ほんのひきだしでは、この年末年始も13日間にわたり、各出版社の文芸編集者の皆さんが【いま注目の作家】を紹介する「編集者が注目!2024年はこの作家を読んでほしい!」をお届けします。
ぜひ、気になる作家や作品を見つけて、書店に足を運んでみてください。
新潮社編集者 渋谷祐介さんの注目作家は「こいしゆうか」
こいしゆうか
イラストレーター・漫画家・キャンプコーディネイター。主な書籍に『そうだ、キャンプ行こう!』(スタンダーズ・プレス)、『カメラはじめます!』(サンクチュアリ出版)などがある。難しいことをわかりやすく親しみのある漫画で表現。『ランドネ』(マイナビ出版)、webメディア「ジモコロ」などでも連載中。ほか、キャンプコーディネイターとしては、2009年から女性が自立してキャンプをする「女子キャンプ」を提唱。女性目線のキャンプスタイルの提案、オリジナルテント「PANDA」のデザインなどを手がける。ラジオ、テレビ、雑誌など他メディア出演多数。
最新作は、新潮社 校閲部をモデルにした情熱溢れるお仕事コミック!
著書である『カメラはじめます!』や『私でもスパイスカレー作れました!』がそうであるように、難しそうな世界をわかりやすくかみ砕き、漫画としておもしろく描くという特異な能力をお持ちなのがこいしさんです。
実用系漫画ではトップランナーのこいしさんが、初のオリジナル漫画として描くのが『くらべて、けみして 校閲部の九重さん』。日本でも有数と言われる新潮社校閲部(手前味噌で恐縮ですが)をモデルに、30代の女性校閲者を主人公にしたお仕事漫画です。
本に関わる仕事の中でも校閲という世界は特殊です。はっきり言って、変わった人も多いです。とはいえ、著者の表現や日々変わっていく言葉と向き合いながら、「正しい日本語に直すため」ではなく、「いつまでも読み継がれる本を作るため」に真剣に悩みながら仕事をしている校閲者がたくさんいます。
あまりコミュニケーションを取りたがらず、独自の世界で生きている校閲者たちから話を聞き出し、それを漫画にするというのは至難の業なのですが、ここで本領を発揮されるのがこいしさんなんです。校閲者たちが口にするわずかなヒントから毎回のテーマと物語を作り、使う道具や辞書、ゲラに書かれた指摘などに滲み出る個性を参考に、キャラクターを作り上げます。
単行本に収録されるお話は、校閲者のあるべき姿を問うお仕事モノらしい内容もあれば、作家の悪筆原稿に悪戦苦闘するクスっと笑える回もあり、普段陽の当たらない校閲者たちの日常を垣間見ることができます。こいしさん特有のかわいらしくて親しみのある絵柄で描かれているため、とにかく読みやすく、「校閲ってなに?」というような何も知らない読者の方でも十分楽しめる作りになっています。
こいしさんは元々キャンプ関係の著書が多く、一眼レフ、スパイスカレー、ワイン等を始め、こだわると奥が深い題材を選び、描き続けていらっしゃいます。「誰もが自分の言葉で発信できる今の時代にこそ、校閲の仕事の大切さが伝わって欲しい」というこいしさんの思いがこもった言葉の職人の物語が、一人でも多くの方に届くとうれしいです。
(新潮社 出版部 兼 プロモーション部 渋谷祐介)
- くらべて、けみして 校閲部の九重さん
- 著者:こいしゆうか
- 発売日:2023年12月
- 発行所:新潮社
- 価格:1,265円(税込)
- ISBNコード:9784103553915