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小さなミスでも叩かれてしまう時代。いま重要視されている「訂正する力」とは?【総合3.8】

訂正する力(朝日新聞出版)東浩紀

訂正する力
著者:東浩紀
発売日:2023年10月
発行所:朝日新聞出版
価格:935円(税込)
ISBNコード:9784022952387

 

『訂正する力』の要点

1.「訂正する力」とは、単に誤りを認めて正すのではなく、一貫性を持ちながらも変化していく力のことである。

2.現代日本では空気の力が強い。単なる批判は、批判という空気をつくるに留まってしまう。必要なのは「これこそが本当のルールだったのだ」と主張しながら一貫性を守り、少しずつルールを変えていくことで気がつけば変化が起きている、といった「訂正」の営みである。

3.「訂正の力」の核心は「じつは……だった」という発見の感覚にある。これはAIにも代替できない、人間らしい感覚だ。

 

『訂正する力』レビュー

自分の誤りをなかなか認めることができず、意地を張った言動をしてしまう。誰でもそのようなひとに出会った経験はあるだろう。あるいは自分がそうなってしまったことがあるひとも、決して少なくないと思われる。かつての行動や認識を誤っていたと認め、新しく捉え直す――自分を「訂正」することは、とても勇気の要ることだ。

本書の著者である東浩紀氏は、そんな「訂正する力」こそが重要だと考える。我々は変化しようとするとき、それまでの過去を捨て去ってリセットし、そこからまったく新しいものを打ち立てようとしてしまいがちである。しかし過去を消してしまうことはできないし、そういったリセットは必ずしも豊かではない。訂正とは、過去を認めながらも再解釈し、新しい未来を切り拓いていく営みだ。それは単に間違いを正すという意味を超えて、認識をアップデートして成長していく意味合いを帯びている。それこそが今の日本に必要な力だというのが著者の主張だ。

批評家・哲学者である著者はさまざまな思想家を引用しながら理論的に「訂正する力」の重要性を論じていくが、同時に自身が「訂正」した経験についても語っていく。身近で誰もが行っていながら、意外にも難しい「訂正の力」を、きっと実感できることだろう。

 

『訂正する力』が気になる方におすすめ

訂正可能性の哲学
著者:東浩紀
発売日:2023年09月
発行所:ゲンロン
価格:2,860円(税込)
ISBNコード:9784907188504