9月29日(金)より順次、全国約600書店にて配布が開始されたBLコミックガイド「B+LIBRARY(ビープラスライブラリー) vol.14」。
Vol.14の表紙は、8月22日(火)に発売された百瀬あんさんの新刊『可愛いだけじゃ満足できない』に登場する、光一郎と樹里の2人が飾りました!
また、今回は特集として百瀬あんさんのこれまでの作品を紹介するとともに、ご本人へのインタビューを実施しています。本記事では冊子に掲載しきれなかった内容も含めて、インタビュー全文を公開します。
- 可愛いだけじゃ満足できない
- 著者:百瀬あん
- 発売日:2023年08月
- 発行所:フロンティアワークス
- 価格:825円(税込)
- ISBNコード:9784866576923
百瀬あん
2016年に「相楽くんの恋患い」で商業デビュー。
初の単行本『俺を見て。』(Jパブリッシング)が2018年に発売される。「幼馴染BL」の代表作ともなった『幼馴染じゃ我慢できない』(フロンティアワークス)はBLアワード2022 BESTコミック部門第2位にランクイン。2023年8月には、スピンオフ作品『可愛いだけじゃ満足できない』(フロンティアワークス)が発売された。
喜んでくれる人がいると筆が乗る
――BL作品を描き始めたのはいつ頃ですか? きっかけがあればお聞かせください。
BLの存在を知ったのが中学2年生の頃なので、描き始めはそのあたりです。高校に入るタイミングでTwitter(現・ X)を始めたのを皮切りに、同じく絵を描く友人が沢山できて創作活動が楽しくなり、BLを描く頻度がドカンと増えました。
――もともと漫画はお好きでしたか? 漫画に限らず、お好きなもの・こと、ご自身の創作の源泉や、影響を与えていると思うものについて教えてください。
もともとはお絵描きが好きだったのですが、小学生の頃、両親の教育方針らしく漫画を読んだことがない子がクラスにいて、見様見真似で漫画を描いて見せたら物凄く喜んでくれました。続きが読みたいって言ってくれて、それが本当にうれしくて応えたくて。飽き性の私が漫画を描き続けた最初の理由はこれかなと。喜んでくれる人がいると筆が乗るのは、今も昔も変わらないですね(笑)。
連載掛け持ちはむしろ気分転換
――複数誌で作品を連載されるなど、日頃から精力的に活動されている印象がありますが、スケジュール管理はどのようにされていますか? また連載掛け持ちゆえに大変なことや苦労されていることはありますか?
最近まで紙のスケジュール帳に予定を書き入れていましたが、ありがたいことに翌年や翌々年の話なんかが出てくるようになったので、重い腰を上げてデジタルで管理するようにしました。掛け持ちで大変に感じるのは、あっちとこっちで企画や告知の時期が被らないよう調整しなければならないこと。逆に言えば苦労はそのくらいで、むしろ私は複数の作品を掛け持ちするほうが気分転換になってハッピーですね。
――原稿作業中に欠かせないものはありますか?
飲み物と音楽ですね。飲み物は、無糖のコーヒーや紅茶、微炭酸水あたりが好きです。1日に2リットルくらいは何かしら飲んでいると思います。音楽は、同じ曲をリピートして延々と流し続けることが多いです。1日中その1曲だけで過ごすときもあります。ジャンルは特にこだわりがなくて、メロディーが耳に残りさえすれば洋楽でもK-POPでも、中国語の歌でも聞きます。ただBGM系よりは歌の方が好きかも。
――連載の掛け持ちが気分転換になるとのお話でしたが、ほかにも気分転換の方法があれば教えてください。
スマホで軽くできるゲームは原稿執筆の合間にやりがちです。ストーリーがあるタイプは時間が無限に吸われてしまうので、パズルゲームみたいなサクッと遊べるものを選ぶようにしていて……。前はテトリスをしていましたが、ここ1か月は数独にハマっています。あとはストレッチとか、夜ならお酒を飲むとかですね(笑)。
表情はとにかく「眉毛」
――作品を描くにあたり、大切にされていることをお聞かせください。
一番気を付けているのは読みやすさですね。コマ割りが複雑になり過ぎないように……とか、あとは文字で渋滞するのも避けたいので、絵で説明できることは絵で表現してスッキリさせるとか。読みづらさが勝って内容が頭に入ってこない……なんて悲しいですから。読みやすさは内容を楽しんでもらうためのスタートラインだと思っているので、これは読者さんのためにも自分のためにも大切かなと。
――キャラクターを描くにあたって「ここは外せない!」というこだわりポイントはありますか?
表情を描く時はとにかく眉毛にこだわります。前髪で眉が隠れている子だったら、表情を見せるために風や動きで髪を避けたり、逆に表情を読めない顔を描く時は、眉毛が見切れるコマ割りをしたりしています。
実は4人でルームシェアをするはずだった!? 光一郎×樹里カップル誕生秘話!
――今回の「B+LIBRARY vol.14」の表紙である『可愛いだけじゃ満足できない』で、光一郎と樹里の2人のストーリーを描こうと思ったきっかけについてお聞かせください。
スピンオフ元の『幼馴染じゃ我慢できない』を執筆していた時、ありがたいことに読者さんから「隣人のバカップル2人が気になる」とのお声をいただくことが多かったので、それならと連載として筆を執りました。元々どこかでこの2人の馴れ初めが描けたらなあとは思っていたので、コミックスにしていただけて嬉しいです。
- 幼馴染じゃ我慢できない 1
- 著者:百瀬あん
- 発売日:2021年06月
- 発行所:フロンティアワークス
- 価格:740円(税込)
- ISBNコード:9784866574493
――『可愛いだけじゃ満足できない』では、光一郎と樹里がお互いに心の距離を縮めながら恋人になるまでの過程が描かれていますが、2人が出会って「本気の恋」に落ちるまでの心の変化を表現するにあたり、どのようなことを意識していましたか?
「最終的にバカップルになる」というゴールが決まっているので、その片鱗が見えるやり取りはいろいろなところに散りばめておこうと意識していました。あとは、出会いによって考え方や振る舞いが変わっていく2人の様子が段階的に描けたら良いなと。
――『可愛いだけじゃ満足できない』と、スピンオフ元の『幼馴染じゃ我慢できない』の2作について、それぞれ印象に残っているシーンを教えてください。
『可愛いだけじゃ満足できない』は、樹里を抱きとめる光一郎のシーンと合わせて、最終話で悩む光一郎が全体的に好きです。『幼馴染じゃ我慢できない』では、1巻の終盤に雨の中、諒太が蒼衣を迎えに行く仲直りのシーンが印象深いです。1巻であのシーンが描けたから、その後の2人を2巻、3巻と続けて描くことができたのではないかと思っています。
――『幼馴染じゃ我慢できない』の時間軸では、いつもラブラブな光一郎と樹里カップルですが、メインカップルである諒太と蒼衣の隣人として2人を登場させた経緯についてお聞かせください。
諒太と蒼衣の、幼馴染として20年近く変わらない関係を動かすならこれくらいインパクトある人たちを投げ込むしかないと思って……。最初は4人でルームシェアさせようかと考えたのですが、担当さんから「濃すぎる」とストップされました。その通りだと思います。
――作中に出てくる諒太と蒼衣、光一郎と樹里のファッションや会話の様子などを見ていると、4人とも等身大の20代男子という印象ですが、それぞれキャラクターを作りこむうえで、特に気に入っている部分やこだわった部分はありますか?
洋服の系統は完全に趣味ですが、言葉選びや口調は意識的に気を付けていました。このキャラってこんな難しい言い回しするかなあ?とか。大学生的に死語じゃないかと、SNSで検索をかけまくったこともあれば、一度自分で声に出してみたり、より日常会話としてテンポの良い語感を常に探したり……。そんなことをしていましたね。
幼馴染BLは「昔のお互いを知っている」事実が魅力
――これまで「学園BL」や「幼馴染BL」を多く発表されていますが、このジャンルの魅力はどのようなところにありますか?
「学園BL」というか、その年頃というか……、大人扱いされたり、子ども扱いされたり、そういう曖昧な時期自体が大好きですね。
「幼馴染BL」については、掘れば掘るだけ過去のエピソードがあるところが好きです。一口に幼馴染と言ってもいろいろなタイプがあると思いますが、共通して言えるのは「昔のお互いを知っている」という事実が他の人との差異を生んでいるところですよね。これが堪らないです。
――ご自身にとっての「BL」の魅力をお聞かせください。また、これから挑戦してみたいジャンルや、BLに限らず今後挑戦していきたいことがありましたらお聞かせください。
テーマが大きくて纏められる気がしないですね(笑)。
ただ、BLより描きたいものが今のところ思い浮かばないので、やっぱり私の中で物凄く魅力的なものなのだと思います。あ、でも百合はちょっと描いてみたいかもしれない。
DNAに刻まれている性癖もあれば、お仕事を始めてから新たに開拓された性癖もあるので、どちらも大事にしてこれからも楽しく執筆していきたいです。
――最後に「B+LIBRARY」の読者へメッセージをお願いします。
ここまでお読みいただきましてありがとうございます! 8月に発売した『可愛いだけじゃ満足できない』と、スピンオフ元の『幼馴染じゃ我慢できない』もあわせてぜひお手に取っていただけたらうれしいです! どうぞよろしくお願いいたします!
「B+LIBRARY」について
「B+LIBRARY」は、キャラ属性や萌え度、ジャンルといった切り口から好きなBLコミックを探すことのできるガイドブック。BLポータルサイト「ちるちる」に投稿された10万件以上のレビューや、BLコンテンツを扱うサイトで収集されたデータをもとに作品を厳選し、「スパダリ攻め」「メガネ受け」といった設定別で掲載。「好きなジャンル」「好きな作家」「絵柄」などさまざまな切り口で作品を選ぶことができるので、新たなBLコミックと出合ったり、見逃していた作品を見つけたりするのに役立ちます。
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