2月1日(木)、「2024年本屋大賞」のノミネート10作品が発表されました(関連記事)。
今回で21回目となる本屋大賞ですが、2023年12月1日~1月8日に一次投票が行われ、全国の530書店、書店員736人から投票がありました。その結果、上位10作品を「2024年本屋大賞」ノミネート作品とし、2月29日(木)まで二次投票が行われます。大賞は4月10日(水)に発表が予定されていますが、書店店頭の多くは、それらノミネート作を集めたフェアを実施しています。
ほんのひきだしでは、ノミネート10作品の中から気になる作品を短期連載形式でご紹介します。ぜひ、書店店頭に足を運んでノミネート作品を手に取ってみてください。
【Vol.1】津村記久子『水車小屋のネネ』
今回ご紹介するノミネート作品は、第59回谷崎潤一郎賞、「本の雑誌が選ぶ2023年上半期エンターテインメント・ベスト10」の第1位、紀伊國屋書店スタッフが薦める「キノベス!2024」第3位などを受賞した津村記久子さんの『水車小屋のネネ』です。
本書は、2021年7月1日~2022年7月8日の「毎日新聞」夕刊の連載を加筆修正して、2023年3月に発売されたものです。夕刊連載時から読者の反響は大きく、2月1日現在まで累計発行部数は11刷6万2,000部(初版部数1万部)となっています。
著者:津村記久子
発売日:2023年3月2日
発行所:毎日新聞出版
判型:四六判並製・496ページ
定価:1,980円(税込)
ISBN:9784620108629
【あらすじ】
18歳と8歳の姉妹がたどり着いた町で出会った、しゃべる鳥〈ネネ〉。ネネに見守られ、変転してゆくいくつもの人生――。助け合い支え合う人々の40年を描く長編小説。
(毎日新聞出版公式サイト『水車小屋のネネ』より)
作中のことばに共感の声、続出!
本作では、人間の3~5歳の知能を持つといわれている、しゃべる鳥のヨウム「ネネ」の愛くるしさに心奪われている読者も多い一方、全国の書店員さんからの感想コメントでは作中の登場人物のことばが、「心に沁みた」「言葉に惹かれた」という声が多数寄せられたそうです。
ここでは、全国の書店員さんからのコメントの中で、毎日新聞出版編集部が「最も印象に残ったことば」のひとつをご紹介します。
【本書384ページ】
「人間なんて」と人の良心を信じられなくなる時、この言葉を思い出す。自分の良心は誰からもらったものか。忘れないための大切な1冊。
――伊藤佑太郎さん(紀伊國屋書店福岡本店)
なんて素敵な言葉なんだろう。
長い人生の中で、出会いがあって別れがあって、また新しく出会ってまた別れて。
悲しいことも嬉しいことも起こる人生のそのときどきに、水車とネネがずっとそばにいた。ただそれだけの事実にどうしてこんなに心が震えるんだろう。人に裏切られたり拒絶されたり、絶望したりすることもある。けれど、変わらずそばにいてくれる人がいる人生は、とても豊かで美しい。
とても大切にしたい一冊がまた増えた気がする。――永嶋裕子さん(水嶋書房くずは駅店)
律のこの言葉に、受けた優しさを自覚し、それによってできあがっている自分も周りに優しさを与えていく姿に惹かれました。お互いが思い合い、行動し合える関係が素敵でした。そういった出会いを繋げていってくれているチャーミングなネネが、本当にいる存在のように感じられ、読者である私も愛おしく思いました。
――中村 優さん(喜久屋書店国府店)
▲そのほかにも多くの書店員さんから感動の声が寄せられています
著者プロフィール
津村記久子 (つむら・きくこ)
1978 年大阪市生まれ。2005 年「マンイーター」(のちに『君は永遠にそいつらより若い』に改題)で太宰治賞を受賞してデビュー。08 年『ミュージック・ブレス・ユー!!』で野間文芸新人賞、09 年「ポトスライムの舟」で芥川賞、11 年『ワーカーズ・ダイジェスト』で織田作之助賞、13年「給水塔と亀」で川端康成文学賞、16 年『この世にたやすい仕事はない』で芸術選奨新人賞、17 年『浮遊霊ブラジル』で紫式部文学賞、19 年『ディス・イズ・ザ・デイ』でサッカー本大賞、20 年「給水塔と亀(The Water Tower and the Turtle)」(ポリー・バートン訳)で PEN /ロバート・J・ダウ新人作家短編小説賞を受賞、23年『水車小屋のネネ』で第59回谷崎潤一郎賞を受賞。近著に『サキの忘れ物』『つまらない住宅地のすべての家』『現代生活独習ノート』『やりなおし世界文学』『うどん陣営の受難』などがある。
【本書の紹介や選評】
「毎日新聞」今週の本棚(永江朗・評)
「中央公論」令和5年谷崎潤一郎賞発表 選評
「ダ・ヴィンチWEB」筒井康隆大絶賛の【谷崎潤一郎賞受賞作】。姉妹としゃべる鳥が織りなす40年の希望と再生の物語
本屋大賞とは
「本屋大賞」は、新刊書の書店(オンライン書店も含みます)で働く書店員の投票で決定するものです。過去1年の間、書店員自身が自分で読んで「面白かった」、「お客様にも薦めたい」、「自分の店で売りたい」と思った本を選び投票します。21回目となる今回の本屋大賞のノミネート作品は以下の通りです。
【ノミネート10作品】
書 名 | 著 者 | 出版社 |
『黄色い家』 | 川上未映子 | 中央公論新社 |
『君が手にするはずだった黄金について』 | 小川哲 | 新潮社 |
『水車小屋のネネ』 | 津村記久子 | 毎日新聞出版 |
『スピノザの診察室』 | 夏川草介 | 水鈴社発行/文藝春秋発売 |
『存在のすべてを』 | 塩田武士 | 朝日新聞出版 |
『成瀬は天下を取りにいく』 | 宮島未奈 | 新潮社 |
『放課後ミステリクラブ(1)金魚の泳ぐプール事件』 | 知念実希人 | ライツ社 |
『星を編む』 | 凪良ゆう | 講談社 |
『リカバリー・カバヒコ』 | 青山美智子 | 光文社 |
『レーエンデ国物語』 | 多崎礼 | 講談社 |
【2024年本屋大賞ノミネート作品関連記事】
・「2024年本屋大賞」ノミネート作をご紹介!第2弾は知念実希人さん『放課後ミステリクラブ(1)金魚の泳ぐプール事件』