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『余命10年』早逝の作家・小坂流加の“最初で最後”の小説に映画化熱望の声続々!

小坂流加さん『余命10年』書影

小坂流加『余命10年』文庫版刊行の舞台裏と広がりをみせる売れ行きの軌跡

10年前に刊行されたある小説が、いま多くの人の手に取られ、感動の輪を広げています。

本のタイトルは『余命10年』。2007年刊行の単行本に加筆・修正したうえでカバーイラストを変えて、2017年5月に文庫で発売されました。しかし難病を患っていた著者の小坂流加(るか)さんは、文庫版の発売を目前にして病状が悪化し逝去。『余命10年』というタイトルに著者を重ね、心を強く掴まれた読者も多いといいます。

『余命10年』文庫版刊行の舞台裏と、大きな広がりを見せている売れ行きの軌跡について、発売元である文芸社の秋山浩慈さんにご寄稿いただきました。

 

『余命10年』ってどんな本?

余命10年
著者:小坂流加
発売日:2017年05月
発行所:文芸社
価格:682円(税込)
ISBNコード:9784286184920

「死ぬ準備はできた。だからあとは精一杯、生きてみるよ」
20歳の茉莉(まつり)は、数万人に1人という不治の病にかかり、“余命10年”であることを知る。笑顔でいなければ周りが追いつめられる。何かをはじめても志半ばで諦めなくてはならない。未来に対する諦めから死への恐怖は薄れ、淡々とした日々を過ごしていく。そして、何となくはじめた趣味に情熱を注ぎ、生きることへ執着しないよう決して恋はしないと心に決める茉莉だったが……。

『余命10年』は、もともと2007年6月に文芸社から単行本で出版された小説作品です。その内容を大幅に加筆・修正し、人気イラストレーターのloundrawさんに装画をお願いして、2017年5月に「文芸社文庫NEO」レーベルで発売しました。

けれども残念なことに、この文庫版の完成を著者の小坂流加さんにお目にかけることはできませんでした。小坂さんは編集が終わった直後に病状が悪化し、発売3か月前の2017年2月に逝去されたのです。

『余命10年』はフィクションではありますが、その心情描写は決して想像だけのものではありません。小坂さんが主人公の茉莉にどれだけご自身を投影されたのか、今となっては知るすべはありませんが、物語の中の1つひとつの言葉から、著者の想いがストレートに伝わってきます。

 

『余命10年』は書店店頭からクチコミで一気に広がった!

発売からまもない頃、作品の背景をカルチュア・エンタテイメントのご担当者様にお伝えしたところ、すぐにTSUTAYAのお店で仕掛けていただけることになりました。その後、次々とほかの書店法人様でも大きく展開していただき、ネットやSNSで反響が広がっていったのです。

▼書店店頭での陳列(上から草叢BOOKS新守山店、未来屋書店名古屋ドーム前店)『余命10年』書店さんに響いた『余命10年』平積み

そして2017年12月、『余命10年』は小坂さんの出身地である静岡の書店員・図書館員のみなさまからご支持いただき、第6回静岡書店大賞の〈映像化したい文庫部門〉大賞を受賞する運びとなりました。県内の書店でフェアが開催され、さらに多くの読者に広がりを見せています。

発売から丸1年が経った今でも、売行きの勢いは衰えていません。2018年5月現在10刷25万部を突破し、次の重版も検討中です。

▼『余命10年』の売上推移(日販 オープンネットワークWIN調べ)『余命10年』売上推移

当初から、「映画化の予定はないの?」「実写化するならキャストは○○がいいな」など、書店員や読者のみなさまから映像化を熱望するご意見を頂戴していましたが、静岡書店大賞受賞以降、さらにその声が増えています。

すでに各方面から映像化のお話をたくさんいただいていますので、今年は何とか具体化に向けた第1歩を踏み出せればと思っています。

 

人気イラストレーターが表紙を飾る「文芸社文庫NEO」

「文芸社文庫NEO」は、「書き手たちと人気イラストレーターの共鳴」をコンセプトに、2017年1月にスタートした若いレーベルです。多くは自社の既刊単行本の中から作品を選定し、作品の世界観に合ったイラストレーターを社内投票で決めています。

おかげさまで創刊から1年半。これまでに11点をリリースし、『余命10年』というヒット作が生まれました。レーベルのファンも少しずつ増えています。今後は、新しい読者の方々にもっと喜んでいただけるようなコンテンツを増やしてまいりたいと思います。

これからも「文芸社文庫NEO」にご期待ください。

文・文芸社 販売部 販売課長 秋山浩慈

※本記事は、「日販通信」2018年6月号に掲載された「特集 夏の文庫増売作戦」の転載です。