風紀委員長はエッチな本を没収したい
スカッとわかりやすい題名でとてもいい。『風紀委員長はエッチな本を没収したい』、なんだかわからないが応援したくなる。
舞台はとある高校。ちょっと荒れているというか、風紀が乱れた高校だ。
朝、エッチな本を読みながら学校の正門をくぐる生徒がいるような高校で「レジェンド風紀委員」なんて恐れられているのが、風紀委員長の“雛守柊花(ひなもりしゅうか)”。高校1年のころからずっとワンオペで風紀委員をやってる女の子。真面目じゃなきゃワンオペなんてやってられないだろう。
そんな彼女を苦々しく思っている人物が、本作の主人公だ。
入学するやいなや雛守委員長に目を付けられ、毎日ひたすら取り締まられている問題児の高校1年生・“真島龍弥(ましまりゅうや)”。金髪、ピアス(右耳に三つ、左耳に二つ)、ずるずるの制服姿。そんな典型的な自由人スタイルの彼にとって、お堅い雛守委員長なんてとうてい理解できない存在だったのだが、まさかのヒミツを知ってしまう。
雛守委員長が読みふけってるソレ、さっき正門で没収したエッチな本じゃない? しかも感想が明らかに固定ファンのそれ。そう、この学校の厳しい取り締まりは、実は雛守委員長が仕組んだ壮大なエロ計画によるものだったのだ!
風紀委員のホンネ
舐めるようにエッチな本を読む雛守委員長の姿を目撃してしまった真島を、雛守委員長が放っておくわけがない。真島はさっそく風紀委員会室に呼び出される。
で「このことは絶対に内緒……」と口封じされるのかと思ったら!
女教師のコスプレをした雛守委員長から謎の指令。で、問題児こと真島の反応はというと。
一語一句まっとうというか、意外とウブなんだなあ……。そう、彼はエロに耐性がない。そんな真島に何かを見出した雛守委員長は、彼を風紀委員にしたいのだそう。
校則違反のペナルティをなくしてもいいから風紀委員になってほしい……っていうか、風紀委員がそれでいいわけ? いいんです。
生徒たちが学校に持ってきたエッチな本を片っ端から没収し、自分でしっかり読む。それが雛守委員長が風紀委員の権力を2年間独り占めしてきた理由。
風紀委員会室は全校生徒から巻き上げたエロ本たちが眠る保管庫。雛守委員長の熱心な仕事ぶりがうかがえる。
でもどうして権力を駆使してまでエッチな本にこだわるのだろう。「エッチな本を読みたいのは、エッチだから」っていう無限ループのような話になりそうだが、彼女の場合は創作活動が大きな理由のひとつだ。雛守委員長は中3の頃からエロ小説をしたためている。
可能な限り想像して、可能な限り参考資料(エッチな本)を集めてきた。真面目な子なのだ。そして自分のヒミツを知った真島にもエロ小説の執筆活動を手伝ってもらおうとしている。
毎話、ものすごく真面目な顔した雛守委員長が真島に無理難題を言ってくる。たとえば「溢れるばかりの果実に彼は顔を埋め」という文章をさらにリアルにブラッシュアップしたいらしい。
エロへの耐性もエロ小説の知見も乏しい真島は、雛守委員長のメロンみたいな胸を見てやっと「果実ってそれのこと?」と学んでいる。
うん、雛守委員長は真島の“ご経験”を高く見積もりすぎている。真摯で無茶なエロミッションが次から次へと降ってくるうちに、やがて真島は雛守委員長のことが気になり始める。
風紀委員が風紀委員長の素行を調査? 風紀委員って何する係だったっけ?
先生だってこの調子。どうなってんのこの高校!
ところで、現代の高校生ならばスマホを持っている子も多いだろう。なのになぜこの高校の生徒たちは紙のエロ本にこだわるのか。スマホのペアレンタルコントロールなどとっくの昔に突破していそうなのに。
真島鋭い! 私も同じことを思っていたよ。実は、これも風紀委員長の大いなる計画のひとつだったりする……のかもしれない。読んで確かめてほしい。
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(レビュアー:花森リド)
- 風紀委員長はエッチな本を没収したい 1
- 著者:やまもと桃
- 発売日:2023年12月
- 発行所:講談社
- 価格:550円(税込)
- ISBNコード:9784065337295
※本記事は、講談社コミックプラスに2023年1月9日に掲載されたものです。
※この記事の内容は掲載当時のものです。