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元乃木坂46の心理カウンセラー・中元日芽香が紙上カウンセリング!『なんでも聴くよ。』インタビュー

中元日芽香さん_01

乃木坂46の元メンバーであり、現在は心理カウンセラーとして活動する中元日芽香さん。2作目となるエッセイ『なんでも聴くよ。 中元日芽香のお悩みカウンセリングルーム』が、昨年12月に発売されました。

本作は、一般の方から募集した38の悩みに中元さんが回答する、紙上カウンセリングともいえる一冊です。アイドルとして活躍するさなかに適応障害を発症し、現在はカウンセラーとしてさまざまな経験を積んできた自身ならではの言葉が詰まった本書について、インタビューしました。

なんでも聴くよ。 中元日芽香のお悩みカウンセリングルーム
著者:中元日芽香
発売日:2023年12月
発行所:文藝春秋
価格:1,430円(税込)
ISBNコード:9784163917900

「自分に自信を持つことができません」「友人に必要とされていない気がします」「朝、仕事を休む理由を考えてしまいます」「アイドルという夢は諦めた方がいいでしょうか」……そのお悩み、カウンセリングルームでお聴きします!

2011年から6年間「乃木坂46」のメンバーとして活動する裏で、適応障害を発症し休業を経験。その後アイドルを卒業し、心理カウンセラーという新しい道を選んだ中元日芽香さんによる “カウンセリング・エッセイ”!

現役カウンセラーとして相談者に心強く寄り添いながら、そして「中元日芽香」の本音もたっぷりのぞかせながら、一般の方から募集した38のお悩みに回答します。

書き下ろしエッセイ「心理カウンセラーという仕事について」「カウンセラーだって悩むんだから大丈夫です」「人間は完璧ではない―私が経験した適応障害」も収録。

(文藝春秋BOOKS『なんでも聴くよ。中元日芽香のお悩みカウンセリングルーム』より)

 

カウンセリングの“疑似体験”を本棚に

——『なんでも聴くよ。』はCREA WEBにて募集したお悩みの中から、中元さんが選んだ投稿に答える形で書かれたエッセイですね。どのようなきっかけで執筆されたのですか?

2021年に、初めての書籍『ありがとう、わたし 乃木坂46を卒業して、心理カウンセラーになるまで』を刊行したのですが、読んでいただいた方から「しんどいときに読み返すと励まされます。本棚に置いておくだけで心強い、お守りのような一冊です」という言葉をいただいたことがきっかけです。

皆さんのお悩みを聞くことで、つらくなったときにカウンセリングの疑似体験ができるような、本棚のすみっこにでも置いていただける本があるともっといいのではないかと思いました。

ありがとう、わたし
著者:中元日芽香
発売日:2021年06月
発行所:文藝春秋
価格:1,430円(税込)
ISBNコード:9784163913919

——通常のカウンセリングはオンラインで実施されていますが、今回は文章で相談に答える形ですね。

カウンセリングの延長で書けるのではないかと思っていたのですが、最初は戸惑いました。

相談者さんと実際に言葉を交わすのとは勝手が違って、状況を詳しく聞くことはできません。短い文章の中で、投稿された方が置かれている背景をすべて察知することは難しいので、文章の癖や言葉選びなどから、性格や生活環境などについて想像で補うようなところも多かったです。言葉選びも、より慎重にしなければいけないと思いましたし、慣れるまでに時間がかかりました。

——中元さんが質問の背景や悩みの本質をていねいに探ってくれることで、より多くの人が自分事として回答を受け取れそうだと感じました。

これまで行ってきたカウンセリングの中に近しいお悩みがあった場合は、そのケースをお借りしてお話ししている質問もあります。似たような悩みを持つ方にも寄り添えるよう、「こういうケースならこんな解決方法もあるのでは」という提案が少しでもできていたらいいなと思っています。

 

『なんでも聴くよ。』を旗印に執筆

——『なんでも聴くよ。』というタイトルはどの段階でつけられたのですか?

最初にお悩みを募集する段階から構想にありました。執筆中も、『なんでも聴くよ。』という旗を目の前に立てた上で執筆作業をしていた感じです。

——それは、カウンセラーとしてのお仕事の姿勢でもあるのでしょうか。

普段のカウンセリングでもタブーはなく、ここだけと思って何でも話してほしいという姿勢なので、今回の本でもそういった形を目指しました。タイトルにも、SNSや友人との会話では言葉にしづらいことも、率直に聞かせてほしいという気持ちを込めています。そういうタイトルにした以上、私も「なんでも聴くぞ」という意気込みで取り組みました。

——本書では、言葉選びや温度感など、中元さん「らしさ」を大切にされたそうですね。ご自身の経験も踏まえた等身大の回答も共感を呼びそうです。

普段のカウンセリングでは、私の意見などは極力提示しないようにしています。あくまでクライアントさんの状況や気持ちを整理する立場に過ぎません。「なぜこんなにモヤモヤしているのだろう」とその原因を言語化できなかったり、不眠症状など体に不調が出ていたり、うつ病と診断されても、自分では納得できていないという方もいらっしゃいます。

自覚がなかったとしても「以前と比べて何か変わったことはないですか」「食事や趣味を楽しめていますか」と質問を重ねていく中で、たしかに言われてみると元気だったときとは違うなという気づきが相談者さんの中に生まれることもあります。会話を通して心の奥深くにある本音にちょっとずつ触れていく。一緒に探っていく作業を通して、心を整理する時間を過ごしていただくのが私のカウンセリングスタイルです。

ただその方法は本だとどうしても取りづらいですし、本作はエッセイということもあって、実際のカウンセリングに比べると普段感じている本音や私の話が多くなっています。

——読者からの反応はいかがですか?

クライアントさんから感想をいただいたり、配信しているポッドキャストのラジオ番組にお便りをいただいたりしています。手に取ってよかったと言っていただけて、ホッとしています。

実際に、友人関係で悩んでいたけれど、この本を読んで一歩を踏み出せましたという方や、カウンセリングを受けてみようと思い、初めて予約しましたという方もいらっしゃいます。カウンセリングの疑似体験になればという意図もあったので、この本が悩んでいる方の背中を押せたのであればうれしいです。

 

元アイドルのカウンセラーだからできること

——ご自身の経験やカウンセラーの仕事内容などカウンセリングについてのコラムも充実しているので、「どんなところなんだろう」「何をするんだろう」という人へのガイドにもなっていますね。

話を聞いてもらう場所としては、精神科や病院のカウンセリングルーム、あるいはスクールカウンセラーや産業医面談などいろいろありますが、相談者の方にとってはいずれも敷居が高いと聞いています。

カウンセリングはプライベートなものなのでカウンセラーも閉ざされた存在になりがちですが、カウンセラーという職業があって、つらいときに話を聞いてもらう一つの選択肢として身近な存在になっていけばと考えています。

元アイドルで、セカンドキャリアがカウンセラーという私だからできることもあると思います。発信活動をしていく中で、カウンセリングに気軽にアクセスしてくださる方が増えたり、カウンセラー自体が増えたりすることにも貢献していきたいです。

——「はじめに」では、公共の場であるSNSと、プライベートな場であるカウンセリングルームの中間として「書籍」という形をとったと書かれています。メンタルヘルスにおける本の効能などがあれば教えてください。

忙しい毎日の中で嫌なことを一旦忘れ、目の前のことに没頭できる自分だけの時間があると心が楽になるのではないでしょうか。四六時中、仕事のことや悩んでいることばかりを考えていると疲れてしまうので、一旦ここまでにして読書をしようと切り替えるのもおすすめです。

——では最後に、読者の方へのメッセージをお願いします。

悩みを抱えて本書を手に取ってくださった方には、一つでも答えのヒントがあったら何よりですし、友人や家族など身近な人が悩んでいて、どのように声を掛けたらいいかわからないという方には、文章が参考になればと思います。

カウンセリングやメンタルヘルスに興味がある方にも手に取っていただき、寄せられた悩みに共感したり、自分だったらどう答えるだろうと考えたり、さまざまな視点から本書を楽しんでいただけたらうれしいです。

中元日芽香さん_02

中元日芽香(なかもと・ひめか)プロフィール
1996年4月13日生まれ。広島県出身。早稲田大学人間科学部eスクール卒業。2011年から6年間、アイドルグループ「乃木坂46」のメンバーとして活動したのち、2017年にグループを卒業。認知行動療法やカウンセリング学などを学び、2018年にカウンセリングサロン「モニカと私」を開設、心理カウンセラーとしての道を歩み始める。2021年、初の書き下ろしエッセイ『ありがとう、わたし 乃木坂46を卒業して、心理カウンセラーになるまで』を刊行。現在はオンラインでのカウンセリングをメインに、メディア出演、執筆など多方面で活動中。