『レジの行列が早く進むのは、どっち!?』の要点
1.勝率に偏りがあるとき、複数回試行すると本当の実力がデータに表れやすいことを「大数の法則」という。大数の法則はギャンブル店などに利用され、お客がたくさんプレイするほど損するように調節されている。
2.統計学をもとに未来を予測する際には、「データのバラつき=標準偏差」がより小さいものを選ぶ方が、誤差が生まれにくくよい意思決定といえる。
3.相関関係を因果関係と見誤ることを「疑似相関」という。数字に騙されないために、相関関係にあるデータを見た際は、疑似相関を疑うクセをつけたい。
『レジの行列が早く進むのは、どっち!?』レビュー
統計学という言葉に普段から慣れ親しんでいる読者は少ないかもしれない。しかし私たちは、日常生活のあらゆる場面で、統計や確率に接している。著者によれば確率論の始まりは、16世紀のイタリアで、「数学的に、ギャンブルに勝てる方法はないのか?」を検討し始めたことであるという。一方、統計学の基礎は、17世紀のイギリス人商人が、伝染病が蔓延する社会背景の中で、死亡統計表から「36%の子どもは6歳までに死ぬ」ということを発見したことに始まる。こうした成り立ちから、確率論と統計学は必勝法や法則発見のための学問であるといえる。
数字を使って言語化することは、課題における因果関係を明確にすることはもちろん、他者に対して説明する際にも役立つ。確率・統計は「この怪しい民間療法は本当に効くのか」「このワインは将来的にどれくらい価格が上がるか」といった、「解決したい何らかの謎」をきっかけとしている。これを著者は「数字を使ったリアル謎解き」と表現する。本書はあらゆる日常の「謎解き」をするように、ギャンブルではどのような原則が働くか、あるいは因果関係があることを説明するにはどういった数字が必要かなど、具体的な事例について図やグラフなどを用いながら解説されている。
著者は自身を「大の数学アレルギー」と称しており、今でも数学の専門書には眠気をさそわれるのだという。だからこそ、本書は数字を扱っていながら、数字嫌いにも直感的にわかりやすい説明で、数字を「どう見るか」に焦点が当てられている。数学が苦手でも、数字を「読める」ようになりたいという読者は、必読である。
『レジの行列が早く進むのは、どっち!?』が気になる方におすすめ
- このプリン、いま食べるか? ガマンするか? 一生役立つ時間の法則
- 著者:柿内尚文
- 発売日:2024年04月
- 発行所:飛鳥新社
- 価格:1,650円(税込)
- ISBNコード:9784868010029