2月1日(木)、「2024年本屋大賞」のノミネート10作品が発表されました(関連記事)。
今回で21回目となる本屋大賞ですが、2023年12月1日~1月8日に一次投票が行われ、全国の530書店、書店員736人から投票がありました。その結果、上位10作品を「2024年本屋大賞」ノミネート作品とし、2月29日(木)まで二次投票が行われます。大賞は4月10日(水)に発表が予定されていますが、書店店頭の多くは、それらノミネート作を集めたフェアを実施しています。
ほんのひきだしでは、ノミネート10作品の中から気になる作品を短期連載形式でご紹介します。ぜひ、書店店頭に足を運んでノミネート作品を手に取ってみてください。
【Vol.2】知念実希人『放課後ミステリクラブ(1)金魚の泳ぐプール事件』
今回は、知念実希人さんの初の本格児童書ミステリシリーズの第1弾『放課後ミステリクラブ(1)金魚の泳ぐプール事件』を紹介します。知念さん曰く「大人のミステリ小説とまったく同じ手法で書きました」 というように、9歳から大人まで楽しめる本格ミステリシリーズ。児童書としては初めて、本屋大賞ノミネート作に選ばれました。
著者:知念実希人
発売日:2023年6月26日
発行所:ライツ社
判型:四六判並製・160ページ
定価:1,210円(税込)
ISBN:9784909044457
【あらすじ】
夜の学校。プールにはなたれた金魚。だれが、なんのために? 4年1組、辻堂天馬・柚木陸・神山美鈴、通称「ミステリトリオ」が先生の依頼で動き出す! 「ぼくは読者に挑戦する」名探偵辻堂天馬の挑戦に、キミはこたえられるか―?
(ライツ社公式サイト『放課後ミステリクラブ(1)金魚の泳ぐプール事件』より)
第1弾に続いて、2023年10月28日には、校庭に現れた巨大なミステリーサークルの謎を追う『放課後ミステリクラブ(2)雪のミステリーサークル事件』が刊行されました。2月21日(水)には、動くカメの銅像の謎を解く『放課後ミステリクラブ(3) 動くカメの銅像事件』が発売される予定です。
- 放課後ミステリクラブ 2
- 著者:知念実希人 Gurin.
- 発売日:2023年10月
- 発行所:ライツ社
- 価格:1,210円(税込)
- ISBNコード:9784909044471
- 放課後ミステリクラブ 3
- 著者:知念実希人 Gurin.
- 発売日:2024年02月
- 発行所:ライツ社
- 価格:1,210円(税込)
- ISBNコード:9784909044495
今回は、本シリーズの担当編集者であるライツ社の感応嘉奈子さんに本書の魅力をご寄稿いただきました。
未来の本好きを、もっと!
「読書は楽しい。そのことをこどもに知ってほしい。それがこの作品を書いた最大の目的でした」。作者の知念実希人さんの言葉です。
殺人事件はないのに、トリックは本格的。「こどもたちが人生ではじめて読むミステリ」を目指したシリーズです。にもかかわらず、その内容は、某書店社長が帯に「はずかしながらナゾ解きは、大人の私でも外してしまった」と寄せてくださるほど。
原稿をいただいたときに知念さんに聞きました。「ずっと文芸でやってこられた方が、どうしてこんなにもおもしろいこどもの本が書けるのでしょうか」
「これはおとなのミステリとまったく同じ手法で書いたんです」と。
今までになかった、小学生からおとなまで、親子で楽しめる本格ミステリができました。
実はこの企画は、ある書店員さんから生まれたものなんです。「知念さんがこどもの本を書いたら絶対おもしろいと思うねん」と。そして、ライツ社と知念さんをおつなぎいただきました。
こどもの本といっても絵本や読み物など幅広いので、書店の児童書担当さん、そして各年齢のこどもたちにインタビューをさせてもらい、「かいけつゾロリ」(低学年向け読み物)と「はやみねかおる作品」(高学年向け読み物)の間、小学校中学年向けの作品をつくることに決めました。
絵本や幼年童話が物足りなくなって、読み物に移行するとき。こどもが本を自分で選ぶようになるとき。その年代に向けて「本っておもしろい」「ミステリっておもしろい」という最初のきっかけになる作品を知念さんとつくりたい。
そんなふうに始まったこの企画。
プルーフを300部刷ってさらに100部。「異例のプルーフ重版」までしました。
プルーフをお送りした多くの書店の皆様から、ありがたい感想がたくさん届きました。
ひとつひとつが励みになって本当にうれしかったです!
うれしすぎて特設サイトまで作ってしまいました。
この特設サイト、今はこどもたちから毎日届く読者ハガキも載っています。こどもたちの心に「本っておもしろい」「ミステリっておもしろい」という気持ちがニョキニョキと育っているのが、すごくすごくわかるんです。
「人生初の伏線回収」をこどもたちへ
わたしはこの本が、こどもたちのミステリ好きの扉を開いてくれると信じています。
書店さんを訪れるこどもたちが増えていくと信じています。
この中から、ミステリ作家さんが出てきてくれるかもしれません。
そして20年、30年と書店さんの棚に置かれるシリーズになってほしい。
わたしが小学生のときに出会った「おばけのアッチシリーズ」(ポプラ社)から読書が大好きになって児童書の編集者になったように、読んでくれたこどもたちの一生の宝になりますように。
改めて、ひとりの書店員さんから始まったこの企画が、全国の書店員さんの声援を受けて本屋大賞にノミネートされた。こんなにすてきなストーリー、ないです! そのストーリーの一翼を出版社として、編集者として担わせてもらえたこと、こんなにうれしいことはありません。
皆さまと一緒に、これからもこどもたちが本を好きになるきっかけをつくり続けていけたら。「放課後ミステリクラブ」シリーズ、どうか末永くよろしくお願いいたします!
担当編集者がおすすめする知念さんの3作品
1)「天久鷹央の推理カルテ」シリーズ(実業之日本社):まず知念さんといえばこのシリーズを読んでほしいです。中高生の自分のこどもと本の話ができるのも楽しい。
2)『ヨモツイクサ』(双葉社):「放課後ミステリクラブ」1巻とほぼ同じ時期に刊行されたバイオ・ホラー。怖すぎます。「放課後ミステリクラブ」と同一人物が書いたとは思えない振り幅です。
3)『黒猫の小夜曲』(光文社):いちばん好きな知念さん作品。主人公の黒猫(死神)のぶつくさした地の文がキュートでテンポよく読めます!
著者プロフィール
作:知念実希人(ちねん・みきと)
1978年、沖縄県生まれ。東京慈恵会医科大学卒、日本内科学会認定医。2011年、第4回島田荘司選ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を『レゾン・デートル』で受賞。12年、同作を改題、『誰がための刃』で作家デビュー。「天久鷹央」シリーズが人気を博し、15年『仮面病棟』が啓文堂書店文庫大賞を受賞、ベストセラーに。『崩れる脳を抱きしめて』『ひとつむぎの手』『ムゲンのi』 『硝子の塔の殺人』が、‘18、‘19、‘20、‘22年の本屋大賞にノミネートされる。著作多数。今もっとも多くの読者に支持される、最注目のミステリー作家。
絵 :Gurin.(ぐりん)
1996年生まれ、神奈川県在住のイラストレーター。2020年よりフリーランスとして活動中。キャラクターデザインやグッズイラスト、MVのイラストなどの制作。ポップなイラストを描くのが得意。
本屋大賞とは
「本屋大賞」は、新刊書の書店(オンライン書店も含みます)で働く書店員の投票で決定するものです。過去1年の間、書店員自身が自分で読んで「面白かった」、「お客様にも薦めたい」、「自分の店で売りたい」と思った本を選び投票します。21回目となる今回の本屋大賞のノミネート作品は以下の通りです。
【ノミネート10作品】
書 名 | 著 者 | 出版社 |
『黄色い家』 | 川上未映子 | 中央公論新社 |
『君が手にするはずだった黄金について』 | 小川哲 | 新潮社 |
『水車小屋のネネ』 | 津村記久子 | 毎日新聞出版 |
『スピノザの診察室』 | 夏川草介 | 水鈴社発行/文藝春秋発売 |
『存在のすべてを』 | 塩田武士 | 朝日新聞出版 |
『成瀬は天下を取りにいく』 | 宮島未奈 | 新潮社 |
『放課後ミステリクラブ(1)金魚の泳ぐプール事件』 | 知念実希人 | ライツ社 |
『星を編む』 | 凪良ゆう | 講談社 |
『リカバリー・カバヒコ』 | 青山美智子 | 光文社 |
『レーエンデ国物語』 | 多崎礼 | 講談社 |
【2024年本屋大賞ノミネート作品関連記事】
・「2024年本屋大賞」ノミネート作をご紹介!第1弾は津村記久子さん『水車小屋のネネ』