いっぱい食べてってー!
自分が大好きな食べ物を、相手にも「おいしいよ!」と言ってもらえると、なんであんなにうれしくなるんだろう。べつに私が作ったわけじゃないのに、なんだかその食べ物の代表者になったような気持ちで「そうでしょう、そうでしょう」と胸を張りたくなる。
そんなうれしい気持ちをしみじみ味わえるYouTubeチャンネルがある。日本に来た外国人のみなさんが日本食をもりもり楽しそうに食べてくれる『Momoka Japan』だ。2024年1月時点でのチャンネル登録者数は約82万人で、総再生回数は3億8000万回以上! 実際に視聴すると人気の理由がよくわかる。テンポがよくて、ガイド役のMomokaの解説が明るくて、とにかく楽しそう。こんなふうに外国の友達を案内したいなあと思わせてくれる動画だ。
『Momoka Japan 外国人が日本食を食べて感動が止まらない』は、その愉快で美味な動画たちのコミカライズ作品だ。YouTubeのファンなら「ああ、この回よかったよね」となつかしくなるだろし、初めての人も一緒に楽しめる。
Momokaが渋谷の路上で声をかけたのは、オーストラリアからの旅行客のフィービーとベン。彼らに食べてもらうのは、うなぎ。おいしいよね! ただ、英語だと“Eel”と呼ばれるその生物は、オーストラリアっ子の二人にとって……?
ですよね、オーストラリアにも生息しているけれど、まったく食べないらしい。さあどうなるか。
おしぼり最高
渋谷にある老舗うなぎ店に案内されたベンとフィービーには、目に入るすべてのものが新鮮なよう(Momokaさん、ちゃんと間違いのないステキなお店に案内してる。私もここ大好き!)。
ホカホカのおしぼり、いいよね。日本では当たり前すぎて気にしたこともなかったけれど、実はすごーくナイスなものなんですよね。
他のエピソードでも「これは何?」と日本では慣れっこのあれこれに、みんな興味津々。たとえばとんかつの回ではこんなやりとりが。
たしかにキャベツの千切りって日本でしか見たことがない。
さあ、ベンとフィービーが次に出合うのは?
梅酒、気に入ってもらえるといいんだけど……。
ああ、よかった。お店に入る前から「本当にうなぎを食べるの? これってドッキリじゃない?」って期待と不安でいっぱいの二人だったけれど、トップバッターの梅酒は「おいしい」と受け入れてもらえた。あー、本当によかった。
そして、いよいよ本日のメインイベントが始まる。うなぎのご登場だ。
お重のフタを開ける前から好印象!
池にウジャウジャいて、ヌルヌルしてる、アノうなぎが、こんなぴかぴかのごちそうになるなんて!
「最高!」「一番おいしい魚」なんて褒められてる。こちらの想像をはるかに超える大好評で、うなぎも私もホッとしている。
そう、自分が大好きな食べ物を相手にすすめるのは、ものすごくドキドキすることなのだ。少しでも気に入ってもらえるとうれしいんだけど……と祈るような気持ちで読んでしまう。そんな私にとって、次に紹介するエピソードはとくに忘れられないし、とても好きだ。
イギリス人のサイオンとルーシーが挑戦するのはフルーツサンド。
ホイップクリームとフルーツとふわふわのパン、おいしいよね。でもイギリス人には意外な食べ物だというのだ。
奇妙! でもせっかく日本に来たんだから、ルーシーは食べてみたい。もうこの時点で私は少しうれしい。「体験してみたい」って、旅行の本質だと思う。
さてお味はいかが?
「おいしい」ではない。でも「まずい」じゃなくて「不思議」。ホイップクリームも、イチゴも、食パンも、イギリスでおなじみの食べ物だけど、それが合わさることが不思議すぎるらしい。
サイオンは気に入ってくれたみたい。「食べ慣れなきゃいけない感じ」という感想もすごくわかりやすい(タイのカオマムアンが、私にとってまさにそういう感じでした。マンゴーと餅米とココナッツミルクのデザートで、今は大好き)。
リアルな日本食を知ってもらうことで、自分たちの国のいいところを改めて教えてもらうようなマンガだ。お腹が空くので覚悟して読んでほしい。
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(レビュアー:花森リド)
- Momoka Japan
- 著者:MomokaJapan 稲谷
- 発売日:2023年12月
- 発行所:講談社
- 価格:1,320円(税込)
- ISBNコード:9784065344217
※本記事は、講談社BOOK倶楽部に2024年1月26日に掲載されたものです。
※この記事の内容は掲載当時のものです。