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『リサーチのはじめかた』スタンフォード大学とUBCの教授が磨き上げた極意とは【総合4.0】

リサーチのはじめかた(筑摩書房)トーマス・S・マラニー、クリストファー・レア

リサーチのはじめかた
著者:トーマス・S・マラニー クリストファー・レア 安原和見
発売日:2023年08月
発行所:筑摩書房
価格:2,200円(税込)
ISBNコード:9784480837257

 

『リサーチのはじめかた』の要点

1.研究を成就させるためのロードマップを作ったはいいが、学生たちは戸惑うばかり。学生たちは研究を始める前の段階で躓いていた。

2.テーマは、研究の範囲をある程度絞る上ではたしかに役立つ。しかし、テーマだけで研究は前進しない。重要なのは、問いだ。かしこまらず、それでいて正直な問いを生み出すことが準備の第一歩になるだろう。

3.問いを立てたら、今度はそれを磨いていかなくてはならない。その問いは誠実か。バイアスがかかっていないか。最初からあらかじめ結論が用意されていることはないか。

 

『リサーチのはじめかた』レビュー

研究者とそうでない人には距離がある。たとえば歴史の教科書に載っている事実は、多くの人にとってはただの事実でしかない。どこかの誰かの話を聞いたとか、何かの古い本に書いてあったとか、その程度の認識だろう。けれども、実際はある1つの事実を確定するために膨大な量の研究や議論を蓄積しなくてはならない。大学に入った学部生の多くを戸惑わせるのは、こうしたギャップである。

学部生が頭に思い描く研究テーマは、本人にとっては狭く具体的で、発展性のあるものだ。ところが実際はそうじゃない。そうしたテーマの大半はあまりにも広く、そして漠然としている。1から研究プロジェクトを立ち上げるとき、こうしたビジョンのままだと、ほとんどが立ち往生するか、あるいは意義の伝わらない論文を生み出してしまう。

多くの学部生は、研究のやり方を知らない。それはある意味正しい。でも、そもそもその前の段階で躓いているのが実態だ。世の中には研究のやり方を手引きする書籍はたくさんあるが、研究の前に光をあてたものはなかった。

本書は、そうしたいままで見過ごされていた部分に焦点を当てている。学部生が陥る、「自分は一体何をしたいのか」という悩みへの回答となるような技術が山のように詰まっている。これは何も、大学で研究を続けようとしている人だけの話ではない。問いとリサーチを繰り返し続ける多くの社会人も、似たような課題を抱えているはずだ。本書は、そうしたすべての人たちの興味を引き出し、問いを鍛え、答えを探す旅の良き伴侶となってくれるだろう。

 

『リサーチのはじめかた』が気になる方におすすめ

面白くて刺激的な論文のためのリサーチ・クエスチョンの作り方と育て方
著者:マッツ・アルヴェッソン ヨルゲン・サンドバーグ 佐藤郁哉
発売日:2023年06月
発行所:白桃書房
価格:3,000円(税込)
ISBNコード:9784561267829