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19年越しの誤解と父の愛情を描く、静かに心を揺さぶる感動作『お父さんは私を描かない』

「親の心子知らず」

子どもは、親の気持ちなんてわからない。
だから親の愛情を誤解してしまうこともあるし、何気ない出来事を、大人になっても引きずってしまうこともある。

2026年7月22日に発売された、かしのこおりさんの最新作『お父さんは私を描かない』は、そんな親から子へ伝えきれなかった想いを静かに描いた一冊です。

 

父親は「裏切り者のダサ男」

浅黄(あさぎ)すみれは両親の離婚により父親との思い出は19年前で止まっています。画家だった父はいつも海の絵を描いており、人間を描くのはキライとすみれに言っていました。一生描かないのと尋ねるすみれに対し、

寂しくなった時
会いたい人を描くかな

という言葉を残した父。

ある日、すみれがアトリエを覗くと父は女の人の絵を描いており、「お母さんには内緒だ」とモデルの女性と2人で部屋に入ってしまいます。

以来、ずっと「裏切り者のダサ男」の父を許せないまま大人になっています。

 

父が遺した「SUMIRE」

ある日、すみれによく似た女の子の絵の展覧会に偶然足を運びます。展示会のタイトルは「SUMIRE」、画家の名前は森白碧。すみれの父親の名前でした。

一面に広がる様々な表情のSUMIRE。「寂しくなった時 会いたい人を描くかな」そんな父の言葉を思い出し、会いに行こうと決意をします。

ところが、父の自宅にいたのは、同世代の青年ひとり。
すみれを見た途端「ずっと会いたかったボクのミューズ!」と飛びかかる始末。

そこで聞かされたのは、あの展示された絵は全て彼が描いたという事実……!
なぜ? どうして? そして、父は一体どこに?

 

真相を求めて小さな旅にでる

この出来事をきっかけに、すみれは19年間向き合えずにいた父の軌跡をたどるため、青年とともにスウェーデンへ向かいます。

そこで知るひとつひとつの出来事が、幼い頃の記憶と結びつき、過去がまったく違う景色として見え始めます。

何もわかっていなかった。
その事実に、後悔がすみれを包み込みます。それでも父の愛情に気づいたことで、19年間止まっていた時間はようやく動き出します。失った時間は戻らなくても、人は前を向くことができる。そんな小さな希望を、静かに感じさせてくれる物語でした。

個人的に一番心を動かされたのは、「SUMIRE」の瞳です。
海で拾ったウランガラスが埋め込まれ、光を当てるとキラキラと輝く。それは、幼いすみれが描いた女の子の絵の"輝く瞳"を再現したもの。離れていても忘れたくなかった娘の姿を、父は絵という形で何度も残し続けていたのです。

正直、読みながら何度も思いました。
「もっと早く誤解は解けなかったのだろうか」と。
でも、それは大人になった今だから思えることなのかもしれません。

だからこそ、読み終えたあと真っ先に思い浮かんだのは「親の心子知らず」ということわざでした。けれど、この物語はそれだけではありません。

父も、そして母もまた、娘が19年間抱え続けてきた誤解を知りませんでした。
「親の心子知らず」であり、「子の心親知らず」でもあった。
だからこの物語は、ただ温かいだけでは終わりません。

親子だからこそ、伝わらない想いがある。
その切なさまで丁寧に描いているからこそ、読み終えたあとも長く心に残り続けるのです。

(レビュアー:Micha)

お父さんは私を描かない
著者:かしのこおり
発売日:2026年07月
発行所:講談社
価格:792円(税込)
ISBNコード:9784065442289

 

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※本記事は、講談社|今日のおすすめ(コミック)に2026年8月21日に掲載されたものです。
※この記事の内容は掲載当時のものです。