ほんのひきだしでは、この年末年始も13日間にわたり、各出版社の文芸編集者の皆さんが【いま注目の作家】を紹介する「編集者が注目!2024年はこの作家を読んでほしい!」をお届けします。
ぜひ、気になる作家や作品を見つけて、書店に足を運んでみてください。
双葉社編集者 田中沙弥さんの注目作家は「中村あき」
中村あき(なかむら あき)
1990年生まれ。2013年『ロジック・ロック・フェスティバル~Logic Lock Festival ~探偵殺しのパラドックス』で第8回星海社FICTIONS新人賞を受賞し、デビュー。『チェス喫茶フィアンケットの迷局集』で第3回双葉文庫ルーキー大賞を受賞。
現代だからこそ生まれるミステリ
ロジックの切れ味、キャラクターの魅力、そして古典から新本格まで、迸るようなミステリ愛……。
双葉文庫ルーキー大賞の応募フォームに届いた『チェス喫茶フィアンケットの迷局集』という作品を読んだ時、こんな作家さんに出会えるなんて!とパソコンの前で興奮しました。
中村あきさんは2013年に星海社からデビューし、本格ミステリシリーズを3作手がけられた気鋭。その後応募した第3回双葉文庫ルーキー大賞では、チェス喫茶を舞台とした連作短編ミステリで見事大賞を受賞し、次は長編をお願いしました。
そして生まれた『好きです、死んでください』という作品のテーマは、「恋愛リアリティーショー×本格ミステリ」。外部との連絡が途絶えた往年の孤島を舞台に、定点カメラに囲まれた番組撮影中に密室殺人が起きるという、現代的な掛け合わせに驚かされました。
リアリティーショーという設定が余すことなく生かされ、読み返すと悔しくなるほどの堂々たる伏線が張り巡らされた本作。犯人確定までの華麗なロジックは、何度読んでも痺れます。
ミステリの面白さだけでなく、今を生きる私達が直面する問題をどう小説として描くのかという点でも、中村さんの感性が光ります。
SNSが発達した現代では、リアリティーショーに限らず、様々な場面で誹謗中傷が起きます。被害者にも、傍観者にも、ある時は加害者にもなれる可能性を私達は持っています。ほとんど日常的にすらなってしまった、その「事件」のひとつひとつに誰かの痛みがあることを、真正面から描いた作品でもあります。
本格ミステリをこよなく愛する著者による、現代だからこそ描かれるべきミステリを、ぜひお読みいただければ嬉しいです。
(双葉社 第一文芸出版部 田中沙弥)
- 好きです、死んでください
- 著者:中村あき
- 発売日:2023年09月
- 発行所:双葉社
- 価格:1,980円(税込)
- ISBNコード:9784575246728
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