- なぜヒトだけが老いるのか
- 著者:小林武彦
- 発売日:2023年06月
- 発行所:講談社
- 価格:990円(税込)
- ISBNコード:9784065326404
『なぜヒトだけが老いるのか』の要点
1.生物は進化の結果生まれてきた。進化を支えてきたのは、死というシステムである。逆にいえば、死ぬ生物だけが進化し、存続してきた。
2.動物の中ではほぼヒトだけが長い老後を持つ。これは、経験とスキル、集団をまとめる力に長けた年長者である「シニア」のいる集団のほうが進化の観点でも有利だったからだといえる。
3.利己から利他へ、私欲から公共の利益へと価値観をシフトさせていくことで、よいシニアになれる。社会の側もシニア人材という「埋もれた財産」に目を向けるべきだ。
『なぜヒトだけが老いるのか』レビュー
人間は長く生きると老いていき、そしていつかは死を迎える。誰もが知る事実だが、その事実に向き合っている人は果たしてどれくらいいるだろうか。
内閣府による令和4年度版の高齢社会白書によると、2065年には日本の総人口における65歳年齢の比率は38.4%まで上昇するという。また、厚生労働省は令和2年度版の厚生労働白書において、2040年の日本人の平均寿命は男性83.27歳、女性に至っては89.63歳に届くと推計している。政府は少子化対策に力を入れようとしているが、他の先進国の事例を見ても、少子高齢化の流れを抜本的に変えるには長い道のりが必要といえる。こうした時代において「老い」をどう捉えるのかは切実な問題だ。個人的な実存の問題としても、社会制度設計の問題としても、老後を迎えた人たちの価値を捉え直すことは急務といってもよい。
著者の小林武彦氏は、細胞老化の分子機構に関する研究者として、そのヒントを「進化」というシステムに求めている。偶然生まれた性質が環境に適応していくことで起こる進化によってヒトという種が現在のかたちになったのだとしよう。すると、ヒトだけが経験する老いもまた、ある環境に対して有利だったためにそうなっていったとポジティブに考えられる。
ヒトだけがなぜ老いるのか。老いとどう向き合っていくといいのか。本書を通じて、こうした大事な問いについて、いま一度考えてみてはいかがだろうか。
『なぜヒトだけが老いるのか』が気になる方におすすめ
- 生物はなぜ死ぬのか
- 著者:小林武彦
- 発売日:2021年04月
- 発行所:講談社
- 価格:990円(税込)
- ISBNコード:9784065232170