ほんとに大丈夫!?
妹はかわいい。妹に甘えられると「いいよ~いいよ~」ってなんでもかんでもベロンベロンに許したくなる全国のお兄ちゃんお姉ちゃんに、ちょっと冷静になって考えてもらいたいのだけど、妹は永遠に妹なので、その妹がこの先70歳になっても、われわれは「いいよ~いいよ~」って甘やかす可能性が高い。その覚悟はあるだろうか。ありますよね。
『この関係は合法です!』の“兄”にも、ちょっといろいろと尋ねておきたいことがある。
「YES シスター! NO タッチ!」の心意気を永遠に貫く勢いなのはさておき、なんで妹ふやしてんの? 大丈夫?
妹に夢中すぎてぼっち
“洸太”は、この10年間を「兄」に徹して生きてきた。父親の再婚によって4歳下の“杏珠”が妹となってからというものの、毎日が妹ファースト。
杏珠も“おにい”が大好き。杏珠がかわいすぎて夢中のあまり、洸太は杏珠とばかり一緒にいて、友達をまったく作らず、見事なまでのぼっちとなった。だから大学入学を機に妹と離れて一人暮らしをすれば「脱ぼっち」になるかな……?と思うのだが。
さっそくイヤな予感がしないだろうか。洸太の理想とする姿はあくまで「兄」なのだ。永遠に兄。彼の魂がどこを向いているかがよくわかる。杏珠かわいいもんね。
しかも不幸なことに大学でも友達に恵まれず、大学からの帰り道に「杏珠に会いたい……」なんて涙を流す始末。そして“彼女”に出会ってしまう。
道端にしゃがみ込む女の子。迷子かな? で、いろいろあった果てに、洸太は自分のアパートへ彼女を連れ帰り、カレーライスを振る舞う。これは誘拐なのか保護なのか。
面倒見がよすぎる。兄が染みついてるなあ……。
こんなことを言われてシスコンの洸太は耐えられるか。当然お兄ちゃんスイッチが入ってメロメロだが、相手は見ず知らずの赤の他人。がんばって耐える。でもこの女の子は見れば見るほど昔の杏珠を思い出させる幼さで、ほっぺにごはんつぶをつけたと思ったら今度は鼻水を垂らしている。小学何年生なのかな?
小学生などではなく、洸太と同い年! 名前は“初(うい)”。名前そのままに人間世界で初々しさを出しまくっている。
おなかいっぱいになったら眠くなってそのままスヤスヤ寝ちゃうし。仔猫か? どんどん「かわいい」と思ってしまう洸太。ここで面白いなあと思うのが、洸太はあくまで「お兄ちゃん」として初を見ているところだ。ふっくらした胸元やショートパンツから覗くツヤツヤの太ももなんかを見ちゃって思わず家を飛び出したあとの感想がこれ。
エロい目で見てしまうと思うよ……きょうだいじゃないし……。と、読んでるこちらは思うのだが、骨の髄までシスコンの洸太は、あくまで「YES シスター! NO タッチ!」なのだ。
そんな洸太の兄モードを加速させるかのように、初は洸太に甘えまくる。初はいろいろとワケありなようで、頼れる人も行くところもないそう。
こんなこと言われたら「ハイ、お兄ちゃんです」となるだろう。洸太はお兄ちゃん役を買って出て、初を居候させることに。
心頭滅却、妹はただ尊し
極端に幼くて無防備だが19歳で、妹のようだが妹ではない女の子と、兄キャラを保ちながら共同生活するのは大変だろう。
毎日こんな感じだ。いわゆる「ラッキースケベ」だけど洸太には災難。
だって身も心も兄に徹したいんだもの! あんなに「シスコンを卒業して脱ぼっちだ!」と意気込んで家を出たというのに結局お兄ちゃんとして頑張ってしまう洸太に、さらなる試練がやって来る。
かわいいかわいい妹の杏珠がお兄ちゃんの様子を見に来ないワケがないのだ。しかもこのとき洸太は初のパンツに手をかけている。杏珠の「何してるの……?」は至極真っ当な反応だ。
そして「この兄にしてこの妹あり」なのが次第に明らかになっていく。
血がつながっていないとはいえ、10年間ずっと自分をかわいがってくれた兄のことを、よく知らない女の子から「初のお兄ちゃんなの!」と紹介された妹の気持ちを想像してみよう。「は?」である。
この妹は手強いぞ~~。お兄ちゃん大丈夫かな? お楽しみに!
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(レビュアー:花森リド)
- この関係は合法です! 1
- 著者:あかちひろ
- 発売日:2023年12月
- 発行所:講談社
- 価格:759円(税込)
- ISBNコード:9784065340080
※本記事は、講談社コミックプラスに2023年12月30日に掲載されたものです。
※この記事の内容は掲載当時のものです。