8月15日、日本は74回目の終戦記念日を迎えます。
戦争の悲惨さを描く「戦争児童文学」といえば、『ガラスのうさぎ』や『ふたりのイーダ』のような昭和時代に書かれた名作が浮かびますが、現在も新しい作品が続々と生み出されています。しかもそれらは、普段はエンターテインメント作品を描くことの多い現役の人気児童文学作家たちが、祈りや願いを込めて、子どもたちに熱く戦争と平和を語りかけるものです。
戦時下の子どもたちを主人公にした物語もあれば、「祖父や祖母が体験した過去の戦争を、現代の子どもが知る」という内容の物語もあります。また、第2次世界大戦下の日本の話だけではなく、外国で起きた戦争や、未来に起こりうる戦争について考えさせるような作品もあります。
児童文学の人気作家が描く「戦争の物語」
たとえば、アニメ映画が大ヒットした『若おかみは小学生!』の令丈ヒロ子さんによる『パンプキン! 模擬原爆の夏』。
同作では、米軍が原爆投下前に日本各地で模擬原爆を使って投下練習をしていたことを知った現代の小学生が、この事実に向き合い、深く考えていく姿が描かれます。
- パンプキン! 模擬原爆の夏
- 著者:令丈ヒロ子 宮尾和孝
- 発売日:2019年06月
- 発行所:講談社
- 価格:726円(税込)
- ISBNコード:9784065163733
また、リアリズムからファンタジーまで数多くの著作がある越水利江子さんは、『ガラスの梨』で、ご自身の母親をモデルにして、戦時下の過酷な日々を生き抜いた少女を描き出しました。
心を強く揺さぶられる、臨場感のある作品です。
- ガラスの梨
- 著者:越水利江子 牧野千穂
- 発売日:2018年07月
- 発行所:ポプラ社
- 価格:1,650円(税込)
- ISBNコード:9784591159088
本年の児童文芸家協会賞受賞作である森川成美さんの『マレスケの虹』は、太平洋戦争当時にハワイで暮らしていた日系3世の少年が、国境を超えたグローバルな考え方に思いいたる新しい観点の作品です。
- マレスケの虹
- 著者:森川成美
- 発売日:2018年10月
- 発行所:小峰書店
- 価格:1,650円(税込)
- ISBNコード:9784338287180
「トキメキ♥図書館」シリーズが人気の服部千春さんは、『花あかりともして』で、「戦時下では花を育てることが禁じられていた」という事実をもとに、出兵した父親の帰還を願う少女が、周囲から白眼視されながらも、花あかりをともして待つ健気な姿を描いています。
- 花あかりともして
- 著者:服部千春 紅木春
- 発売日:2017年07月
- 発行所:出版ワークス
- 価格:1,540円(税込)
- ISBNコード:9784907108083
“現在”から戦争を見つめること
「現代の視座から戦争を見つめる物語」が提示するものは、過去を知ること、そして未来を考えることです。
戦争を阻止し、平和を実現する。かつての大人たちができなかったことを、子どもたちはいつか自分たちの力で実現しなければなりません。
物語を通じて、バトンが託されようとしています。また作家たちの豊かな表現力によってつくられた物語は、戦争と平和というテーマにとどまらない、児童文学としての表現の可能性にも挑戦した優れた作品ばかりです。
学校の先生、図書館関係者の皆様へ
日販図書館選書センターでは、夏恒例の「戦争と平和」フェアを開催しています。今年は、戦争と平和を考えるための「読み物」を中心に、約40作の本を揃えました。
同フェアでは、昭和時代の戦争児童文学の名作と並行して、近年に刊行された作品も多数展示しています。
なかでも今回の記事で紹介した4作は、近年刊行された(または文庫化された)新しい作品からピックアップしたもので、著者の先生方から、作品への思いを綴った特別なメッセージも寄せていただいています。
また、今回の「戦争と平和」フェアでは、国内作家の作品だけでなく、翻訳作品も多数取り揃えました。
アウシュビッツや、ナチスドイツの圧政に対峙した市民の物語、中東などの紛争地域を描いた作品もあります。日本と同じように、海外でも戦争児童文学が「現代を考えるテーマ」として描かれ続け、続々と翻訳刊行されています。
この機会にぜひ、本を直接手にとってお確かめください。
※日販図書館選書センターは、学校の先生や学校司書、図書館司書の方を対象とした施設です(来場は事前予約制)。
日販図書館選書センター
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