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『夏目友人帳』連載20周年!作家と編集部が強力タッグでヒット作を生み出す『LaLa』|【連載】編集長雑記

各出版社を代表する雑誌の編集長によるリレー連載「編集長雑記」。

今回は、連載20周年を迎えた『夏目友人帳』や『赤髪の白雪姫』など、メディア化されている作品も多く掲載されているコミック誌『LaLa』編集長の佐藤一哉さんがご登場です。

佐藤編集長が携わった作品の中で印象深いという『夏目友人帳』など、作家さんと編集部が協力して創り上げている『LaLa』について綴っていただきました。
 
 
▼『LaLa』最新号はこちら

LaLa (ララ) 2023年 10月号
著者:
発売日:2023年08月24日
発行所:白泉社
価格:540円(税込)
JANコード:4910092051032

 

創刊47周年を迎えた「LaLa」と漫画編集者の醍醐味

『LaLa』は、2023年7月に創刊47周年を迎えました。長く刊行を続けられているのは、愛読いただいている読者の皆さま、また雑誌を支えてくださっている作家陣のお陰です。

本誌は、1976年7月28日、『花とゆめLaLa』9月号として創刊。発売当時は隔月刊の雑誌でした。翌年、1977年7月発売の9月号から月刊化。月刊を機に、誌名が『花とゆめLaLa』から現在の『LaLa』となりました。創刊号につけられた雑誌コンセプトは「ビューティフルなまんが雑誌」。このコンセプトは現在もLaLa編集部員の名刺に同様の文言が書かれ、今に生きています。

私は2002年に白泉社に入社後、LaLa編集部に配属され、15年間、編集部員~副編集長として過ごしました。その後、花とゆめ編集部に異動。2021年に再び『LaLa』に編集長として戻り、現在に至っております。

入社時は、社内の青年誌志望で入ったので、少女漫画の知識やセンスが浅い状況でした。配属後の数年は四苦八苦しましたが、恋愛や学園舞台に囚われない『LaLa』の掲載ジャンルの懐の深さのお陰で、自分の感性でも何とかやっていけるかも……と、『LaLa』独自の少女漫画文化に徐々に慣れていきました。

部員として携わった仕事の中で印象に残っているのは、『夏目友人帳』に関連することです。特に以下の2つ。

1つ目は、TVアニメ第1話の白箱(完成した映像作品を収めたもの)を作家さんと2人で初めて見た時のことです。多くの人の手を借り、制作陣がクオリティの高いアニメとして仕上げてくださったその映像を、原作制作時を思い出しながら、感慨深く視聴したのが印象に残っています。

2つ目は、『夏目友人帳』内のキャラクター・ニャンコ先生の立体化です。TVアニメ第1期の放送に合わせ、2008年『LaLa』8月号ふろくとして「ニャンコ先生ストラップ」を作成。このストラップふろくが、記念すべき最初のニャンコ先生の立体グッズでした。特に立体絵もないキャラクターを立体化してください!という、こちらの無茶ぶりにもかかわらず、付録製作会社のお陰で、初めての割に可愛く仕上がりました。その後、ニャンコ先生はさまざまな形でグッズを展開。現在も数多く世に出ているキャラクターの、初めての立体化に携わる経験は編集者としてなかなかできないことなので、良い思い出です。

『夏目友人帳』は今年で原作20周年、TVアニメ15周年。TVアニメ第7期の制作も決まりました。「次こそ全3巻を超える、巻数が続くシリーズ作を目指しましょう!」と作家さんと意気込んで始まった作品が、早いもので今年9月に第30巻が発売となります。作家さんの多大な尽力があってこそですが、さまざまな縁に恵まれ、長く続くタイトルとなりました。今は編集長として、陰ながら作品の成長を見守っています。

経験を経て思うこの仕事の面白いところは、作家と編集という最少人数での企みが、もしかしたら世界の人の心を動かす可能性があるIPとなるかもしれない……ところ。大部分は作家さんの創造力の賜物ですが、作品初期のコンセプトを作家さんと共有し、ヒットの創出をミニマム2人で企んでいく。そして作品に力があれば、周りを巻き込むビッグタイトルに育っていく過程に携われることは、この仕事ならではの代えがたい魅力です。

『夏目友人帳』も、『LaLaDX』での初掲載から現在に至りますが、『LaLa』が少女漫画誌として広いジャンルを掲載する器でないと、もしかしたら存在しなかったかもしれません。今、『LaLa』は月刊の『LaLa』本誌や隔月刊の『LaLaDX』といった紙の雑誌に限らず、編集部として、「いちゃLaLa」、「BLaLa」、「異世界転生LaLa」と多様な電子増刊を発刊しています。創刊時以上の掲載ジャンルの幅をもって、女性向けの創作物の受け皿になっていきたい。作家さんと編集部員の新しい企みを広く受け入れられるプラットフォームであり続けたい、と考えています。
 


白泉社 LaLa編集長
佐藤一哉 SATO Kazuya
2002年入社以来、LaLa編集部に在籍。2017年花とゆめ編集部に異動後、2018年~花とゆめ編集長。2021年~LaLa編集長。おもな過去担当作は『夏目友人帳』、『狼陛下の花嫁』。