各出版社を代表する雑誌の編集長によるリレー連載「編集長雑記」。
今回は、『ワカコ酒』や『終末のワルキューレ』など、多くの話題作を連載している『月刊コミックゼノン』統括編集長の渡邊慎之介さんです。
前身の『週刊コミックバンチ』から編集部に在籍され、『月刊コミックゼノン』となった現在は、編集長としてチームを支える渡邊さん。チーム一丸となって作品づくりへ取り組む姿勢や、雑誌特有のおもしろさを追求した企画について、綴っていただきました。
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- 月刊コミックゼノン 2024年 04月号
- 著者:
- 発売日:2024年02月24日
- 発行所:コアミックス
- 価格:730円(税込)
- JANコード:4910135310447
チームの力で一人でも多くの人に作品を!
『月刊コミックゼノン』は、2023年10月に創刊13周年を迎えました。
2001年創刊の、『月刊コミックゼノン』の前身『週刊コミックバンチ』からは23年。新規参入が難しい、漫画雑誌業界の中で2000年代の創刊という、かなりの後発であった弊誌がここまで続けてこれたのは、稀有な例でちょっとした奇跡なのではないかと思っています。
改めてこれまで応援し続けてくれた読者の皆様、弊誌に関わってくれた全ての作家様に感謝いたします。
誌名の「ゼノン」は、観世音菩薩の「世音」から。「世の音(声)をよく聞く」。読者の皆様の声を聞いて成長していきたいという願いが込められています。
創刊時の編集方針は「傾く(かぶく)」。こちらは、原哲夫先生の『花の慶次』からいただきました。「傾く」とは、「異風の形を好み、異様な振る舞いや突飛な行動を愛すること」を指します。旧来の漫画雑誌の枠を打ち破り、読者の皆様を常に驚かせ続けたいという意気込みが込められています。
この意気込みを表すため、2010年の創刊号ではおそらく漫画界初であろう真っ赤な「傾きパンツ」を付録につけ大好評をいただきました。発売日に編集部員が吉祥寺の書店で雑誌を手売りしたのは大変でしたが、今ではいい思い出です。
他にも読者の顔が見える企画をしたいと、CAFE ZENONで行った「冴羽獠主催の婚活パーティー」など、創刊当時は作品を読むことだけではない「雑誌が持つおもしろさ」を追求しました。
漫画賞でも傾いていこう!ということでスタートした「マンガオーディション」は、セリフなし、17ページ以内、ストーリーなしのサイレント。演出力特化の今までにない漫画賞として好評を博し、後のゼノンを支えてくださる多くの若い才能を集めることとなりました。
数多のヒット作と読者の皆様に支えられ創刊13周年を迎えた今、目指していることは「チームの力で作品を一人でも多くの読者に届けること」です。
ゼノンでは、一人の編集者が出した企画に対して「編集部員全員が目を通し、意見を出し合うこと」、「複数の編集者がチームを作って新たな企画を考え立ち上げていくこと」、「作品を多くの読者に知ってもらうため、販売や電子など編集部以外の部署と協力してそれぞれの作品に合った方法を模索していくこと」を常に行ってきました。
これらの取り組みから『ワカコ酒』『終末のワルキューレ』『アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり』など多くのヒット作が生まれました。
若い編集者の感性や新しい知識、キャリアのある編集者が持つ経験やノウハウ、それらの知恵をチームゼノンとして、全ての作品に結集させ、これからも漫画家さんが生み出した作品を、多くの人に届けていきたいと思っています。
コアミックス ゼノン統括編集長
渡邊慎之介 WATANABE Shinnosuke
2004年入社後、『週刊コミックバンチ』編集部に在籍。2010年より『月刊コミックゼノン』。2015年〜同誌編集長。現在、『月刊コミックゼノン』、WEB「ゼノン編集部」統括編集長。