新しい年が始まりました。ほんのひきだしでは今年も皆様の読書ライフの充実をお手伝いすべく、人生を豊かにしてくれる、さまざまな魅力あふれる本をご紹介していきます。
まずは、1月1日より12日間にわたり、各出版社の文芸編集者の皆さんが【いま注目の作家】を紹介する「編集者が注目!2023年はこの作家を読んでほしい!」をお届けします。
ぜひ、今年の“初読み”にふさわしい一冊を見つけて、書店に足を運んでみてください。
KADOKAWA編集者 和田典子さんの注目作家は「新名智」
新名智(にいな さとし)
1992年生まれ。長野県上伊那郡辰野町出身。2021年『虚魚』で第41回横溝正史ミステリ&ホラー大賞〈大賞〉を受賞し、デビュー。22年7月に第2作『あさとほ』(KADOKAWA)を刊行した。
新名智特設サイト
読むものを魅了する、唯一無二の物語世界
新名智さんは2021年『虚魚(そらざかな)』で横溝正史ミステリ&ホラー大賞を受賞し、デビューしました。『虚魚』は「体験した人が死ぬ怪談」を探す物語で、ミステリとしてもホラーとしても見事な出来だという選考委員の絶賛とともに刊行されました。
デビュー作のあまりの完成度に、次作へ募る期待と不安。どんな作品になるだろう、『虚魚』を超えるのは難しいのでは……。そんな気持ちで恐る恐る読んだ第2作『あさとほ』は、私の杞憂を吹き払う圧倒的な完成度でした。
物語の始まりは、幼い主人公の前で双子の妹が消えるという衝撃的なシーン。その消失が忘れられないまま大学生になった主人公の周りで、ふたたび人が消え始めます。それには平安時代の幻の物語「あさとほ」が関わっていて……。
「読んだ人が消える物語」という妖しい謎に心をわしづかまれ、ホラーの鉄板シチュエーションに歓喜し、流れるようにしかし予測不可能に進むストーリーから目が離せない。文句なしの一気読みで、『虚魚』とはまた違う、世界がぐんと広がるスケールの大きさに読後はしばし呆然。この感動を私だけのものにしたくない!と、翌日には編集部で会う人みんなに「新名さんの2作目、面白いです。読んでください!」と言い回りました。
『あさとほ』を読んで、新名さんは自分の描くべき世界を既に持っているんだ、と腑に落ちました。ミステリとホラーとSFが混じり合ったような、新名さんだけの物語世界。それがもう出来ているから、前作を超えられるかなんて心配を抱くことはもうありません。どんどん作品を発表して、その世界を出来るかぎりたくさん見せて欲しいと願うだけです。
そんな新名さんの第3作、23年春刊行予定で準備をしています。「呪いのゲーム」を巡るお話なのですが……どこまでこの人の物語世界は広くて深いの?と驚愕すること間違いなしの力作です。楽しみにしていて下さい。
(KADOKAWA 文芸・映像事業局 和田典子)
あさとほ
著者:新名智
発売日:2020年7月
発行所:KADOKAWA
価格:1,760円(税込)
ISBN:9784041126097
虚魚
著者:新名智
発売日:2021年10月
発行所:KADOKAWA
価格:1,815円(税込)
ISBN:9784041118856