新しい年が始まりました。ほんのひきだしでは今年も皆様の読書ライフの充実をお手伝いすべく、人生を豊かにしてくれる、さまざまな魅力あふれる本をご紹介していきます。
まずは、1月1日より12日間にわたり、各出版社の文芸編集者の皆さんが【いま注目の作家】を紹介する「編集者が注目!2023年はこの作家を読んでほしい!」をお届けします。
ぜひ、今年の“初読み”にふさわしい一冊を見つけて、書店に足を運んでみてください。
東京創元社編集者 金城颯さんの注目作家は「砂村かいり」
砂村かいり(すなむら かいり)
神奈川県在住。「炭酸水と犬」と「アパートたまゆら」にて 第5回カクヨムWeb小説コンテスト〈恋愛部門〉特別賞を2作同時受賞し作家デビュー。2023年4月に東京創元社から新刊を発売予定。
あらゆるしがらみに捉われない“絆”の物語
泡が弾けるような装幀に惹かれて手に取った『炭酸水と犬』が、砂村かいりさんとの最初の出会いでした。
同棲中の彼氏による「もうひとり、彼女ができたんだ」という衝撃の告白から展開していく、じれったくも先が気になる展開に一気に読み進めてしまいました。そして改めて帯を見返すと、「第5回カクヨムWeb小説コンテスト恋愛部門〈特別賞〉二作同時受賞!」の文字が。すぐに書店へ駆け込み、砂村さんのもう一つの受賞作『アパートたまゆら』を購入しました。
それから紆余曲折を経て砂村さんとお仕事をさせて頂くことになり、ご挨拶も兼ねて喫茶店で最初の打ち合わせをすることになりました。様々なカルチャーへの興味と知識量に驚かされながらも、共通の好きなドラマや小説、音楽の話で盛り上がり、今思い返すとあまりお仕事の話はしていなかったような気がしています。
そんな中でも特に熱を帯びた口調が印象的だったのは、平成アイドルのお話でした。
2023年4月に東京創元社から刊行を予定している砂村かいりさんの新作は、まさに著者のアイドルという存在への愛情があふれる一作です。
本作は、「かつてアイドルとして活動していた社長」と「その活動を観てアイドルに憧れていた新入社員」が出会い、すれ違いや立ちはだかる困難の果てに行きつく、年齢や立場を越えた先にある”絆”が描かれます。
「まだ明確に名づけられていない関係性について描きました。さまざまな人生の断片にぜひ、触れてみてください。」とは、砂村さんご自身からのメッセージです。
あたり前のように容姿をジャッジされる特異な環境に身を置いていた過去、社会人となってもあらゆる場面で値踏みされてしまう現在を、二人の女性の視点から紡いだ心を揺さぶる物語。人間関係に悩むあなたに、そして新しい環境に不安を感じるあなたにぜひ、読んでいただきたい一冊です。
(東京創元社 編集部 金城颯)
砂村かいりさんの既刊はこちら
炭酸水と犬
著者:砂村かいり、宮原葉月
発売日:2021年3月
発行所:KADOKAWA
価格:1,320円(税込)
ISBN:9784041111390
アパートたまゆら
著者:砂村かいり
発売日:2021年3月
発行所:KADOKAWA
価格:1,320円(税込)
ISBN:9784041111406