暑い夏は、ホラーミステリー本を読んで乗り切ろう!
夏になると、少し怖い話が読みたくなりますよね。
ひんやりと背筋が凍る恐怖や、最後まで結末が読めない謎は、暑い季節だからこそ味わいたい読書体験です。
ほんのひきだしでは、じわじわと恐怖が迫るホラー作品から、思わずページをめくる手が止まらなくなるミステリーまで、夏にぴったりの一冊を集めた特集をお届けします。
今回は『こどもの頃のこわい話 きみのわるい話』(竹書房)をご紹介します。
記憶の底にこびりつく、忘れたほうがいい「何か」が記された追憶の怪異体験45篇です。
ぜひ書店店頭で手に取ってみてください。

『こどもの頃のこわい話 きみのわるい話』
著者:蛙坂須美
発売日:2025年10月
発行所:竹書房
定価:924円(税込)
ISBN:9784801946385
【章立て】
もくじ
猿なし猿まわし
犬屋敷
それはベス
貓頭
病院獣
きつね
包帯の友だち
血だらけ
いきはぎ
無貌三題
鼻中人
焼肉ハナ
くびぞろえ
首のない女の子の話
わすれないでください
北見先生のDVD
花なら蝶
針女
女郎蜘蛛の男、あるいは女
くものの巣わたり
いやな宿
迷子の話
(以下略)
誰もが共感できる恐怖
幽霊の話と言われると、「自分は霊感ないし、見た!出た!と言われても……」となりがち。興味はあるけど、共感はできない。そんな方が多いのではないでしょうか。でも幼少期ならどうでしょうか? 初めてのお留守番、遊びすぎて暗くなってしまった帰り道、あの心細さは誰しもが覚えのある小さな恐怖です。そんな僕たち、私たちが子どもだった頃のこわい体験、不気味な記憶を集めた本書は、霊感がなくても、おばけを信じていなくても、共感できる要素が満載です。幽霊だけが怪談じゃない。誰もがぞっとする恐怖がここにあります。

すべて体験者の実在する話
収録話はすべて、実在する人物に話をうかがったものです。作り話ではない、誰かの口から語られた「体験談」を取材したものです。だからこそ創作では出しえない生々しさがあり、怪談を通して誰かの人生に触れる緊張感があるのです。怪談ではありますが、そこには恐怖だけでないさまざまな感情が折り重なっていて、1話1話の読後感は実にさまざま。事実かどうかを証明する術はありませんが、体験者の中では確かに「あったこと」として刻まれている記憶。それを否定することは誰にもできませんし、そうさせない圧倒的なリアリティを行間から感じていただけるはずです。

そういえば私も…の連鎖反応が起きるマジック
体験者の語るノスタルジックな子どもの頃の風景、友達、家族……。見ず知らずの他人の思い出だけれど、その時代の匂い、風景は自分の記憶とも重なる部分があります。そんな誰かの話を読むうちに、ふと自分も忘れていた何かを思い出すことがあります。心の奥底にしまい込んでいたものがふっと浮かび上がる感覚。いま振り返ると「あれ?」と思うような奇妙な出来事、辻褄があわないこと、怖いから変だから夢だったに違いないと思い込んでしまっていた何かを急に思い出したという方が続出しています。他人事がいつの間にか自分事になっている怖さと面白さがあります。あなたも心の砂場を掘り返し、記憶のタイムトラベルをしてみませんか?

【著者のコメント】
こどもの頃の「あれはなんだったんだろう?」という不可思議な記憶にまつわる話は、怪談取材を続けていると、それなりの数が集まってきます。
人間の脳とは、複雑なようでいて単純、粗略なようでいて精妙にできているらしく、実際には体験していない出来事の、偽の記憶を創り出してしまうような事態も、間々起こるそうです。
近年では「過誤記憶(フォールスメモリー)」や「マンデラ効果」といった用語が人口に膾炙し、薄明の記憶に宿る怪異を、「脳のバグ」として再定義する言説も増えています。
実際、本書に収録した怪異な出来事の多くは、体験者それぞれの記憶の中にのみ息づいています。その一点をもって、客観性の欠如、信ぴょう性の希薄を指摘することは、外野であるわたしたちには、決して難しくありません。けれど、それなら。とわたしは思うのです。
雑踏のなか隣にいたはずの母を見失った絶望は、はじめての留守番でおぼえた不安は、顔も名前もいまや曖昧な友と過ごした黄昏の光景は、祖父母の家の薄暗がりに感じたかすかな気配は、あの日、あのときの色は、においは、音は、手触りは、味わいは、果たして……。
ほんとうに、わたしの、あなたの、「ほんとうの記憶」なのでしょうか。
あなたには、自信、ありますか? わたしには、あまりないようです。
本書を読まれた方の記憶の一頁に、新たな怪談奇談の種子が宿ることをねがってやみません。
著者プロフィール
蛙坂須美
あさか・すみ。Webを中心に実話怪談を発表し続け、共著作『瞬殺怪談 鬼幽』でデビュー。著書に『怪談六道 ねむり地獄』、共著に「怪談百番」「怪談七変幻」各シリーズ、『憑き狂い 現代怪談アンソロジー』『怪談番外地 蟲毒の坩堝』『実話怪談 虚ろ坂』『実話奇彩 怪談散華』など多数。
