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創刊25周年の『Daria』編集長が見てきたBLの変化と未来|【連載】編集長雑記

Daria

各出版社を代表する雑誌の編集長によるリレー連載「編集長雑記」。

今回は、羽純ハナさんや百瀬あんさんをはじめ、人気作家の作品を多く連載し、BLファンからたくさんの支持を得ている『Daria』編集長の鹿木聖子さんです。

『Daria』編集部に学生アルバイトとして入社してから、長年にわたり同誌に携わっている鹿木さん。創刊25周年を振り返るとともに、BLジャンルの変化や最新事情について、綴っていただきました。

 
▼『Daria』最新号はこちら

Daria (ダリア) 2023年 12月号
著者:
発売日:2023年10月20日
発行所:フロンティアワークス
価格:990円(税込)
JANコード:4910058391233

 

変化し続けるBLと『Daria』の25年とこれから

1997年12月にBL(ボーイズラブ)のオリジナルアンソロジーとして創刊した『Daria』は、2022年12月で創刊25周年を迎えました。

長いようであっという間の25年。とはいえ、月日の流れは大なり小なり色々な変化をもたらすものです。2000年当時、『Daria』編集部で学生アルバイトとしてお気楽に働いていた私が、今や編集長をしているのですから、私も例外ではありません。

この25年で『Daria』はアンソロジーから雑誌に、季刊誌から隔月刊誌になりました。BLの人気ジャンルもさまざまな変遷があり、「学園」モノが流行っていた時代は「BLファンタジーは売れない」と言われていましたが、「サラリーマン」、「アダルト」などのジャンルを経て、今や「ファンタジー」の人気が高まっています。

その人気の先駆けとなったと言っても過言ではないのが、「獣人」と「オメガバース」の設定をかけあわせた『ペンデュラム ―獣人×オメガバース―』という作品です。人気になるジャンルを先取りすることは難しいですが、著者の羽純ハナ先生の独創性と担当編集の先見の明により、今までにない設定を生み出し、デビューコミックスながら大ヒット、そして現在までそのシリーズを続けることができました。

また、人気ジャンルに変遷はあれど、BLにおいて変わらないのは恋愛を描くということ。百瀬あん先生の作品『幼馴染じゃ我慢できない』は、登場人物の関係性、恋愛感情の揺れ動く様、こちらがきゅんとしてしまう表情など、読者の求めるものが的確に描かれており、ファンから絶大なる支持を得ています。(「ほんのひきだし」に百瀬先生のインタビュー記事も掲載いただいているので、ぜひそちらもご覧ください……!)

変化といえば、男性同士の恋愛をテーマにするドラマが人気になったこともあり、世の中のBLに対する受け止め方も大きく変わったように思います。それは海外にも言えることかもしれません。

かつては、日本からBL作品を韓国、台湾に輸出することが主流でしたが、今は海外から日本にBL作品が輸入され大ヒットする時代。『Daria』でもBLの海外レーベルを作り、韓国のWEBコミック『夜画帳』『キリング・ストーキング』をはじめ、中国小説の『魔道祖師』『天官賜福』など、さまざまな国の作品の翻訳出版に取り組んでいます。

BLジャンルが少しずつ一般に認知されて広がったことや、海外作品の盛り上がりにより挑戦できることが増えた一方、私たちを取り巻く環境の変化は年々早くなっています。そのスピードに遅れないように必死でしがみつきつつも、これから先、どんな変化が私たちを待ち受けているのか楽しみでなりません。

今年一年は創刊25周年の目玉として、POP UPショップや漫画展、グッズ販売、雑誌の付録や特集など、作家さんのご協力や読者の皆さまの応援のおかげで大々的に展開することができました(2023年10月20日発売『Daria』〈2023年12月号〉まで25周年企画開催中)。5年後、10年後も、皆さまにおもしろい作品を提供できるように邁進していきます。

 


フロンティアワークス Daria編集長
鹿木聖子 SHIKAKI Seiko
2000年、大学生時代にアルバイトとして入社以来、出版事業部に在籍。漫画や小説の担当編集を経て、Dariaの編集長に就任。


 

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