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国民的ヒーロー「アンパンマン」の生みの親・やなせたかしの「愛と勇気の人生論」【総合3.7】

ボクと、正義と、アンパンマン(PHP研究所)やなせたかし

ボクと、正義と、アンパンマン
著者:やなせたかし
発売日:2022年02月
発行所:PHPエディターズ・グループ
価格:1,628円(税込)
ISBNコード:9784569851518

 

『ボクと、正義と、アンパンマン』の要点

1.アンパンマンは善の心、バイキンマンは悪の心を表しているが、善の心だけでは精神的な抵抗力が育たない。成長には悪の心も必要である。

2.子どもも大人も本質は同じである。子どもらしい甘い童謡は大人の嘘で、子どもはそれをすぐに見抜く。子どもの好みはどんな批評家の批評よりも強力で、純粋だ。すべての子どもは自分の師である。

3.人が一番うれしいのは、人をよろこばせることだ。人は皆、それぞれの得意なことを活かして他者をよろこばせて生きている。人生の短い時間はなるべく楽しく過ごしたほうがいいのだから、人をよろこばせて生きるのがよい。

 

『ボクと、正義と、アンパンマン』レビュー

「なんのために生まれて なにをして生きるのか」

言わずと知れた、アニメ『アンパンマン』の主題歌『アンパンマンのマーチ』の一節だ。子ども向け作品の歌詞ながら、大人になっても考えさせられる言葉である。この歌詞は『アンパンマン』シリーズの作者であるやなせたかし氏の作である。本書はやなせ氏のエッセイをまとめたものだ。読んでみると、やなせ氏の仕事にかける想いや姿勢がうかがえる。

やなせ氏は子ども向けだからと内容のレベルを下げることはしないという。大人というのは「子どものなれの果て」であり、本質的に大人と子どもは変わらないというのがやなせ氏の考えだ。だから、子どもに「なんのために生まれて なにをして生きるのか」と問う。その場で意味がわからずともよい。それは子どもの心に深く染み込んでいくものだ。だからこそ、子ども向けにかく大人の責任は重大なのだという。子どもへの敬意と仕事への責任感が垣間見えるやなせ氏の生き方には学ぶべき点が多い。

『詩とメルヘン』の編集長も務めたやなせ氏の言葉は、ひとつひとつが美しい。すごいスピードで進む世の中で、つい結果を急いでしまう私たちの心にも、その言葉は染み込んでいく。現代を生きる大人にこそ、「愛と勇気と冒険」が必要なのかもしれない。やなせ氏のやわらかく温かい言葉をじっくりと味わってもらいたい。

 

『ボクと、正義と、アンパンマン』が気になる方におすすめ

勇気の花がひらくとき
著者:梯久美子
発売日:2015年10月
発行所:フレーベル館
価格:1,320円(税込)
ISBNコード:9784577043059