読み手を最後まで翻弄するサスペンスの名手!
私たちは常に先を読んで生活をしています。あまり意識はしていないかもしれませんが、日々の行動や人との会話は次の展開をある程度予測していませんか。この予測が大きく外れると、人は驚き、時に動揺をしてしまうものです。
マンガや小説、ドラマや映画など、物語を追うときも私たちは先の展開を無意識に予測しています。それが外れると大いに驚き、物語にのめり込んでしまうという経験はみなさんにもあるのではないでしょうか。「サスペンス」はまさにこの心理を活用したジャンルです。
と、前置きが長くなってしまいましたが、サスペンスが好きな方に強くオススメしたい漫画家さんが今回ご紹介する『ロア ~奈落のヒロイン~』の丘上あい先生です。
累計300万部突破し、テレビドラマ化もされた『ギルティ ~鳴かぬ蛍が身を焦がす~』で、ドロキュンな大人の恋の不条理を描いた丘上あい先生。私は昨年(2023年)に全13巻をイッキ読みしました。というより、イッキ読みをせざるを得なかったという方が正しいかもしれません。思いもしなかった展開が続くジェットコースターのような作品で、一度読みだすと止まらないんです!
そんな丘上あい先生の新作『ロア ~奈落のヒロイン~』は、芸能界を舞台にした復讐サスペンス。第1巻が2023年12月13日に発売されています。
どこまでが偶然で、何が仕組まれているのか!?
四国のとある島で暮らす美佐都(みさと)は、少し負けん気が強い元気な女の子。
ある日、島で撮影するドラマの子役エキストラに参加をすると、監督から物語の重要な役に抜擢されます。
カチンコが鳴ると役に没入する姿に唖然とするスタッフたち……。
島の人たちに称賛される美佐都に嫉妬した子どもたちは、「母親と似てない」と意地悪を言います。それを母親に言った美佐都は怒られ、そのまま友人宅に泊まることに。
するとその晩、自宅が火事になり両親は帰らぬ人に……!
その後、突如現れた本当の母親を名乗る女性に引き取られ東京で暮らすこととなるが、そこに心休まる居場所なんてなく……!?
第1巻から怒涛に動き出す美佐都の運命。出揃う登場人物と、散りばめられた伏線に今後の展開を予測しますが、果たして私の読みは当たるのでしょうか。美佐都の出生は明らかになりましたが、多くの疑問は読者の心にモヤモヤを残しながら物語は進んでいきます。
目で魅せるキャラクターの想いに注目
目は口ほどに物を言うといいますが、その言葉をまさに体現しているのが丘上あい先生の作画です。美佐都の目に宿る喜怒哀楽が実に見事で、感情を揺さぶられます。
また、美佐都を取り巻く人たちの目も、台詞以上のことを語っているようで時に恐ろしくなります。
自由を与えられず、苦痛のみを与えられて生活をしてきた美佐都。彼女の運命は今後どのように動き出すのでしょうか。
今は悲鳴にも近い雄たけびのRoar(ロア)を響かせる美佐都ですが、歓喜のRoarが聞ける日は来るのか……!? 物語は壮大な序章を終え、これから本編に入っていく段階ですのでぜひ一緒に美佐都の人生を見届けましょう……!
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(レビュアー:Micha)
- ロア~奈落のヒロイン~ 1
- 著者:丘上あい
- 発売日:2023年12月
- 発行所:講談社
- 価格:759円(税込)
- ISBNコード:9784065337318
※本記事は、講談社コミックプラスに2023年1月24日に掲載されたものです。
※この記事の内容は掲載当時のものです。