――壇蜜さんの文章は、1対1で近い距離から語りかけてくるような読み心地がするのが印象的でした。原稿は、いつどのようにして書いているのですか?
お風呂のふたに防水のタブレットを立てかけて、入浴しながら書くことが多いです。よく考えたら私、原稿はたいがい全裸で書いています(笑)。あとは飛行機の中など移動中ですね。
文章を書くことには、せまい空間で、プライベートな環境で向き合っているのでそう感じていただけるのかもしれません。
――お風呂で書いているというのは予想外でした。
だいたい自分の中で、執筆にかける時間は45分と区切っているんです。それだと1,200字の原稿がぎりぎり書けるし、のぼせないんですよ(笑)。最近はちょっとはみ出してしまうので、もう少しがんばらないといけないのですが。
自分で書いた本が“一番濃密な暴露”であるように
――『たべたいの』と同時期に、林真理子さんとの共著『男と女の理不尽な愉しみ』も発売されました。こちらは「甘美で魅力的なはずの“男女の関係”に追い詰められてしまうのはなぜか?」という切り口から、出会い、恋愛の作法、不倫の在り方、看取りといったさまざまな男女の問題を、林真理子さんと壇蜜さんが語り尽くすという内容です。
- 男と女の理不尽な愉しみ
- 著者:林真理子 壇蜜
- 発売日:2017年11月
- 発行所:集英社
- 価格:770円(税込)
- ISBNコード:9784087210095
一言で言うと、『男と女の理不尽な愉しみ』は「性愛の理不尽さ」を語った本ですね。それと同時に「食欲の理不尽さ」を書いて出したので、食べ合わせはかなり悪いのではないでしょうか(笑)。
ただ、これだけいろんなものが多様化しているいま、日々の中で「理不尽だな」「納得いかないな」と思う気持ちを悪く捉えるのではなくて、もっと愛してあげてほしいなと思います。
理不尽さに不満を募らせると、「あいつのせいだ」とつい誰かのせいにしがち。そうではなくて、自分の力でその状況を覆す“隙”みたいなものを虎視眈々とうかがってほしい。『男と女の理不尽な愉しみ』は、そのための準備本だと感じています。
――――確かに、感情が整理されることでふと楽になる瞬間というのはありますね。
『男と女の理不尽な愉しみ』では理不尽なことをかなり解体しているので、ちょっとでも共感する部分、自分に共通する部分を見つけてもらって、怒りや殺意といった負の衝動に向かないような流れになったらうれしいです。「怒らなくて済む」というのも、生きていく上での強みになると思うので。
――『たべたいの』も『男と女の理不尽な愉しみ』も、壇蜜さんの根底にあるものが目の前にあらわれてくるような内容でした。『男と女の理不尽な愉しみ』に「提供する情報のヒミツ度は、ブログ、テレビ、ラジオ、雑誌連載、自分の本という順番で高くなるように仕分けしている」と書かれていましたが、“本”に対してどんな思いをお持ちでしょうか。
自分で書いて、出版社を介して出すものが“一番濃密な暴露”であったらいいなと思います。
ブログは街角で配られるティッシュみたいな感じ。「タダですよ、どうぞ」「気が向いたらまたもらってくださいね」という感じで渡して、受け取った方も何となく広告の文言を見たり、生活している中で「あの時にもらったティッシュがあって助かった」というような経験をしたりするんです。だから、情報は書くけれど、都合の悪いことは書かなくていい。
でも、本に書いてあることは全部本当です。ときどき小説の解説などでは、とんでもないことを書いたりもしますけれどね(笑)。本には定価があって、その本は選んで買ってもらっている。また同じ“自分で書くもの”にしても、本に書くものは、連載や新聞、Webとはまたちょっと違います。
――そういう意味でも、読者の方には本をじっくり味わっていただきたいですね。
そうですね。でも私が本に書いたようなことは、決してマネをしないほうがいいです(笑)。
壇蜜 Mitsu Dan
1980年、秋田県生まれ。タレント。小中高大一貫女子校を卒業、調理師など各種資格を取得、多彩な職種を経験後、29歳でグラビアデビュー。著書に『蜜の味』『壇蜜日記』など。
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