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ぼっちを極めるお嬢様と、記憶を失ったミステリアス男子の本能的主従ラブ♡『花に噛みぐせ』

青春がしたいお嬢様JKと、治安ワルめな獣系男子

『花に噛みぐせ』、なんとも色っぽい題名ですが、掲載誌は「なかよし」です。少女マンガならではの艶っぽさと、青春への素直なあこがれがつまっています。

ヒロインの“漆原珠羽(うるしばらすう)”は高校2年生。初登場からすでに完璧にヒロインなんです。

背景にはお花が咲き乱れ、どこからともなくキラキラと光の粒が舞い降りて、そんな花と光に負けないくらい美しい髪の毛と丁寧に描かれた瞳! なんて絵になる少女なんでしょう。王道ヒロイン間違いなし。

そう、珠羽は絵になるのです。しかも謎めいたお嬢様。

「欲しいもの何でも持ってそう」で、近寄りがたい存在。でも珠羽がこのとき何を考えているかというと、

青春がしたい。友達と一緒に放課後にカフェに行ってみたり、買い物をしたり、カラオケしたり……そういう、ふつうの高校生活にずっと憧れています。欲しいもの何でも持ってそうなのに、友達がいないのです。しかも不器用で自分から話しかけることもできない。

毎日毎日、パパが手配した送迎の車に乗り込んで登下校をしています。そしてそんなある日、出会ってしまうのです。

信号は赤なのにフラフラと歩いてきたこの男とあわや事故!

幸い交通事故は免れたけれど、道端に倒れ込んだ彼を放っておくことができず、自宅へ連れ帰ることに。目を覚ました彼は記憶が曖昧で、自分の名前もおぼつかないくらい。

“雪”はしばらく珠羽の家で暮らすことに。

学校のみんなのように「近寄りがたい存在」なんて言わない雪となら、珠羽は普通に話せて、自分が青春に憧れていることや、友達がほしいことも打ち明けられるのです。そしてなぜ珠羽が友達を作ることを恐れているのかも、ちゃんと話せます。

穏やかで優しい雪にどんどん惹かれていく珠羽。でも……?

待って、誰?

ああそうか、自分の名前も「たぶん“ゆき”」と説明するくらい記憶があやふやだから「元の俺」がこんな感じでも不思議ではない。珠羽にまつわるトラブルで雪は覚醒したようです。

こんな治安のワルそうな人、珠羽のそばに置いておくなんてパパが許さない……と思いきや、いろいろあってパパは雪を気に入り、ボディガードとして雇うことに。

 

青春ってこんな感じだったっけ?

ボディガードはご主人様を24時間守ります。だから珠羽と雪は24時間一緒。

珠羽のイメージする青春には、確かに「お泊まり会」があったけれど、こういうスタイルだっけ?

はい、タイトル回収きましたね。噛みぐせはあるけれど、一応、ボディガードとしては有能なんですよ。

 

天使どころか悪魔

雪は珠羽のそばを片時も離れません。通学も一緒、教室でも隣同士。

ずっと憧れてきた「友達との通学」も実現。夢が叶ってよかったね。雪の本性(?)を見た後も、珠羽は雪となら素直に話せます。そのことは珠羽の学校生活にもこんな変化をもたらすことに。

球技大会をサボる気まんまんの珠羽に普通にツッコミを入れてくれる人は雪だけ。そして治安がワルいのにていねいな言葉で珠羽に話しかける雪がなんだかかわいい。

校庭じゃなくて豪邸のお庭で、放課後じゃなく夜更けだけど、バスケの練習を友達としていることは事実です。ちゃんと青春だね(雪の顔も治安ワルくないし!)。それでいて非常に色っぽいのです。

音楽が聴こえてきそう。これは放っておけないかも。

待って待って珠羽の横にいるのは誰? 雪はどうしたの!? ボディガードちゃんと仕事して? いや、でも「教室でイヤホン半分こ」なんて青春の極致だなあ。王道少女マンガと艶っぽさのハイブリッドがたまらない。1巻が発売されるやいなや即重版で大注目なのも納得です。『花に噛みぐせ』、クセになりますよ。

(レビュアー:花森リド)

花に噛みぐせ 1
著者:壱コトコ
発売日:2024年06月
発行所:講談社
価格:550円(税込)
ISBNコード:9784065355640

※本記事は、講談社コミックプラスに2024年7月4日に掲載されたものです。
※この記事の内容は掲載当時のものです。