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起業・開業するならこの一冊『起業時代』、創刊2周年インタビュー:すべての働く人へのライフスタイルマガジン

「スモールビジネスを、世界の主役に。」というミッションを掲げ、企業のバックオフィスの業務を効率化し自由に経営できる環境を提供するフリー株式会社。そのミッションの下、2021年には新たに出版レーベル「freee出版」を創設。「ふつうの人が、フツーに起業できる時代」をテーマに雑誌『起業時代』を創刊したほか、スモールビジネスに関する書籍の出版も開始しました。さらに、2023年4月には子会社として、東京都台東区蔵前に「透明書店」をオープンし、書店事業も手掛け始めました。屋号が示す通り、店舗の収支などの財務状況を赤裸々に発信するそのスタイルが話題になっています。

ここでは、創刊2周年を迎えた『起業時代』について、統括編集長の磯貝美紀さんに話を伺いました。

▲1月18日に発売された最新号の起業時代 Vol.5

『起業時代』とは

起業・開業を検討している人が明日から始動するための段取りを、わかりやすく網羅的に解説する雑誌です。税理士・経営コンサルタント監修のもと、税金や制度について正確な最新情報をお届けしています。先輩起業家のインタビューでは、起業までの道のりと、自分らしい生き方への挑戦ストーリーを毎号ピックアップしています。

磯貝美紀 / フリー株式会社 『起業時代』統括編集長
大学卒業後、NTT東日本・ベネッセコーポレーションで、BtoB、BtoCマーケティングの他、サービス開発、プロダクト開発を幅広く経験。2021年にフリー株式会社に転職し、『起業時代』アプリの企画開発、ブランド開発を担当。統括編集長。その他、個人事業主として、みらいの学びを創る教育プロジェクトにも参画中のデュアルワーカー。「イキイキと働くおとながあふれる社会を創りたい」がモットー。双子男子の母としてワーキングマザー16年目。

 

普通の人が普通に起業できる時代に

――『起業時代』は、起業するための段取りをわかりやすく網羅的に解説し、「ふつうの人が、フツーに起業できる時代」を切り拓く雑誌として2022年1月に創刊されました。「ヒロシです。」の自虐ネタで一世を風靡した芸人ヒロシさんを起用した創刊号のテレビCMも話題となりました。それから2年で累計4冊で5万部を突破、このたび『Vol.5』を発刊されました。起業への機運は高まってきましたか?

さまざまな想い・夢を描いた起業家約200人にインタビューを通じてお話を伺ってきましたが、機運は高まっていると思います。紙の雑誌に加えて、デジタルマガジンも発刊しており、閲読率も高い。『起業時代』のアプリもリリースしていますが、こちらは25万ダウンロードされ、関心のある人は増えていると思います。

特にこの2~3年の傾向では、副業として起業する人が増えています。さまざまな業種の大手企業が副業を許容し始めているというのも一つの後押しになっていると思います。また、女性やシニア世代の起業も増えているように感じます。女性は、結婚、出産などのライフシフトタイミングに、「起業」を検討する人も増えてきています。シニア世代も「人生100年時代」と言われるなか、50代、60代から起業する人にもたくさんお会いしています。起業そのものが多様化していますね。

――起業への関心が高まっている社会的背景や要因は何とお考えでしょうか?

終身雇用の崩壊と言われて久しいですが、企業が社員一人ひとりに期待するところが増えている。国もフリーランスの支援や、リスキリング教育の強化などで、個人の能力育成に力を入れているところもあります。そういう意味で、個人が動きやすい環境、背景が全体的に揃いつつあります。それは、コロナ禍でのリモート環境が進み、そうした働き方を社会的に許容する機運が広まったことも大きな要因だと思います。

また、メルカリやminne、ココナラなどのさまざまな形で、CtoCやCtoBのプラットフォームがたくさん生まれています。今までとは違う小さな市場が生まれる中で、個人が挑戦しやすい環境もできあがってきています。そうしたさまざまな要因が重なって機運が醸成されてきたと思います。

――『起業時代』にとっては追い風が吹いているという状況ですね。そういう時代にこそ、『起業時代』で何を伝えてきて、これからも伝え続けたいと考えていますか?

一昔前までは、特別な人だけの、特別なことが起業でした。しかし、今は“普通の人が普通に起業できる時代”です。その「等身大の起業のロールモデル」を取り上げているのが、この雑誌の一つの特長です。その描き方も成功した話ばかりを載せるのではなく、実態に即したリアルな話を描いています。こうしたひとつの生き方と言いますか、「自分もチャレンジできるんだ」と起業を考えている人たちの背中を押せるような雑誌を目指しています。

 

等身大の起業家たちのリアルを追求!

――毎号、30人以上の起業家を集めたインタビューは圧巻の作りですね。さまざまな人たちの生き方そのものが描かれており、「働くすべての人へ贈るライフスタイルマガジン」ですね。これだけのドラマのある起業家をどうやって見つけてくるのでしょうか?

『起業時代』のアプリなどで3か月に1回、「十人十色 起業の顔・主役の顔キャンペーン」と題して、起業家の方を募集しています。今も第7弾の募集を行っていますが、応募フォームに事業内容や起業への思いなどを記入いただき、起業の背景にある物語などが書かれていますので、その中からこれはという起業家の方々を取材させていただいています。

――雑誌の前半部分は起業家の溢れんばかりの事業への思いを載せつつ、後半部分は実用的な内容となっています。

後半部分は割と起業までの段取りが中心になっています。WEB上にも起業までの手順等の情報はありますが、網羅的にわかりやすいものがありません。創刊時からのコンセプトである「起業・開業するならこの一冊」というように、この一冊があればひと通りわかるように網羅的かつわかりやすい内容となっています。

また、起業に関する書籍との違いは、やはり前半部分の起業家の実態、個々のリアリティのある話が掲載されたインタビューですね。これだけ多くの事例が掲載されているところが雑誌の良さでもあります。

――『起業時代』をVol.4まで刊行してきて反響の大きかった記事はどれでしょうか?

定性的ではありますが、読者の方からお声をいただいていて、やはり毎号の前半部分の起業家の方々のインタビューは人気があります。また、Vol.4の「お金のモヤモヤを解消 case―study編 先輩15人、60回答から学ぶ!『起業1年目』お金のすべて」や「お金のモヤモヤを解消 self-study編 シートで実感!起業にかかわるお金のあれこれ」など、お金についての特集は、参考になったという声が多かったです。「資本金の額は?」「お金をかけたところは?」「補助金はどう活用した?」などは、読者の関心は非常に高かったです。こういう「実際はどうなの?」というリアルな声が掲載されている特集は人気がありますね。

 

▲好評だったVol.4のお金にまつわる特集ページ

 

――創刊号もインパクトがありましたね。

実はいまだに売れるのが創刊号です。創刊号もやはり「インタビュー特集1 さあ、起業を楽しもう!」「インタビュー特集2 私たちが起業で手に入れた大切なもの」という特集がすごく反響がありました。創刊号らしく、起業を人生の選択肢とするという特集のメッセージ性が強く、他の雑誌にはあまりない、ということも大きな理由かと思います。

雑誌「起業時代」

▲『起業時代』創刊号

▲創刊号の第1特集「さあ、起業を楽しもう!」

 

Vol.5は「ライフシフトタイミング起業」に注目!

――1月18日(木)に発売されたVol.5のイチオシ特集やコラム等、おすすめ記事を教えてください。

Vol.5のメインテーマは「しなやかな転身。軽やかな起業。」です。創刊から1年半の間に起業した人にインタビューをしてきた中で、起業そのものは簡単ではありませんが、お会いした起業家は挑戦すること自体は軽やかに、そしてしなやかに転身されていました。その実感を込めてこのテーマにしました。

そのテーマをもとに、第1特集は「『ライフシフト起業』で、自分らしい人生を手に入れる!」と題して、起業家4人をインタビューしました。実はライフシフトのタイミングで起業する人が増えているという背景もあります。

▲Vol.5の第1特集

結婚や出産という女性のライフシフトタイミングでは「ママライフ起業」と題して女性起業家を取り上げたり、シニアの方の定年後の「セカンドライフ起業」、大学進学のタイミングで起業する「学生二刀流起業」、メンタル面で休業していた会社員による「ヘルシーライフ起業」といった話を掲載しています。

また、第2特集では「サイドピボットで、軽やかに起業しよう」というテーマで、今のキャリアからピボットする形で、隣接可能性のある仕事を自分でみつけて起業した方に焦点を当てています。

▲Vol.5の第2特集

 

――具体的にはどのようなことでしょうか?

例えば、ケガをした方の日常の基本動作をサポートする作業療法士の方がいます。その人が、自宅でケガをする人が多いと気づいてケガをしない家を作るにはと考えて、「作業療法士の知見を活かした家づくりのアドバイザー」になられました。こうした軸足の仕事の隣接可能性を見出して起業した9人にインタビューをしました。まさに、しなやかに軽やかに挑戦しています。

そのほかにも、「あれから2年 『起業時代』創刊で出会った先輩たちのリアル」として、創刊当初に登場した起業家に再取材した特集もあります。読者は、起業したはいいものの、その先は大丈夫か?という不安を皆さんもたれています。今回は3人の起業家にこの2年で何が起きたのか、を聞いています。さまざまなピンチに陥った中、どう工夫して乗り越えていったのか、そういう話を綴っています。

 

慶応大准教授・若新さんの特別インタビューも!

ーー特集以外はいかがでしょうか?

スペシャル企画として、プロデューサー・慶応義塾大学特任准教授の若新雄純さんに「特別インタビュー『ステージ1を起こす力は、どんな生き方にも大切!』」と題して、語っていただきました。若新さんは大学生のときに起業しましたが、その時は起業はポピュラーではありませんでした。「路上ミュージシャンみたいだった、その当時の経験があるかないかは大きい」という言葉が印象的でした。日本人が起業に踏み出さないのは、恥をかくことをためらっているから。そういう経験をもちながら「ゼロからイチ」をつくることができるかどうか、といった話を4ページにわたって掲載しています。

そのほか、今回、「個人事業主と小さな会社のための インボイス制度&決算・申告 ラクラク攻略本」と題して、初めてとじこみ付録をつけました。「今からでも追いつけるインボイス制度」と、1月ですので「決算・申告」のポイントについてまとめています。1冊28ページのダブル表紙のとじこみで、本誌から切り離してミニブックとしてお手元に置いてもらえるようになっています。

 

25万DLの『起業時代』アプリ、Google Play 2023で表彰も!

――『起業時代』のアプリも出されていますね。アプリ展開の理由や反響を教えてください。

アプリは雑誌創刊から半年後にリリースしました。起業は、準備から開業にいたるまでに長く時間がかかります。そうした多くの手続きや段取りを一歩一歩進めていくのを応援するアプリを作りました。難しい手続き等も前向きにやってもらえるように意識してゲーム性のあるつくりにしています。また、雑誌にある豊富なコンテンツの一部も、アプリで無料で閲覧できるようにしています。

ダウンロード数は25万を超え、月間アクティブユーザーも多いです。2023年暮れには、「Google Play ベスト オブ 2023」というAndroidアプリを表彰するアワードで、自己改善部門の部門賞をいただきました。自己改善をサポートするアプリを表彰するというもので、自炊のレシピアプリや大人向けディズニー英会話アプリと並んで表彰されました。自己改善というテーマに起業という文脈が入ってきたところは驚きとともに、正直うれしいです。

――アプリで機能を強化していく予定などはありますか?

起業の段取りを楽しく進められるアプリとして引き続きやっていきますが、1~3年かけて起業したいという人向けに、学びや相談ができるセミナーや創業支援施設などとの連携も進めていきます。

アプリには、「税理士検索」「補助金検索」など起業に必要な情報を調べられる相談窓口をすでに用意していますが、そういうサポートをもっと広げていきたい。さらに、弊社には設立手続きや事業運営のサポートサービスもあります。起業に踏み出した後に必要になる、会計ソフトなど、バックオフィスの業務のサポートサービスの情報も、もっと伝えていきたいと考えています。

――『起業時代』のWEBサイトには「十人十色のリアルストーリー」として動画インタビューも掲載されていますが、こちらの狙いは?

これまでインタビューしてきて動画にしたい人がたくさんいました。起業はドラマなんですよ。一人ひとりに、起業を選択してきた背景があります。また、その先もあります。こうした一人ひとりのドラマを伝えたかった。誌面だけでは伝えきれないものを、起業家自身の言葉で思いを伝えてもらうために動画インタビューをつくりました。

先述した「十人十色 起業の顔・主役の顔キャンペーン」で、毎回160件の応募がきます。その中から、起業の背景を聞いて、10人を選んでいます。その10人の起業家を表紙とした雑誌(非売品)を10冊プレゼントしています。

▲「十人十色 起業の顔・主役の顔キャンペーン」のWEBページ

 

▲インタビューした起業家を表紙にしたオリジナルの『起業時代』(非売品)

 

▲『起業時代 Vol.3』の表紙には、起業家表紙のオリジナル雑誌を起用

 

――最後に読者の皆様に一言コメントをください。

起業を決して簡単には思っていませんが、挑戦自体は軽やかに何度でも転身して、目一杯、自分に贅沢に生きていけるように、そういう挑戦を後押しできる雑誌でありたい。また、雑誌やアプリ単体ではなく、いろいろなところと連携しながら、起業というムーブメントを盛り上げていきたいです。その結果、イキイキと生きる人が増えてほしい。

また、全国各地に起業をサポートする人や施設もあります。そういうところと一緒に、起業を通じて一人ひとりが自分らしく生きていける社会を実現していきたいですね。

――ありがとうございました。

『起業時代 Vol.5』の詳細はこちら