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サキュバスなのに恋愛初心者!? オタク同士のすれ違いが愛おしい『りりむホリック』

2次元&BL好きな令和のサキュバス

むっつりと魂の純真さは相性がむちゃくちゃいいと思う。頭の中で自分のスケベ心にムチを打ちながら、いとしい相手を大切に思い、でも大切に思えば思うほどエロい感情があふれて実際の行動がなんだかどんどんヘンになる。

ムサヲ先生の最新作『りりむホリック』の“唯颯人”は、同じクラスのオタク友達“加藤えむ”に、自分のスケベな感情がバレませんようにと必死だった。


こんなことになったら唯の精神はたちまち小宇宙に包まれる。もう一触即発だ。でも彼はグッとこらえる! なぜなら唯はえむのことがとても好きで、えむにも自分を好きになってもらいたくて、だから彼女に「こいつエロい目で見てるんじゃ?」なんて絶対に思われたくないのだ。

えむは尋常じゃないくらい魅力的な少女だった。ありとあらゆる男たちは彼女の姿に目がくぎ付けになり、エロ心をかき立てられ思わず目を伏せる。それもそのはず、彼女は人間ではなかった。


本作の舞台はサキュバスたちと人間が共生する社会だ。ちがう者同士が共に生きるということは、両方の視点から「わかってほしいこと」や「重なること」があると思う。

では、えむはどんなサキュバスで、彼女は唯をどう思っているか。彼女はサキュバスの中でも少し風変わりで、サキュバスによくある「異様に男好き」な“発達特性”が認められないタイプだった。そして善良な心と常識の持ち主だ。オタクとしても礼儀正しく、書店のポップを撮影してもいいか店員さんに確認したり、買い占めをしないで店舗を根気強く巡ったり、まさに品性高潔。いいやつ!

で、人間の男よりも2次元の男を愛し、BL両片想いの純愛に大興奮する美しいサキュバスだったが……?


唯のことが好き! 推しカプ小説で仕入れたBL知識は豊富だが、自分と唯にそれが当てはまらないことは知っており(ここも彼女の善良さの一つだと思う)、かつ恋愛経験は無。もう手も足も出ない。でも唯のことは好き!


ということで、唯と同じくらい、恋するむっつりだった。恋い慕う気持ちはキレイに重なっているのに、同じく重なってしまったむっつりのおかげで、ふたりはすれ違いまくる。


サキュバスなのに恋愛の参照元がBL作品だけだとLINEを交換するだけで抱腹絶倒の展開になる。そして、えむを不快な気持ちにさせたくないあまり「LINE交換しよ」のひと言がなかなか言えない唯の慎重さも最高にいい。交換してからも大変! 涙が出るくらい笑った。

「でも鬼族はパンツの見せ合いが挨拶っていうし」

むっつりとむっつりが大激突するラブコメだが、お互いが歩み寄る姿が美しいマンガでもある。スケベ心と愛情が美しいマーブル模様になるエピソードばかり。だからパンチラですら尊い。

ある日、なんとかして唯に自分を意識してもらいたいえむは、ラブコメをヒントにラッキースケベ作戦に出る。


作戦を立てる前から彼女はスケベなパンツを穿いていたが、別に唯に見せるために穿いたのではなく、気合いが入ってのスケベパンツチョイスなのがかわいい。そしてラッキースケベの作戦立案中も、エロかわいいパンツを見せ合うサキュバスの習慣は人間にはフィットしなさそう……と悩む。かわいくて尊い。そんなに思考を巡らせるのに、階段からのパンチラには全然気がつかないのだ。ナチュラルにパンチラが発生してしまう。

そして階段の下には唯がいた。これもまたナチュラルな事態だった。


たぶん0コンマ数秒の間に、唯は「見せパンの気配がない」「これは異文化の現象か?」とグルグル考え、パンツをガッツリ見る。どんなスケベパンツだったかはさておき、唯の瞳孔は「T」になっていた。

そして、むっつりなスケベ心と同じ熱量でオタクの友情もしっかり育まれていくところもかわいい。ふたりは同志なのだ。


どうして唯とえむがお互いを好きになったのかよくわかる。読むと幸福な気持ちになる。

さて、普段のえむの様子を見ていると「人間の女子と何が違うの?」と思うかもしれないが、彼女は紛うことなきサキュバスで、サキュダチ(サキュバス仲間)もいっぱいいる。


サキュバスたちの恋バナは鋭くて危険な香りも漂う。この異質さも本作の魅力の一つだ。

ふたりは、種族の違いはそのままに、双方むっつりすぎていろいろ大変で、でもときどき急接近する。そんなとき、えむはサキュバスだから角が出てしまう。


彼女がこんな顔を見せる相手は人間の唯だけ。ちなみに普段は隠している八重歯も唯の前ではためらいなく見せている。本当にかわいい。

*

(レビュアー:花森リド)

りりむホリック 1
著者:ムサヲ
発売日:2026年08月
発行所:講談社
価格:594円(税込)
ISBNコード:9784065445013

 

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※本記事は、講談社|今日のおすすめ(コミック)に2026年9月13日に掲載されたものです。
※この記事の内容は掲載当時のものです。