冒頭から、えっどういうこと? 何があったの?と思いながら読み進めていくうちに、えぇっどういうこと? 結局何があったの?と思ったまま1巻を読み終えてしまいました!! もう謎だらけ!!
これは一筋縄ではいかないサスペンスの始まりです。
高校2年のとき交通事故に遭い、ずっと意識がないまま眠り続けていた笹本海深(ささもとうみ)。
16年ぶりに深い眠りから目を覚ますと、病院のベッド脇には、両親と初めて会う妹の希実(のぞみ)がいました。
しかし海深には、断片的な記憶しかありません。
元の生活に早く戻りたいと思った海深は、妹が通う通信制芸術高校に、まずは週に1度のペースで通うことに。
妹の希実とは16歳差。現在33歳の海深が妹と同級生なんて、通信制の高校ならあり得る話だし、面白い設定だなと思っていたのですが……。
美術コースを選んだ海深が、家で授業の準備をしていると、まるで隠すかのように白いキャンバスが被せてある1枚の絵を見つけます。
ところが海深には、この絵を描いた記憶が全くありません。しかも左利きの海深に対し、この絵は右利きの人が描いたと思われるのです。
この絵が16年前の過去を解き明かす鍵になるのかと、ここからは探偵気分です!!
実は美術コースの同級生である山口(21歳)に初めて会ったとき、海深は言葉では言い表せない特別なものを感じます。しかも左利き!!
美術コースの教師として赴任してきた加賀谷朔(かがやさく)も、事故に遭う前の海深と予備校が一緒で、何かを知っているようで怪しい。
そして、家族も怪しいのです。いつもは穏やかな母親さえ、16年前に住んでいた家のことや、交通事故の詳細を聞こうとすると、過剰な反応を見せます。
16年前に、一体何があったの? みんなで何を隠してるの?
この二つの疑問が頭の中でグルグルしているのに、さっぱりわからない。
まさに、海深と同じ状態で読み進める感じです。
ここに、希実の嫉妬も絡んできます。
今まで一卵性姉妹かシスター・コンプレックスか、というぐらい姉にべったりだった希実が違う一面を見せ始め、どういうこと?と余計にわからなくなってしまいました。
正直、ヒントになりそうな“点”は、いっぱい散りばめられているのです。
しかし、その点と点を結んで“線”にすることができず、えっ、どういうこと?と思ったまま、読み終えてしまいました(笑)。
これはどこかで絶対に見落としているに違いないと、もう一度最初から読み直してみると、うわ、うわ、うわっ……。
話に夢中になってしまったばかりに、頭の片隅で「あれっ?」と引っかかったことを飛ばしていたのですが、それらをつなぎ合わせてみると、とんでもない真相が浮かび上がってきました。
といっても、あくまでも私の推測ですが。
こうなると、前半は明るくて可愛い希実の笑顔までもが、どんどん不気味に思えてきます。
事故や真相と関係なさそうに思えたセリフや、ちょっとしたエピソードも伏線になっていて、それに気づくと……。
終始不穏な空気でザワザワしたのは、このせいだったのか。
これはなかなか怖いぞ!! そしてこの先はもっと怖くなりそうだぞ!!
美人姉妹の一筋縄ではいかないサスペンス、一発で真相を見抜くことができるかどうか、ぜひ試してみてください。
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(レビュアー:黒田順子)
- 天使の警醒ー16年後に目覚めた私ー 1
- 著者:斉藤倫
- 発売日:2023年07月
- 発行所:講談社
- 価格:759円(税込)
- ISBNコード:9784065323960
※本記事は、講談社コミックプラスに2023年8月25日に掲載されたものです。
※この記事の内容は掲載当時のものです。