子供のころからずっと、弟が欲しいと思っていました。それもとびきりカッコいい、こんな弟が。
『世界の果ては深愛』では、健気で可憐で可愛い姉と、とびきりカッコいい弟の「そんなことしていいの?」という禁断の同居生活にハラハラしっぱなしです。
東京で一人暮らしをしている真清冬花(ますみとうか)は、美術大学油画科に通う極貧大学生。
実家は政治家とも繋がりがある地方の名家なのですが、女の冬花にできる唯一のことは、地元の大学を出て父親が決めた相手と決婚することだと言われ、家を飛び出してしまったのです。
冬花は昼は大学、夕方から朝にかけては居酒屋とガールズバーのバイトの掛け持ちで、ギリギリの生活をしていたのですが、給料未払いのまま居酒屋が倒産。
途方に暮れていたとき、突然現れたのが、弟の真清雨音(ますみあまね)でした。
こういうのを非の打ちどころのない美しさと言うんだろうな、というくらい品のある男の子が出てきて、もうため息です!!
冬花にも目の下にホクロがあるのですが、雨音の左目の縦に並んだホクロも色っぽい。
そんな雨音が冬花の家族になったのは、冬花が13歳、雨音は9歳のときでした。
普通なら、母を病気で亡くした直後の父の再婚に反発しそうですが、冬花は雨音に優しく接します。
こんな物憂げで淋しそうな雨音を見ていたら、そりゃあ愛おしくなるよなぁ、とは思うのですが、この姉弟の距離感はかなり危うい!!
大学受験のため東京に出てきた雨音は、冬花のピンチを救うため、ホテルの宿泊費をアパートの家賃に使ってしまいます。
当然行くところがないので、冬花と同居することに。
姉弟ですからね、これはあり得るけれど、冬花が翌朝目覚めると……、
えっと、えっと……、距離が近すぎる!!
だけどもし子供のころから手を繋いだり、一緒に寝ていたりしたら、その延長のスキンシップなのかな、と自分に言い聞かせました(笑)。
雨音は学業優秀で料理もでき、冬花ちゃん、冬花ちゃんと大事にしてくれます。そして何より美しい!!
しかも、後妻の連れ子なのだから付き合ってもいいんじゃない、いやダメでしょ、と行ったり来たりの空想が終始続きます(笑)。
ここに冬花のことが好きな同じ油画科の日吉洸平(ひよし こうへい)が、絡んできます。
ちょっと胸が苦しくなるような一途な愛情をしめす雨音と、明るくて友達が多そうな日吉が、冬花を取り合う三角関係になったら、ますます雨音の独占欲が強まりそうです。
こんな素敵な男性ふたりから追いかけられて羨ましい限りですが、冬花はときおり浮かない顔をします。
それってもしかして、もしかして……。
この『世界の果ては深愛』の一番の見どころは、なんといっても冬花と雨音が美しいことだと思います。もう、うっとりする美しさです。
だからこそ、くっつきそうでくっつかない、恋人のようで恋人ではない姉弟の深く結ばれた純愛の行方が、楽しみだと思いました。
*
(レビュアー:黒田順子)
※本記事は、講談社コミックプラスに2023年8月27日に掲載されたものです。
※この記事の内容は掲載当時のものです。