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【Vol.3:青波杏】編集者が注目!2024年はこの作家を読んでほしい!

ほんのひきだしでは、この年末年始も13日間にわたり、各出版社の文芸編集者の皆さんが【いま注目の作家】を紹介する「編集者が注目!2024年はこの作家を読んでほしい!」をお届けします。

ぜひ、気になる作家や作品を見つけて、書店に足を運んでみてください。

 

集英社編集者 田島悠さんの注目作家は「青波杏」

青波杏(あおなみ あん)

1976年東京都国立市出身。近代の遊廓の女性たちによる労働問題を専門とする女性史研究家。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。2022年、『楊花の歌』(「亜熱帯はたそがれて――廈門、コロニアル幻夢譚」を改題)で第35回小説すばる新人賞を受賞。

 

ジャンルに縛られない多面的な物語が魅力

2022年の第35回小説すばる新人賞を受賞した青波杏さんの『楊花(ヤンファ)の歌』

1941年に中国・廈門(アモイ)で実際に起きた日本人諜報員の暗殺事件から着想を得た物語で、女性諜報員の緊迫したスパイ活動や暗殺計画を描く冒険小説として、候補作の段階でその魅力が光っていて、「受賞した際は、ぜひ担当させていただきたい!」と立候補しました。

そして、もう一つの大きなテーマは、「女性どうしの性愛」。青波さんは、『遊廓のストライキ』や『生き延びるための女性史』を刊行している女性史研究者でもあり、選考委員の村山由佳さんは、「女性同士の肉体を伴う恋愛の湿度や粘度が素晴らしかった」と高く評価しました。

刊行後は、第12回日本歴史時代作家協会賞新人部門と第3回本屋が選ぶ大人の恋愛小説大賞の最終候補に。惜しくも受賞はなりませんでしたが、歴史時代小説と恋愛小説、ジャンルの違う文学賞の候補作に選ばれ、まさに「いくつもの顔を持つ作品」です。

現在、『小説すばる』での短期集中連載を経て、青波さんの第2作『日月潭(リーユエタン)の朱い花』を2024年春以降の刊行を目指して準備中です。

本作の舞台も『楊花の歌』と同じく海外で、主人公も女性2人。台北の古物商店で購入したトランクから見つかった一冊の日記を巡る謎を追う展開は、ミステリー要素あり、サスペンス要素ありで、デビュー作を超える重層的な物語ですので、単行本発売をお楽しみに!

“次にくる!”作家として、青波さんにご注目いただき、是非多くの人にご堪能いただきたいです!

(集英社 文芸編集部 田島悠)

楊花の歌
著者:青波杏
発売日:2023年02月
発行所:集英社
価格:1,760円(税込)
ISBNコード:9784087718294