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記憶を失った少女と、傷を抱えて明るく生きる少女――再会した二人の再生の物語|『ユジンとユジン』イ・グミ

同じ被害に遭い、異なる環境で育った二人の少女。再会した彼女たちが辿る再生への道

2004年に初版が刊行された本書は韓国で大きな話題となり、中学校の課題図書にもなるなど子供から大人まで幅広い世代に読まれているという。ちなみにこの邦訳は2020年の改訂版を底本としている。

二人のユジンという少女の物語である。中学二年に進級したユジンは、新しいクラスに同じ幼稚園だったユジンがいることに気づく。当時、自分は大きいユジン、相手は小さいユジンと呼ばれていた。幼稚園で警察沙汰があり、その後小さいユジンが引っ越したため、それ以来の再会だ。しかし小さいユジンは何も知らないという。どうやら当時の記憶を失っているらしいが、その後彼女の記憶の扉は少しずつ開かれていく。

物語は二人の視点で進んでいく。幼稚園時代、彼女たちは園長により性被害を受けていた。心に傷を負いながらも明るく大らかな性格になった大きいユジンと、記憶を失くし、成績優秀だがおとなしく内にこもる性格になった小さいユジン。生まれつきの性格はあるにせよ、二人の違いは幼稚園時代の家族の対応が大きな要因だったことが次第に見えてくる。

二人は距離をおきながらも、相手のことを気にかけて生活を送るようになる。そして記憶を取り戻した小さいユジンは苦しむ。大きいユジンも完全に立ち直ったわけではなく、フラッシュバックを体験することもある。その日常や心情が丁寧に描かれ、読みながらすっかり十四歳の頃に戻っていた(親に携帯電話を買ってもらえず爆発するシーンは完全に感情移入した)。自分も親のこんな発言が嫌だった、自分にもこんな劣等感があった等と思う一方で、こんなふうに親に言ってほしかった、こんなふうに考えればよかった、こんなふうに自分の気持ちを言語化できればよかったと思う箇所も多々ある。そのなかで、大きいユジンの母親が娘に繰り返す「あなたは悪くない」という言葉は、理不尽な被害に遭ったすべての人たちに届けたい言葉だ。辛い出来事を含む物語だが、だからこそのカタルシスがある。韓国でロングセラーなのも納得だ。

 

書誌情報

ユジンとユジン
著者:イ・グミ
発売日:2026年07月
発行所:双葉社
価格:1,870円(税込)
ISBNコード:9784575249088

 

試し読みと著者インタビューが公開中

双葉社文芸総合サイト「COLORFUL」にて、『ユジンとユジン』の試し読みが公開されています。

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著者プロフィール

イ・グミ
1962 年忠清北道生まれ。84 年「新しい友文学賞」に短篇童話が入選し作家活動を始める。2004 年幼児期に傷を負った女子中学生を描いた本書『ユジンとユジン』(20 年改定版)を発表。大きな反響と共感の声を集め、韓国ヤングアダルト文学の先駆者となる。その後、上梓した主な作品で07 年小泉児童文学賞、11 年尹石重文学賞、17 年方定煥文学賞を受賞。24年に続き26年にも、世界で最も権威のある国際的な児童文学賞、国際アンデルセン賞の最終候補者に選出。40年以上にわたって幅広い世代の読者に支持されている。邦訳書に『そこに私が行ってもいいですか?』(神谷丹路訳、22 年里山社)、『アロハ、私のママたち』(李明玉訳、23年双葉社)がある。

『小説推理』(双葉社)2026年9月号より転載