- 人は、なぜさみしさに苦しむのか?
- 著者:中野信子
- 発売日:2023年09月
- 発行所:アスコム
- 価格:1,397円(税込)
- ISBNコード:9784776212690
『人は、なぜさみしさに苦しむのか?』の要点
1.「さみしさ」は、人間が生き延びるために必要とされてきた本能だ。さみしさを感じることがあるのは自然であり、克服しようとする必要はない。
2.ネガティブな感情は、脳に必要な防御メカニズムである。ネガティブな感情がポジティブな感情よりも強いのは、生存欲求に直結しているからだ。
3.人は脳や心の発達に伴って、年代ごとに特有のさみしさを感じる。たとえば、脳が未熟な未成年者は不安を抱えやすく、自己嫌悪に陥りやすい傾向がある。
4.さみしさはときにつながりを生み、新しい世界の扉を開いてくれる。さみしさとうまく付き合いながら、より良い未来を目指していこう。
『人は、なぜさみしさに苦しむのか?』レビュー
日本では「家族以外との交流がない人」「家族以外に頼れる人がいない人」の割合が他の国よりも高いという結果が、内閣府による調査でわかっている。コロナ禍の影響もあり、さみしさに悩む人は増えているようだが、「さみしい」と声に出して言えない雰囲気もある。さみしいなどと言わずに孤独を愛さなければならない、ネガティブな感情はコントロールできてこそ一人前だ。そんな無言の圧力を感じて、自分のさみしさに蓋をしてしまうのだろう。
そうして放置されたさみしさは、人の心を蝕み、ときには生きる気力を奪ったり、暴力に結びついたりすることがある。さみしさを感じないようにするのは不可能だが、うまく付き合っていく方法はあるはずだ。
本書では、脳科学者の中野信子氏が、脳科学的・生物学的な視点から「さみしいという感情はなぜ生まれるのか」を考える。著者によると、さみしさは人が石器と狩猟で生きていた時代から変わらない、生存のための本能だという。誰もが抱く感情であるにもかかわらず、ネガティブに捉えてしまう原因はどこにあるのだろうか。その答えを科学的・社会的な側面から探っていく。
本書を読むと、さみしいと感じる自分を責めなくてもいい、さみしさをおそれる必要はないと実感できるはずだ。さみしさを持て余している人、さみしさを感じる自分の弱さを責めたくなっている人へ、特に本書をおすすめしたい。
『人は、なぜさみしさに苦しむのか?』が気になる方におすすめ
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