知県生まれ、北九州出身。京都大学法学部卒。大学在学中に文芸誌『新潮』に投稿した『日蝕』により、1999年、芥川賞を受賞。著書は小説作品として、『日蝕・一月物語』、『葬送』、『高瀬川』、『滴り落ちる時計たちの波紋』、『決壊』(芸術選奨文部科学大臣新人賞)、『ドーン』(第19回Bunkamuraドゥマゴ文学賞)、『かたちだけの愛』、『空白を満たしなさい』、『透明な迷宮』、『マチネの終わりに』(第2回渡辺淳一文学賞)、『ある男』(第70回読売文学賞)、『本心』などがある。評論、対談、エッセイとして、『文明の憂鬱』、『ディアローグ』、『モノローグ』、『私とは何か 「個人」から「分人」へ』、『「生命力」の行方 変わりゆく世界と分人主義』、『「カッコいい」とは何か』、『三島由紀夫論』(第22回小林秀雄賞)などがある。
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